第238話 駆除完了

キリコがおそるおそる二人に駆け寄る。キリコの手には我先に逃げ出したアウソの駿馬とライハの灰馬の手綱が握られていた。

その後ろからキリコの駿馬が挙動不審気味で追い掛けてくる。


無理もない。


先ほどまでここはある意味地獄のようだったから。


「おーい、生きてる?」


二人に話し掛けると、何とか無事だとキリコにグッジョブサインを送った。


地平線の向こうから朝日が顔を出し、更に荒れた森と、お腹一杯で丸くなったスライムを優しく照らし出していた。









ヒビから這い出そうとしていた異形の手は、こちらの異常を察してか消えていた。魔物にも空気を読める者がいるらしい。


火種蟲に襲われるも、体を少しかじられた程度で済んだゴーレムがリューシュのひび割れた尻尾を両手で掴んで補強をした。

退かさなければならないものだが、その前にすることがある。


逃げ出した駿馬に文句を言いたかったが、あの地獄じゃ一刻も早く逃げ出したくなる気持ちも痛いほど分かったので黙った。


泉に戻ると、泉の横で祝杯を上げるグループと地面に転がって爆睡しているグループに別れていた。祝杯を上げるグループはフエルィ長老とクアブ、アンドレイ店長、スライム研究員メンバーとカリアだ。

イヴァン?

寝てたよ。


「お帰りなさい!精霊から聞きました、火種蟲駆除完了したんですね!」


クユーシーはウンディーネと風の精霊フーシアに囲まれて、寝ずに待っていてくれたようだ。


「風龍に手伝って貰ったんですね、なんというか、お疲れさまです」


そしてボロボロなオレ達の格好を見てクユーシーが察してくれた。


「うん、死ぬかと思った」


「しばらく風龍はお腹一杯だからいいや」


「端から見てる分には良かったけどね」


凄かったから。と、キリコ。

オレも端から見ていたかったな。





駿馬を小屋に戻し、泉を見るとすっかり綺麗になっていた。ヘドロのへの字もないほど。


スライムすげー。


「あ!お帰り!クユーシーから聞いたよ、風龍まで呼んで頑張ったって?」


酒飲んで上機嫌のカリア。


怪我してるのに酒飲んで平気なの?


「カリアさん、怪我は?」


アウソが突っ込んでくれた。


「え?あー、なんかもう平気よ。ほら」


と、包帯をずらすともう赤みが引いてきていた。


なんだろうな、カリアさんだとこの早い回復も、カリアさんだからで済みそう。


「んなわけ無いでしょ。エルトゥフの薬が凄いんよ。キリコもアウソももう傷痛くないんじゃない?」


「言われてみれば」


「確かに」


「…あれ?オレ声出てた?」


「出てた出てた」


「うわー、オレ疲れてるわ」


思ったことそのまま出るのは駄目だ。

確かに町往復して徹夜したし、疲れが出ても仕方がない。あ。


「そういえば、カリアさん大変です」


「急に真剣な顔してどうした」


「裂目から気持ち悪い手足がたくさん出てきてました」

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