第212話 エルトゥフの森での攻防.19

五つの火の玉がバラバラに浮遊しながら絶えず小さな火の玉を発射し、それをギリギリで回避しながら隙を探すが、リューシュは決してマグマの池の中から出てこず、常に一定の距離を保ちながら攻撃を仕掛けてくる。


それに一番厄介なのはなんといっても重さを変える魔法だ。


「ライハ危ない!!」


「!!?」


一度回避した火の玉が急旋回してきた。


あり得ないその動きにビビりつつ黒刀で応戦しようとするが、この玉は何故か突然急加速したりするのだ。


そのせいで黒刀が間に合わず空を切る。


しかし直撃する前にキリコがオレを蹴り飛ばして火の玉から軌道を逸らす。

転がりつつ、更にオレを追って曲がってきた火の玉を黒刀で打ち消す。それが何度も。


反転は効かない。


試しにリューシュへと雷の矢を放ってみたが、マグマが壁のように盛り上がり消されてしまった。

防ぐということは雷が効かないわけではないらしいが、あのマグマが邪魔すぎる。


それにキリコに火の玉が効かないと分かったリューシュがキリコに攻撃をする時だけ、当てる前に爆発させている。しかも中に石つぶてを仕込んでいるらしく地味に体力を削ってくる。


そんな中、いつもと戦い方を変えたカリアが飛んでくる火の玉を魔力を溜めた拳で殴り消し、一歩ずつ確実にリューシュへと歩を進めていた。


拳が火で焼かれ、赤くなっていても構わず。


その気迫に押され、オレも負けてられるかという気持ちになった。


回復能力ならオレのが上だ。

恐れてどうする。

また庇われるだけになりたいのか!?


ーー「ネコ!攻撃能力ならカリアさんのが上だから、できるだけ体力を温存してもらう為にカリアさんの攻撃を減らしたい。出来るか?出来るだけ隠れて邪魔をしないように、魔力は惜しまなくていい、使えるだけ使って」


心話で語りかけるとネコが頷き、形を朧気にすると近くの影いくと溶けるように消えた。


確実に仕留めるならオレとキリコで手一杯にしてやった方が動きやすいだろう。


「キリコさん!」


こちらを見たキリコが頷き、リューシュの元へと駆けていく。


黒刀に雷を纏わせながら、キリコとは逆向きに接近していく。そんなオレ達を見て、リューシュは益々笑みを深めた。


『いいぞ、いいぞ、そうだ来い!!全て叩きのめしてやる!!』


手を振り上げるリューシュ、手に魔力が集まり、同時にオレ達の地面にも同様の魔力の波が走った。


「重力きます!!」


咄嗟に身体能力向上をした瞬間、ズシンと体が上から押し潰されるかのような力を感じた。


「ぐ…っ」


だが、堪えられた。

キリコは重力が来る前に全力で走り重力の範囲外から脱出していて無事で、カリアは効いているのかいないのか、確実に近付いていっていた。


なんというか。カリアから放たれる圧の方が怖いんだけど。


『ふむ、これじゃあハンデが有りすぎるか、ならばこれはどうか?』


リューシュの三叉の矛を高く掲げると、クレーターがあった方向からマグマが空を飛んでオレ達の頭上へと集まりはじめた。中央には景色が歪んだ点。


そこに吸い寄せられるようにマグマが集まっていく。


完成したのは空一面のマグマの海で。


「…………oh」


それが、降ってきた。

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