第169話 世界地図

迷宮から戻り、宿に着いたオレは改めて神と接触したことや、三代目勇者に指名されたこと、猫のこと、そして今の世界の状況を説明した。


キリコとアウソはそれを黙って聞いていた。

冗談だと笑い飛ばされても良い話なのに。


「なるほど、それが最近の魔物マヌムンの異常と考えれば納得いくわね」


「そっすね。それにしてもネコがあの英雄だったとは、寝耳に水さ」


「信じるんですか?」


「こんな冗談お前が言うわけねーさ。それに、納得のいく部分もあったしな」


「そうね。てか、あんたのことだから何があってももう驚かないわよ」


キリコの中でオレのイメージが変な方向に固まっているらしい。


「それにしても、勇者になってどうすれば良いとか聞かなかったの?」


「それが、各観測者や遣いに連絡をしてから情報を送ると言われたので、今指示待ち状態なんです」


あと二~三日程で来るらしいが、正直オレも何を指示されるのか不安でしかたがない。

戦争のことも気になるし。


「ただ待つって言うのもアレだから、近くの鍛練上で手合わせしながら待とう」


「え?カリアさんと?」


「他に誰がいるよ」


そんな感じでカリアに(アウソも巻き添え)ボコボコにされながら待ち続け、三日目の夜。宿に着いた瞬間見計らったように鳴らない筈のスマホが鳴った。


「!!?」


「なにこの音」


慌ててスマホの画面を見たら知らないアドレスからメールが来てて、恐る恐る開いてみると神らしき人物から世界地図と、何かの情報が記載されたファイルが添付されていた。


ぬー?」


「これ、多分現在確認されている裂け目か?」


「どれどれ」


みんなでスマホを覗き込み、カリアとキリコが知っている範囲の情報で推測した事によると、華宝国から一番近いウォルタリカに三つ、山の都に一つ、大陸を横断する山脈内に多数。


そして大陸全体に何かのマークが数え切れないほど散らばっている。青が圧倒的に多く、緑が少しで、灰色が片手で数えられるほど。


「ここ、ユラユ付近じゃね?」


アウソが指差す所はマテラの西端、拡大してみると確かにユラユだ。色は灰色だけど、気になる。


「…ねぇ、これ、もしかして」


脳内にニックと解除した魔方陣の光景が甦る。


「鷲の爪が悪魔と取引して設置している魔方陣とか、ないですよね」


自分でも何を言っているんだと思ったが、するりと口から飛び出した。


空気が固まる。


「他に思い付いた事、ある?」


カリアが先を促した。


「灰色が、停止した魔方陣で、緑が発見済みで、青がまだ未発見…とか?」


本当にそうなのかは分からないが、オレの言葉を聞いてカリアは無言で立ち上がった。


「ウォルタリカと山の都経由で、イリオナに向かう!これが本当なら大発見よ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る