第151話 ハンター試験.2

「D-ランクの試験を開始します」


次の対戦相手はグーヴォというネズミの頭に毛の生えた駝鳥に似た体躯、小さい羽、小さな手、立派な脚、そして鞭のようにしなりそうな尻尾が生えていた。

確かキリコからの情報では西の方でしか見られないはずだけど、なんでいるのだろう。


「まぁいいか。生け捕りの依頼とかあるだろうし。それにしても外見だけなら可愛いのにな」


そこまで強くなさそうな相手に見えるだろう?

めちゃくちゃ早いからさっきの短剣投げは余裕で回避されます。もしかしたら雷の矢もギリギリ避けられるかも。

そしてあの尻尾の鞭も当たれば痛い。


つまり先程とは違う戦い方をしなければならないということだ。


「さて、まずは動きを止めないと」


グーヴォは羽を広げつつこちらの様子を伺いながら広場を駆け回る。オレはその場に留まりながらグーヴォの動きを見ていた。


フットワークは軽い。

方向転換も早そうだ。


「ちょっと怒らせてみるか」


こういう素早いタイプは逃げるのを優先させる性格なのが多い、それではこちらが不利だ。なのであえて怒らせて攻撃してくるように仕掛けてみる。

幸いここは円形の闘技場だ。

どこまで走らせても見失わない。


雷の矢をつがえ、狙いを定める。


そして、グーヴォの後ろギリギリを狙って射った。


『ヴォッ!』


グーヴォが当たらないようにと移動する。

その後ろを追い掛けて次々に雷の矢を放っていった。

グーヴォが加速していく。

それを追い掛けて矢を射ち続け、流石にこのスピードでは方向転換は難しいだろうという所でグーヴォの進行方向に向けて射った。


『!』


ーーチッ


グーヴォはそれをギリギリ避けて見せた。

凄い反射神経だ。


咄嗟に出した脚をクッションにして方向を変えて矢を避けてみせたグーヴォがオレを見た。

忌々しい攻撃の犯人を見付けたみたいな顔をしたグーヴォは、次の瞬間毛を逆立て突進してきた。


めちゃくちゃ早い。


バイクがもうスピードで突進してくるみたいだ。


「お!?」


しかし鎌猪のようにただの突進ではなく、オレのすぐ近くで突然の回転し、尻尾を鞭のように放ってきた。


しゃがんで尻尾を避けると落ちる影。

グーヴォがなんと宙返り踵落としならぬ、鉤爪落としを仕掛けて来ていた。


なんと身軽な。


咄嗟に側転のようにしてその場から離脱すると、地面の土が爪の形に綺麗に抉れた。


あれ食らったら痛そうだ。


『ヴァアアッ!!』


こっちを見て怒りの声をあげるグーヴォ。

怖いなぁ。


でももっと怒らせよう。

判断力を鈍らせるために。


雷の矢を放つ。

するとグーヴォはそれを避けながら突進してきた。オレは身体能力を上げるとその場から逃げ出した。


それをグーヴォが追い掛けてくる。


どんなに曲がっても律儀にそのままのルートで追い掛けてくる。どうやらオレしか見えていないらしい。


なので。


「ほっ!」


ちょっと前にアウソがやった技。壁を蹴って、その勢いで宙返りをした。


目の前には突然飛んできたオレに驚くグーヴォの顔。


そしてそのままグーヴォの背中に着地した。


『ヴァアアアアア!!!!!?』


敵(オレ)が背中に乗っている。

グーヴォが怒り狂って滅茶苦茶に走り出した。


しかし、常日頃駿馬を頭おかしい速度で乗り回しているわけじゃないオレにとって、グーヴォは実に乗り心地の良いものだった。

というか、乗ったのは完全に乗ってみたかったから。


グーヴォに限らず騎乗ができる鳥種、鳥馬(チョウバ)達はプライドが高く、よほど慣らされた者しか乗せてはくれない。

その話を聞いて一度だけ乗ってみなかったのだ。


羽の根元を掴んでいるので振り落とされないし、なんならこっちの意思で方向転換も出来る。


ああ、しかし今は試験中だ。


しかもこいつは対戦相手で、合格するために倒さなければならない相手なのだ。


「本当にごめん、出来るだけ一瞬でやるから」


短剣を持つ手に魔法を発動し電流を纏わせると、素早くグーヴォの首に刃を滑らせた。


倒れるグーヴォ。


素早くグーヴォの背から脱出し地面に着地。

そして手を合わせた。


短い時間でしたが、楽しかったです。


「D-ランク試験、合格です。次の試験に挑戦しますか?」


「挑戦します!」

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