第125話 ジュノの世界樹

黒い壁が噂の世界樹と聞いたとき開いた口が塞がらなくなった。ちょっと待て、こんな山みたいな樹が生えてたら普通ルキオからでも、下手したらマテラからでも見えるだろう。


しかし、その謎はすぐさま解明された。


「………こんな樹あるの?」


「すげーよな、こんなのが世界が生まれたときからあるんだぜ」


世界樹は根本が黒曜石みたいに黒く、それが段々上にいくにつれて空の色に馴染む感じに薄くなり、遂には完全な透明になっていた。しかし角度によって光の加減で黒い色の部分が変化する。なんだこの樹。


鳥はぶつからないのかと観察すると、遥か上空で複雑な飛び方をしていた。雲も何かにぶつかっては進路を変えているように見える。

不思議に思って風の流れを見ると何かを避けるようにして流れており、魔力を見てみると巨大な枝を無数に伸ばす立派な樹の姿が浮かび上がった。しかしそれでも枝の先までは見れず、消えている。


なるほど、これはたしかに世界樹だ。


トルテと獣人(ガラージャ)達はオレ達の反応を見て満足そうに胸を張っていた。わかる。誇らしいよな。


どっしりとしたその気高い姿はどこか神々しさも感じられる。個人的に御神木扱いしてもいいかな。手も合わせとこう。


「何してるば」


おがんでます」


トルテが何かを探すように見渡し、ピンと耳を立て髭が前を向く。


「いた。あれ、クク


「どこ?」


「いた、あそこ」


キリコが指差す先に御神木ーーじゃなかった。世界樹の根本に黒い塊があった。でもあまりにも色が似ていて見にくいので粒子モードにすると、大きい竜の姿が。てか、思ったんだけどこの粒子モード本当に便利。サーチ替わりに出来るな。


「……変ね」


「何かあったよ?」


「アタシも長くアギラに居た訳じゃないから確信がある訳じゃないけど」


キリコが眉を潜める。


「あの竜、何か違う臭いがする」


「違う臭い?」


「もっと言えば、汚染されているわ」


後ろでウニャウニャとトルテとアウソが獣人ガラージャ達に通訳をしている。トルテがメインで、トルテが共通語が怪しい部分はアウソがすかさず通訳フォロー。

おかしいな、真面目な話なのにオレの頭の中でテレビ内の企画に紛れ込んだみたいになってる。


「ネコ、ちょっといい?」


『ん?』


「ネコは竜の言葉とか分かる?」


『んー、んー?』


ネコが頭を捻りまくっている。


「あ、いい。そこまで考えなくていいよ」


『そう?じゃあいいや』


もし分かるのなら少し実験をしてみたかったけど、それは別に竜じゃなくてもいい。


「どうする?しばらく観察する?」


「そうね、どういう行動をとるかを見ていた方がいいね」


という訳でしばらく竜観察をすることになった。

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