第7話 波乱の予感

「なあ凜香」


「何ー?」


「クイズ研究部に入らないか?」


「はっ?」


思いっきり不本意といった顔で振り返る。

俺は思わず一歩後ろに下がる。

だが、負けてなるものか!


「勧誘?何それ・・・ってか、あんたそんな部員だったっけ?」


「いや、無理矢理入ることになりそうで・・・。玲央も入ることになったんだ、どうだ?」


どうせ、こいつは玲央が好きなのだろう。

玲央はどう見たってかっこいい。

それが幼馴染となれば、好きにならないはずがない。

俺が異性だったら、間違いなく好きになっていた自信がある。

そう見切っての問いかけだったのだが。


「く、くっだらなっ!なんでそこで玲央を持ち出すかなぁ・・・もう、あんたたちと幼馴染とか・・・こっちの方が恥ずかしいんだからねッ!」


「す、すいません・・・」


なぜかこちらが謝る結果となってしまった。

凜香のポニーテールがくるっと翻る。


「それにあたし、バスケ部、、だし!」


「そ、そうだよな。すまん、忘れてくれ」


俺はため息をつきながらも、潔く諦めることにする。

さて、あと一人どうしようか・・・。



***



「ねえ」


「…ん?」


俺は辺りを見渡す。

誰かに話しかけられた気がしたのだが、このごったがえす廊下の中だ。

空耳か・・・自分に言われたものではないだろう。


「ねえ・・・」


「……ん?」


本格的におかしくなったか?

耳か目かが・・・。

首をかしげ、再び歩き出そうとすると。

袖口がくいっと引っ張られた。

振り返ると、そこには女の子。


「~~~!?」


なかなかに可愛い。

ボブに整えられた髪型に、眠たげに細められた瞳。

見たことがない。

リボンの色からして、一年生だろう。

そんな子が、俺に何の用だろうか。


「…聞こえなかった……?」


「あ、ああ、、ごめん!!ちょっとぼーっとしてて・・・」


「・・・そう。お悩み相談部、入ってくれるんだよね?」


「は、は!?」


「・・・違うの?りじちょーから、聞いたんだけど・・・」


「んーと、ちょっと違うかなー・・・正確に言うと、君がクイズ研究部に入るって形になってると思うんですけど・・・」


「・・・そうなの?わたし、お悩み相談部、なのに・・・クイズなんてしなくちゃいけないの?」


「俺もそう思う・・・かわいそうに・・・」


話を聞いたところだと、この子が『星来』、たった一人のお悩み相談部員だろう。


「ま、まあ大丈夫・・・多分、お悩みは来ると思うから。きっと。・・・で、俺に何の用?」


「あ・・・お悩みが、来たの。この問題は・・・望月君のほうが、親身になって考えられるんじゃないかなと思ったから。新入部員として、初仕事・・・宜しくね」


二つに折りたたまれた紙を渡され、問答無用で受け取ってしまう。


「え、ええー・・・」


やっぱり俺は、『クイズ研究部』&『お悩み相談部』員になってしまったのだ。

もう、どうでもいい・・・と普段なら思っていたのだろうが、下手にお悩みなど受けても俺は何も出来まい。

とにかく、この子は一応正部員なのだ。

俺よりお悩みの扱いは上手いだろう。


「あの、俺、やぱこういうの向いてないと思うからさ!お願いしていい?」


すると星来はあからさまに不機嫌そうな顔になって。


「さいてー。望月、さいてー。いい?絶対、あの子にとってのヒーローになりなさんな。そうした方が、絶対いいと思う」


「は、はあ・・・?」


一応俺は先輩だ!

なのにもかかわらず、最低呼ばわりされてしまった。

ひらひらと手を振って、階下に行ってしまう彼女をぼーっと見つめながらも、悶絶する。

なんだ。なんなんだ!?

俺には相談なんて・・・。


ぺらりと紙を開くと、そこには。



『矢野凜香さんが、虐めにあっています。どうか助けてください。お願いします』



な、なんじゃこりゃあああああああああぁぁ____ッ!?

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