第2話 湊の昼休み①

「ねえ、望月君…だよね?ごめん、ちょっと来てくれるかな?」


目の前には、風光明媚な少女。

可愛い。

美人。

眩しいっ・・・!!


俺は思わず目の前を手で覆いたくなる。

目に余る、とはこの事かと実感する。

この少女の名は、永田栞里。

同学年の高2、学校1の美少女だ。

告白してくる男を片っ端から振ることで有名である。


そして、今俺はこの状況をどうしても理解できない。

もうすでに過呼吸だ。

時間は、昼休みまで遡る。



***



「みなとー、飯食おうぜ」


「お、そうすっか・・・」


のほほんとしたこいつは、凜香と同じ幼馴染の一人、川村玲央かわむられおである。

レオという名前に関していうと、なんとなくクールなイメージがあるのだが、こいつはそれを見事に玉砕してくれる。

もう、のほほんマンとしか言いようがないのだ。

だがしかし、モテる。

クールではないものの、顔がカッコいいのだ。


泣きそうだ。


「どうしたの、湊?」


「ああ・・・なんでもない・・・気にしないでくれ・・・」


俺は決して不細工な訳ではない(と思いたい。願望か?)。

だが、ごくごく平凡な顔だ・・・と自分では思う。

性格は学校にいるときと家では全然違うと思う。

学校では根暗系男子なのだ。

しかし、こいつと凜香の前だけでは、『俺』を見せることができる。

それだけが、心のよりどころなのだ。

だけど、玲央を見ていると落ち込む。


なんで玲央君なんかが、あんなネクラと一緒に居るのー?あり得なーい!!


と周りからは言われていることだろう。

すまん、玲央。


だが、当の本人はそんなこと全然気にしていなさそうなので、そこもまた安心できるところだ。


この機会に、俺のもう一人の幼馴染、矢野凜香について紹介しておこう。


こいつはもう、破天荒としか言いようがない。

口は悪いし、デリカシー無いし、すぐ怒るし。

でも、本当は脆いのを、俺はよく知っている。

小学校の時からやっているバスケの試合に負けた時のこと。


あいつの涙は、一生忘れられない。


いや、忘れてはいけない、断じて!

俺がひたすらにぼーっとしていたので、そのおかげで思いきり泣けたのだと、後々笑いながら言っていたが、内心心臓バクバクだった。


(当時の俺と幼女凜香)


『ぐすっ…ひっく…ま、負けちゃった…あたしが、最後、ミスしたからっ……』


『お、おう・・・』(真顔)


『も、もう、なんか言って、よぉ・・・』


『ざ、残念だったな。でもまだ次があるさ・・・』(キリっ)

((ぁぁああああああああああああああ!!変にカッコつけちまった!?死にたい!?))


『うふ、ふ、、、ばかなんだから・・・』


そのまま凜香は、微笑んで。

そっと俺に身を寄せるのであった・・・


「ちょっと、何考えてんのよ」


「ひぎゃあああああ!?」


相当に美化された妄想から覚め、俺は必死で目をこする。

目の前に立つ凜香。

やばい、今の妄想。

変態だ。

しかも、凜香がやけに可愛く見えてしまった。

ない!ない!すぉれはナイ!!それだけは!!

こいつはいつだって口うるさくて、ウザい姉みたいなもんで・・・


___だけど、いつの間にか好きになっちゃってたんだ。


「じゃ、なくてええぇぇ!?」


「もう、さっきから何なのよ、痴態!・・・それ以上、おかしくならないでよね!」


妙に顔を赤くしながら去っていく凜香。

風邪だろうか?

というか、俺の思考、やべぇ。パネェ。


「ふふ、りーちゃん、分かりやすいなぁ・・・」


これまたのほほーんと、意味ありげなつぶやきを残す玲央。


「ちょ、それどゆこと?」


「さあ、湊が自分で気づいた方がいいと思うから♪」


そう言って、卵焼きをぱくつく玲央。

俺も、箸を割る。

シンメトリーではない。

ため息をつきながら、俺も卵焼きに手を伸ばし。


_____と、ここまではよかったのだ。



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