ようこそっ、俺の時代!?

@Umica0

第1話 とある兄と、とある妹

『湊くん_あのね_私__』


『し、栞里・・・?』


こんな時が来るとは、その時自分は考えてもみなかった。

自分はダメなやつなのだと_落ちこぼれなのだと、ずっと理解してきたつもりだった。

だが、それが間違いなどというのなら。

なぜ、彼女は自分の前で泣いているのだろう。



***



この世には、【冴える系】と【冴えない系】という部類が残念ながら存在するようだ。

いやこれは、頭が冴えるとか冴えないとか、そういう問題ではない。

はっきり言ってしまうと、【イケてる系】と【イケてない系】・・・・・


いや、もっとはっきり言ってしまえば!


【モテる系】と【モテない系】である。


そして俺は、間違いなく後者であった。


「うううぅぅぅぅぁああああ___」


「うっさいお兄ちゃん!黙って!!」


美陽みはるぅ・・・お前はもうちょっと兄に優しくしなさい・・・死んじゃうよお兄ちゃん?自殺しちゃうよ?そしたら美陽のせいだぞー??」


「うっさああああぁい!!もう、なんなの!?そんなに誰かに構ってほしいなら、siriとでも喋ってればいいでしょ!!」


AIの無機質な声を思い出し、ため息をつく。


「冷てーなー、美陽は。嫌われるぞ?そんなんじゃ彼氏できないぞ?」


「いいよ別に。あたしモテるしぃー」


「ぐっ・・・」


確かにそれは事実だ。

美陽は、可愛い。

兄という立場から贔屓目で見なくても、可愛い。


「お兄ちゃんなんか、どーせバレンタインにチョコもらったこともないんでしょー」


「うっせぇ、あるよ!ありますよ!!」


「ダレからぁ?」


「り、凜香・・・」


「ぶはっ!!絶対嫌がってるって凜香ちゃん!!幼馴染だから、しょうがなぁ~くあげてるだけでしょぉ!?」


「もう・・・言わないでくれ・・・頼むから・・・兄ちゃんの負けだ・・・」


泣きたくなった。

だが、愚痴を聞いてもらいたい。

美陽にぐちぐち言って、思いっきり跳ね飛ばしてもらうと、なぜだか明るくなれるのだ!!(自暴自棄という)


「あのなー?今日、同級生の女の子に『みなとクンって体操着似合うよねーっ!』と言われたんだ」


美陽が口元を抑える。


「それでなぁ?日曜にジャージで外に出てみたら、周りの目線、目線・・・」


「ぅ・・・」


「運良くと言っていいのかわからないが、凜香にあったんだ。そしたら・・・」



『うわ、マジだっさ!!ないわー、なんで体操着な訳?マジウケるんですけど!』



その言葉は、地球の裏側よりも深く、俺に突き刺さった。

あの時の含羞は、もう二度と忘れられない。


「__あっははははは!!マジ限界!!バカでしょ!?純粋に褒め言葉だと思っちゃった系だ?イタイねお兄ちゃん!!」


「はは・・・、もう俺はどうでもよくなってしまったのだよ・・・もう泣きたい・・・」


「よしよーし。可愛い妹も、もう言う言葉がありませーん。じゃ、あたしこれから彼氏と会う約束してるんだっ♪じゃーねー!」


スキップしながら部屋を出ていく美陽を、俺はぼけっとしながら見ていた。

数秒後。


「かっ、彼氏ぃいいいい___ッッ!?!?」


俺の叫び声が、リビング中に木霊するのであった。


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