【数えられなかった66番目のひつじたち】

ひつじが30匹

いつだったか、ブリキのおおかみが

『言いかけてやめるのはやめろ。ムカつくんだよ』と

ぼくをなじった。

ぼくはごめんと言ったの。

今日、またブリキのおおかみがぼくの所にやってきて、

最近のことを話しながら

『これ以上は言わないけどさ』と言うので

ぼくは少し心配になって

「なぜ？言いかけて止めるなんて、あなた、珍しいね」と言った。

ブリキのおおかみは

『これ以上言ったらあんたを困らせるから、言わない方がいいと思ったから言わないだけだ』と、やっぱりぼくをなじった。

ぼくはべつに、ブリキのおおかみにムカついたりしない。

ただ、ぼくを気遣ってくれてありがとうって思ったの。

だから笑った。ぼくはブリキのおおかみに笑いかけた。

笑ったぼくを見たブリキのおおかみは、やっぱりぼくをなじった。

ぼくは、ブリキのおおかみが大好きだよ。

変わらないでいて。