3章 VSオリオン帝国

第33話 滅んだ世界の話

 バジーナは先見の明を持っている。文字通り、未来が見える魔眼だ。予知。予言。なんとでもいえる。


 ダヤン王は時間干渉のチート能力を持っている。時には未来に干渉し、今後世界がどうなるかを見通せる。


 そんな二人が見た未来は滅んでいた。一人の異世界転生者ハナコによって。


 バジーナもダヤン王も世界を守るため必死に抵抗した。しかし、未来人のハナコの妨害を受け、現存するハナコを殺害し損ねた。


 ハナコはスキル継承によって魔眼も時間干渉も継承し、過去の無力な自分を守っていた。世界を滅ぼしたハナコをその世界では邪神ハナコと呼ぶとする。邪神と呼ばれた彼女は狂っていた。悪魔に魂を売り渡し、魔女と化していた。


 大国アルテミスを滅ぼし、オリオン帝国を滅ぼし、全人類とモンスターを惨殺した異世界で、たった一人の、邪神ハナコは暇になった。日本に戻るつもりはない。召喚した主は死んでしまった。


「たった一つだけヒントをやろう。レオンを救ってほしい。そして、私を倒すことができれば、過去の私を日本に戻して異世界を滅ぼすのをやめる」


 邪神ハナコはレオンの死をきっかけに邪神となって世界を滅ぼした。彼女が願ったのはレオンの生存。洗脳されつつも過去のバジーナとダヤン王に助けを求めた。


「レオンが生きていれば未来の私を倒すだろう。そして世界は救われる。だから彼が死なないように鍛えてほしい。魔王になって世界を統治してほしい」


 邪神ハナコはSOSを発信した。操られていること。自分ではどうしようもできなくなっていること。いずれ多くのスキルを継承してチートオブチートになった邪神ハナコは世界を滅ぼすこと。


 それを止められるのはレオンだけだ。十全のリィルですら邪神の一撃で死んでしまった。


 自我を保っている寸前のハナコが邪神になる前、過去に送ったSOS。


 それを知ったバジーナ、ダヤン王、そして表の大賢者。三人は和解し、密かに集まり、レオンを鍛えることに決めた。魔王になればいずれくる災厄にも耐えられる。


 作戦名はホムラ。災厄の魔女、邪神ハナコを倒して世界を救う。そんな作戦が実行された。


 幸いバジーナは千里眼をもっているのでいつでもレオンをサポートできる。レオンが魔力操作で他人のチート能力を奪えることを知り、それをダヤン王に相談すると、ダヤン王は快く自身の時間干渉をレオンに譲渡すると約束した。


 ダヤン王やバジーナが未来を改変すれば邪神ハナコの妨害を受ける。しかし、邪神ハナコは唯一レオンだけ妨害しない。それを利用し、レオンに何度も世界を救うための冒険をしてもらうことにした。


 王城にてバジーナは月を見つめながら将来をうれう。


「時間改変は神への冒涜に等しい。しかし、世界を救うためだ仕方ない。頼むよ未来の魔法様、ホムラ、世界を救ってくれ」


 最初、バジーナはダヤン王に頼みこんだが、無理だった。


 ダヤン王の必死の抵抗は無に帰する。本人の知れぬところで、ホムラというコードネームを与えられたレオンは、何も知らずにオリオン軍を相手にするため国を出た。

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