第27話 魔法学園祭①

 学園祭の季節。ハナコがヘミィと特訓をしている最中、レオンとリィルはクラス対抗戦と個人戦のオッズについて話し合う。


「クラス対抗戦、個人戦のオッズが発表された」


 レオンは新聞部からもらったオッズ表をテーブルに広げる。リィルが覗き込む。


「個人戦の参加者は38人。僕の配当は36倍か」


……

第4番 最上級魔法のクラス 1年 ヘミィ 配当×36

第5番 最上級魔法のクラス 2年 ……  配当×36

第6番 最上級魔法のクラス 3年 ……  配当×36

第7番 基礎魔法のクラス  1年 リィル 配当×36

第8番 最上級魔法のクラス 6年 ……  配当×36

……


「見ての通りほとんどが最上級魔法のクラスだ。ここで優勝すれば一気に稼げる」


 個人戦は4人のシードと、生徒会の回し者2人を入れての38人で戦うトーナメント方式だ。生徒会の回し者は、現生徒会長と新聞部部長のバミラ。彼女ら2人のオッズは×0となっており、どちらかが優勝すればすべては新聞部の総取りとなる。


「つまり新聞部と生徒会はガチガチの癒着状態にある。賭博で稼いだ食券は生徒会に流れるという方式だ」


「ひっどい」


 生徒会長とバミラが優勝すれば配当は0だが、この個人戦の面白いところはすべての選手が36倍であるところだ。とどのつまり本命のヘミィが優勝すれば、ほんらいなら2倍や3倍の低配当になるところを、36倍そのまま受け取れるのだ。


「クラス対抗戦はクラスが少ないのでどんなに頑張ってもオッズはあがらない。けれど個人戦は38人。最高ベッドの36倍まで受け取ることが可能。そこを狙う」


「えっへん。僕が優勝する。レオンはそこにけるんだ」


 クラス対抗戦は捨てる。基礎魔法クラス1年のクラス長として最大限の努力はするが、今回レオンとリィルの助太刀はなしで。今後、ハナコの望むようなギルド運営を進めるためには現生徒会長と決着をつけなければならなかった。


「俺がリィルに30枚賭けると不自然だ。胴元どうもとは生徒会と新聞部なんだから、きっと妨害を受ける。ダミーとしてヘミィに50枚賭ける」


「僕が僕自身に30枚賭ければオッケー?」


 選手自身が自分にけることは認められている。リィルが30枚出して優勝すれば、30×36=1080枚になり、バミラの借金を返済できる。クラス対抗戦はどんなに頑張ってもオッズは10倍。やはり個人戦の30枚賭けはうまい。


「俺がヘミィにけるのはおとりだ。妨害含め、ヘミィは優勝できない。生徒会長かバミラ先輩に負けるだろう。頼むぞリィル?」


 惑星を破壊できるリアルドラゴンボ〇ルのリィルが負けるはずない。しかし不安はある。現在リィルはレオンの天秤座リブラの能力で平民になっている。使えるのはもともとスライム蜘蛛に備わっている特徴だけだ。


 言ってみればこれは基礎魔法クラス代表のリィルが最上級魔法のクラス全体を相手にすることと同義。VS最上級魔法のクラスの代表たち。借金返済のためにも絶対に負けられない。


「バミラ先輩のことだから組み合わせでヘミィと生徒会長を当ててくる。学内新聞で大賢者の後継者争いをのせるわけだから、絶対に。だから俺たちはヘミィが負けた後の妨害工作を考えればいい」


 権力も人脈もある生徒会長の妨害工作をくらえばレオンたちはひとたまりもない。逆にいえば癒着べったりの新聞部その部長バミラをそうそうに味方にできたのは大きい。食券1000枚分の働きをしてもらおう。期待する。


「念のため、クラス対抗戦でもヘミィのクラスに食券10枚ほどけておくよ。まず間違いなく勝てないだろうけど。俺たちのギルドは学園祭に参加できないんだ。リィル、鬱憤うっぷんを晴らすために大暴れしてやろうぜ!」


「まっかせて!」







 6月。新聞に大賢者の弟子の後継者争いが掲載される。学園祭の個人戦でヘミィVS生徒会長の好カードがあると噂になり、さらに盛り上がる。アルミスが王族の関係者という記事ものり、魔法学園は活気を帯びる。外部の記者も駆けつけ大騒動になり、大スクープを抜いたバミラはかなり稼いだと聞いた。


「私、生徒会長と決闘するわ」


 ヘミィが自分のローブを持ってレオンに宣言する。次代の大賢者を決める、事実上の決勝戦が幕を開く。


 魔法学園の学園祭が始まった。


 

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