第24話 ハデス=ベルセイヌ⑦
人は社会動物であり、誰かと助け合っていかなければならない。みな平等で、社会に組み込まれている。中にはハデスのような人と触れ合うのを煙たがる存在もいる。
異世界送りによる救済は成功しているのかもしれない。
などと考えている間にアルミスと合流する。つかの間のアバンチュールを楽しんだ後、バジーナに助けを求める。あっさりと現実世界に戻り、なぜかハナコが寝ている王室に案内される。
決闘の約束をしたバジーナはノリノリでレオンたちを送り届ける。
「ダヤン王の時間干渉で過去に飛ばれると私がハデスを脱走させたことがバレるから言い訳しといて」
「任せてくださいです」
いい感じに焼けたアルミスが了諾する。アルミスは、対親バカ王様に一番の効力を発揮するだろう。チート連合はあくまで王様に対して嫌がらせをしているだけであってこんな連中が本気で王都を落としに来たら苦戦間違いなしだった。
バジーナは異界送りで転移し、姿を消す。
小さくいびきをかくハナコを中心にリィル、レオン、アルミスが複雑そうな表情で集まる。
「ハデス君の件は後回しにして、僕たちこれからどうする?」
「ハナコと一緒に泊めてもらうしかないだろ」
「リィル様、レオン様。私が警護にかけあってきます」
出てくアルミス。
「あ、そうだ!」
レオンはいたずらを思いつく。いつもわがままに振り回されているので、ハナコに仕返しをしようと勇猛果敢にベッドに近づく。
同居人のリィルは、知~らないんだ~、と口笛を吹きながら悪ノリ。
マジックペンを用意してハナコの額にウンコマークをかく。もちろん油性。ハナコの、朝起きて人に挨拶して後ろ指をさされて疑問に思って鏡を見てウンコマークに気づいて、――なんじゃっこりゃぁ!? と絶叫する姿が目に浮かんだ。くっくっく。
レオンは手で口元を押さえて必死に笑いをこらえる。
「知ーらない。全部レオンのせいにしよう」
リィルはハナコの頬にグルグルマークをかく。
こうして夜は
後日、ハナコにバレて強烈な右ストレートをくらったのは言うまでもない(レオンだけ)。
『
ギルドのキャッチコピーが決まった。
表彰式が終わり、ダヤン王のゴルフやサーフィンに付きあわされてヘトヘトになって魔法学園に戻ってきた5月の中頃。人形遣いのチート能力を得たギルドは本格的に商売を開始した。
なお、レオンの魔力操作は(天秤座を除き)ほぼ一種類しか発動できないため、みずがめ座と魚座のコンボを解くことになる。しかし、人形遣いの能力がなくなると商売ができないので、ここでハナコさんのチート能力の登場となる。
チート能力『スキル継承』。
レオンの能力は魔力操作を解くと失われてしまうが、ハナコのは別。ずっと残り続ける。
「いいか、俺が『人形遣い』を渡すから『スキル継承』するんだ」
「あんたどこでそんな能力手に入れた?」
「チート連合のバジーナさんと契約して、ちょっとな……」
ハナコはレオンの魔力操作のことを知らないので、ちょっと言葉を濁し、バジーナの能力でハデスの『人形遣い』がレオンに残っていると伝えた。
「ふーん。一応、私とレオンは召喚ガチャの絆で繋がっているから。ま、いいわ」
「ありがたい。裏の大賢者も大変なんだ」
ハナコの『スキル継承』によって無事『人形遣い』はハナコのものになる。
「言っとくけど魔法人形とフィギュアづくりは別だから」
「わかってる。お前は『圧倒的才能』も『人形遣い』も使わずに、平凡のままフィギュアづくりするんだろ? もちろん漫画も?」
「そう、その通り。いずれはハデスを超えるフィギュアをつくってみせる」
「好きこそ物の上手なれ。成長してるさ、確実に」
ハデス=ベルセイヌ。生前も転生後も無意味に終わった彼の人生は、みゃくみゃくと次世代に受け継がれていく。きっと彼の人生は無意味じゃなかった。クリエイターとして大成した彼の作品は今も、そして、これからも、人々に感動を与えていく。
南国の無人島で、彼は人知れず、幸せを噛みしめていた。
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