第23話 ハデス=ベルセイヌ⑥
異界送り。バジーナのチート能力。
対象の人物を――バジーナ本人含め――別世界に転送、アルテミスに帰還することができる。見た対象を転送し、アルテミスの好きなところに帰還できる点から、転移魔法に近いが、転移魔法と違うところは相手を異界に閉じ込めることができる点だ。
アルテミスの有名な偉人はこう言っている。
「故人になればどんな人間でも救われる」
死んだ人間は社会に迷惑をかけず、絶対に嫌われない。他者から
「この世に聖人君子がいるように、どうしようもないゴミが存在する。ゴミは存在そのものが社会に悪影響を与える。生まれながらの死刑。しかし、ゴミは犯罪を犯したわけではなく、ただ生きてるだけだ。そんなゴミに救済を。異界送りの流刑に処す」
異世界に転生したバジーナは社会不適合者の救済を続けた。望む人すべてを異界に送った。
送られる別世界は無限に存在する。レオンが送られた場所は無人島のような周囲を海で囲まれた孤島だった。ドラゴンが十匹いれば狭く感じほどの面積で、走って横断するのに1分もかからない。直径200mほどの南国の島だった。
「あの、何しているんですかアルミスさん?」
水着姿のアルミスが海辺で南国リゾート風のアバンチュールを楽しんでいた。
パラソルを立てて、背もたれを水平に倒した白いチェアに横たわりながら、グァバジュースを飲んでいる。
異界送りをめっちゃ楽しそうに満喫していた。
「バジーナ様に、交渉を有利にするための人質になってもらうから楽しんでくれ、と言われまして。楽しんでおります」
「ちょっと抜けてるけど無事で安心した」
「レオン様もせっかくの南国リゾートを楽しんではいかがですか? ここなら食料も設備も充実しておりますです」
「あいにくハデスに用があってね。ハナコいわく脱獄が王様にバレた。それに加え、アルミスが捕まったとなっては戦争だ。楽しんでいる暇はない」
「ハデス様なら島の反対側においでです。ここはハデス様と私の二人だけです」
「30分ほどで帰ってくる。待っててくれ」
アルミスからハデスの位置を聞いたレオンは島の反対方向へ向かう。
島の森林地帯を抜ける。見たことない木々がたくさんあった。バナナや桃、リンゴにミカンなど、へんてこな木にはたくさんのフルーツが実っていた。
レオンがハデスに話しかけようとすると、先にハデスの方から独り言を発した。
「僕はね、疲れたんだよ。がんらいの性格で、人とうまく生きていくことができなかった。前世では無職ニートだったし、転生した今はパッとしない魔法人形の職人だ」
温泉でばったり会って、意気投合し、人生論を語る老人のようにハデスは悟る。
「僕の愛はいつも空振りしていた。前世でも今でも。結局のところ、僕はそういう星の下に生まれたんだ。ダヤンにいいようにされるわき役としての人生。チート能力があろうがなかろうが、チート連合で幹部になろうが、一生を魔法人形に悩まされる。そんな人生さ」
「お、おう……」
「バジーナに送られてきたどなたか存ぜぬが一人にしてほしい。僕は幸せだ」
ハデスは南国の島で生きることを誓った。日本も大国アルテミスも
レオンは用件だけを手短に言う。ハデスのチート能力をもらい受けたいと伝えた。ハデスは快く了承してくれた。
「魔法人形づくりは飽きた。余生はゆっくり釣りでもするさ」
「バジーナに高級な竿を届けるように伝えておく」
レオンは『みずがめ
能力は、他人の能力を液体にしてすくい上げる。
ハデスの中につまったチート能力を液状にして器にこめた。
魔力でできた器をそのままに即座に次の能力を連鎖させる。
『
レオンから発生した魔力が大きな魚の形になり、空中を泳ぎ『みずがめ
能力は、液体化した他人の能力を吸収する。
『みずがめ
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