第21話 ハデス=ベルセイヌ④

 リィルと映画を堪能しながらポップコーンを食べる。観終わった感想はアクションシーンがすごいだった。夕焼け空、帰りに流行のお店を数店チェックして試着する。リィルはセーラー服なるものを見つけて大はしゃぎ。レオンは店の外で1時間弱待つことに。その後、夕食に、カップラーメンなる円柱の器にお湯を入れただけのものをいただく。担々麺は辛くておいしかった。リィルのおすすめでカップラーメンセットを買うことに。ハナコと一緒にカップラーメン屋に行きたい、と言うと、幼女リィルに、僕も一緒に行く、と飛び蹴りを受けた。まったく災難だ。


 王都を満喫したレオンの楽しい一日はあっという間に過ぎた。そして気づく。転移魔法を使えばハデスの牢屋まで一目散だ。ホテルに戻り、アルミスに転移魔法を相談しようと考え、アルミスの部屋に向かったところでやつはいた。


「はーい。初めましてレオン」


 セーラー服にツインテールの片目眼帯少女がアルミスの部屋で仁王立ちしていた。


「私はチート連合の最後の一人。バジーナ=リスキスよ」







「王様大変です!」


 豪勢な夕食が終わり、アルコールの進んだ酔っ払いヘミィを介抱しようと用意された寝室に戻ろうとした矢先、ハナコの耳に急報が入る。


「ハデス=ベルセイヌがいません!」


「なんじゃぁと!? しゅぐに探知しろぉう!」


 ヘミィと同じくベロンベロンに酔っぱらったダヤン王は、ろれつの回らない言葉で護衛兵に指示を出す。転移魔法を使った痕跡を調べるが、結果はなし。すぐにチート能力であり、異世界転生人の仕業だとあたりをつける。


「わしゃあのちぃとのうりょくをつかっへ犯人をみつける。まかしぇいるのしゃ」


「王様。明日にしてください。我々が調べますのでご寝室へ」


「はぁ~い」


 護衛兵に肩で担がれながら寝室へ消えていく。よくしゃべり、よく食べ、よく動く王様だな、とハナコは苦笑する。


「ハデスをもっかい捕まえる。そのためにチート能力を使いこなす」


 ヘミィを眠らせたハナコは自室に戻り、決意を表明した。







 全身に悪寒が走り、変な汗が出る。胡乱うろんな女子高生。バジーナは淡々と告げる。


「アルミスの身柄は拘束した。リィルを捕まえたレオンにお願いがある」


 まったく動けない。ヘビに睨まれたカエル状態。

 ヘビを思わせるバジーナの体躯はスラっとしていて細い。長身にスラっとした手足がくっついている。怒りとも殺気ともとれる目力で数秒間の拘束を余儀なくされる。


 沈黙を破ったのはリィルだった。


「はあいバジーナ。今夜は月がきれいだね」


「告白のつもり? 君が美少年に変身してくれればお姉さんは満足した」


「僕は幼女姿がお気に入り。どしたの? もめごとは禁止」


「もめごとじゃない。実はね……」


 バジーナは部屋の中をぐるりと一周、考えながら歩く。そして立ち止まり、レオンを見る。


「どのような言葉を並べばいいか非常に迷うけれど、単刀直入に言う。レオン、魔王になってくれない?」

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