第6話 何か 『11月16日(木)』

 初デートの次の日、11月16日の朝、今日も遥は早くに来ていて僕を待っていた。また、2人の秘密の花園のような校舎裏で落ち合う。まだ朝早くってこともあって少し寒かった。でも何故か、遥といると心が芯から温まる。


 用件を聞くと、2日連続公園でも良いけど、寒いしデートっぽいこともしたいから別のところに行かない? という提案。


「じゃあどこに行く?」

「うーん……結糸に任せる」


 デートっぽいことができて、割りと近い屋内の商業施設か…………


「そうだなぁ…………駅前のイオンとかどう?」

「いいね! じゃあ今日はそこに行こっ!」


 駅前のイオンには色々な店が入っている。飲食店や洋服屋さんはもちろん、ゲームセンターも2店あってなかなか楽しめる。よくリア充を見かけるからデートには適してるんじゃないかな。


「どうする? 時間」

「帰りに行こっ!」

「あれ? でも寄り道は禁止なんじゃなかったっけ?」

「ダメ? ちょっとドキドキするし良くない?」

「だーめ。なんか、言葉じゃ言いにくいけど、遥が悪いことするのは嫌だ」


 てか真面目系じゃなかったっけ? 遥って。


「うーん……じゃあ1回帰る。でもたくさん遊びたいから急いで帰って、16時に集合しよう。イオンの前のおっきい木辺りで集合ね」

「16時で間に合う?」

「今日は45分授業だから大丈夫!」

「あ、そっか。すっかり忘れてた。それじゃあ16時にイオンで」

「うん。じゃあね、結糸。…………好き」

「僕も。僕も、遥のこと……す――――だから!」

「え? なんて? 聞こえなかったよ? もう1回言って」

「嘘だ! 絶対聞こえてた!」

「ソンナコトナイヨ」

「あんまりからかわないでよ、一応これでも彼氏なんだから」

「ごめんごめん。じゃあまたあとでね」


 遥が去ると共に温かかった心が少し寒くなる。遥が僕にくれている『何か』の大きさを感じる。そしてそれに劣らない『何か』をちゃんと遥に返せているか不安になる。その『何か』が何かは分からない。見えないし、感じるだけしかできないけれど、確かにある。そんな『何か』。そしてその『何か』を遥に返したい。どうしたら返せるかとかは今はまだ分からないけど、少しずつ遥との時を過ごす中で見つけられたらいいな、なんてそんなことを考えながら、そんな不安を心の奥にしまって教室へと戻った。


 45分でいつもより短めの6時間を耐え、待ちに待った放課後。時間は15時45分、約束の15分前だ。


 11月の半ば、ハロウィーンが近づいてきたためか、目印の大きな木にはハロウィーンの飾りつけがされていた。木の根本にはハロウィーンの象徴のようなジャック・オー・ランタンの置物。枝や葉っぱにはコウモリのような飾りつけがされている。小悪魔の仮装を遥がしたらめっちゃ可愛いだろうな、なんてことを考えながら遥を待つ。10分ほど待ったところで遥がやって来た。


「ごめん! 待たせちゃった」

「うんん、僕が早く来すぎただけだし」

「無理して早く来なくて大丈夫だよ? 私そんなことで文句言わないし」

「いや、僕が遥に早く会いたいだけだから気にしないで」

「…………その臭いセリフはどこから来るの?」

「わかんない」


 こうして笑いながら2回目のデートはスタートした。

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