第二章 5年前 出会いの木
あれは、小学5年生の時のことだった。
隣のクラスに外国人がやってきたと、小百合のクラスでは話題になっていた。誰かの話だと、きれいな「キンパツ」と「あおい目」をしているそうだった。小百合はその当時風邪をこじらせ、正直その話題にはついていけていなかった。
そんなある日、小百合はその外国人と遭遇した。久しぶりに休日に公園でクラスメイトとカン蹴りをして遊んでいた。おにから隠れるために茂みに入っていると、うしろからだれかの寝息が聞こえてきたので、おそるおそるのぞいてみた。するとそこにはきれいな外国人少女が眠っていた。
「ねえあなた、大丈夫ですか?」と体を揺さぶりながら声をかける。
すると少女は、眠たそうに目をこすりながら起き上った。
「Oh...I went to sleep .Thank you for waking me up.」と、いきなりしゃべりだした。
小百合はかたまった。それもそのはず、いきなり聞いたことのない言葉を言われて、対応できるはずもない。かろうじて、テレビで何度か耳にした「英語」と呼ばれるものだとわかった。
少しの間をおいて小百合は、
「、、、ハロー、、、」と自信なく返事をした。
すると少女はくすっと笑うと
「ごめんなさいね。寝起きだからかな、つい英語で話しちゃった。」
と、まるで日本人のようなきれいな日本語を話し始めた。さらに続けて、
「わたしはリリア、リリア・デンプシー。あなたは?」
小百合はあっけにとられながらも、無意識のうちに
「小百合、、相川小百合、、です。」
と答えていた。
「いい名前ね!よろしく小百合!」
小百合はリリアの満面の笑みにこたえるように笑いながら、彼女の伸ばした手にそっと手を重ねた。
「あぁー忘れてた!」
リリアは突然立ち上がった。
「ど、どうしたの?」
「わたしね、コロネを探してたの。それでこの木に登って上から探してたんだけど、枝が折れて落ちちゃったの。それでたぶん眠っちゃってたんだ。」
「コロネってペット?」
「うん、ポメラニアンなの。朝起きたらいなくなってて、探してるんだ。見かけてないかな?赤い首輪つけてるんだけど。」
「ごめんね、みてないや。」
「そっかー、んじゃあ探しに行くね。また月曜日に~。」
といいながら彼女は走って行った。
「あ、ちょっと、、なんでまた月曜なんだろ?」
小百合は疑問に思いながらも、また会えるのだとうれしくなっていた。
彼女が走って行った方を眺めながら、少しのあいだ、小百合はただ立っていた。
「、、川さん。相川小百合さん。」誰かに呼ばれて小百合は振り返る。そこにはクラスメイトの中村さんが立っていた。
「ん?どうかしたの?」
「どうかしたって、相川さん、カン蹴りやってる自覚あるの?」
「あっ、ごめんなさい、、、」
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