Episode 07
ー柊香の誕生日まであと3日ー
ー柊香視点ー
「むぅ〜」
珍しく柊香が不機嫌だ。ちなみにいつもは楓が不景気な顔をしていることが多い。隣を歩く花梨にもわけがわからない。
「どうした?見るからに不機嫌そうな顔して」
「最近楓が冷たい気がする。隠し事してる気もするし」
「あーーー………」
おそらく今日も蓮と2人で柊香の誕生日プレゼントを探しに行っているのだろう。このことは当日まで3人だけの秘密ということになっているので、柊香は知らない。少し悪い気もするが、もう少し我慢してもらわないといけないのだ。
「む、花梨ちゃん何か知ってるの?」
「イヤーナニモシラナイヨ?」
「嘘だー!その顔は知ってる顔だー!」
「どんな顔だよ!」
「ふん、いいもん!」
「おいおい…」
「そういえばさ、花梨ちゃんのそういう反応ってあんまり女の子に見えないよね」
「えっ………」
思わず持っていたおやつのパンが入った袋を落としてしまう。割とガチでショックを受けているようだ。
「いやー、あれだよ!別に女の子らしくないとかじゃなくて!ちょっと男勝りすぎるというか!」
「うっ!…」
「たまに男子を張り倒しちゃうから格好いいなーとか思うよ!」
「ううっ………」
「あの…ごめんね?」
「いいよ、そんな無理に慰めてくれなくても…HAHAHA」
「ちょっと花梨ちゃん帰ってきて!花梨ちゃんまで魂だけになったら嫌だよ!?」
「おっと危ない、天界に召されてしまうところだった」
「もう…」
すると、蓮からメッセージが届いた。ただ一言だけ「助けて。分からない」とだけ書いてあった。
「はあ…」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと用事思い出した。また明日ね」
「あ、うん。また明日ー」
おそらく並の男子よりも速いのではないかと疑うレベルで疾走していく花梨を見送りながら、柊香は首をかしげる。
「どうも花梨ちゃんも何か隠している気がする…」
ー駅前のショッピングモールー
「で、呼ばれたから柊香との楽しい下校タイムを打ち切って来たわけだけど、なぜ宝石店?」
「いやー、女性に送るプレゼントといえば指輪とかネックレスのような気がして…」
「僕は今度母の日にお母さんに送るものが何かないかなあって」
お悩みモードの楓と、体の周りにぽわぽわオーラを放っている蓮を見て、花梨はため息をつく。
「なに、誕生日にプロポーズでもする気なの?」
「え!?いや、そういうわけじゃ…」
「そして、新河。お前は目的がずれてるぞ」
「あはは、ゴメン。花梨さんには敵わないなあw」
「名前で呼ぶことを許可した覚えはないぞ」
「ああ、うん」
「それで、どうするんだ?あと3日だぞ」
「とりあえず誕生石のネックレスとかかなあと」
「宝石は確定なんだな…」
「え、ダメなの?」
「というか楓、お前柊香に触れてもらわないと物持てないだろ」
「あ…」
「ったくもう…その辺も考えねえと。買うのは私たちが代行できるけど、渡すのはお前なんだからな?」
「はい、すみません」
「どうしたものか………、あ」
「何か思いついたか!?」
「ちょっと耳を貸して」
「おう」
「ごにょごにょ………」
………………………………
「まじで?」
「まじで」
「なかなかハードル高いんだけど」
「頑張れ」
「わかった…」
「あのー、2人とも。僕のこと忘れてない?」
「お前は1人で母の日のプレゼントでも物色してろ」
「そんなあ。花梨さん酷いよお」
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