Episode 06
ー翌日ー
ー楓視点ー
「とは言ったものの、どうしよう…」
「ねえ楓くん…」
「はあ…」
学食で先程からずっとため息ばかりついている楓に、蓮が呼びかける。
「楓くんってば!」
「あ、わりぃ」
「それで、なんで僕呼ばれたの?僕恋愛経験とか無いし、女の子が喜びそうなのとかわかんないけど」
「気軽に相談できる男の知り合いお前しかいないからな」
「そうなんだ。かわいそうに」
「そこは言わなくていい」
「あ、うん」
「それと、他のやつらには俺が見えないんだから、あんまりまともに受け答えしてると、変なやつだと思われるぞ?」
「じゃあどうやって意思疎通をすればいいのさ」
「こうする」
そういうと、楓は蓮の身体にヌッと侵入し、脳と直接意識を繋げた。
「ヒャンッ!」
突然入られたことにビックリした蓮が男とは思えないような声で叫んだので、学食にいた他の人たちの視線が一斉に集中してしまった。
「叫ぶな」
「だ、だってぇ…」
「そんなに変な感じだったか?」
「なんか、ヌルッとしたもので身体中を舐められたみたいな変な感じがした」
「柊香はそんなこと一度も言わなかったけどなぁ」
「言わないだけで、結構無理してるんじゃない?」
「マジか。そうだとしたら悪いことしたなあ」
「で、何の話だっけ?」
蓮に身体の感想を聞いていてすっかり本来の目的を忘れるところだった。危ない。
「おっとそうだった。女子が喜びそうなデートスポットを相談しようとしてたんだった」
「それ絶対僕に聞くの間違ってるよね?」
「しょうがねえだろ。で、何処か良いところ知らない?」
「うーん、ポートタワーから見る夜景なんか綺麗だと思うけど」
「誕生日デートにポートタワーとか初めて聞いたぞ」
「楓くんが知らないだけじゃない?」
「まあ、否定はできないな。他はなにが良いかなあ…」
「ところで、」
「なんだ?」
「誕生日デートするのはいいんだけど、具体的に何するの?」
「あ…」
「………課題が増えたね」
「勘弁してくれ…」
……………
ー柊香視点ー
「どうしよう花梨ちゃん」
「その前に何があったか言え」
楓が蓮と学食で話しているのと並行して、柊香は花梨と屋上で相談を持ちかけていた。
「楓が誕生日デート誘ってくれたんだけど、どどどどうしよう!!!」
「落ち着け、何が問題なんだ?」
「いや、その………こういうちゃんとしたデートしたことないから、どうしたらいいかわかんないというか…」
「それ私に聞くか?彼氏0人どころか恋愛経験自体無いぞ」
「でも気軽に相談できる女子の友達花梨ちゃんしかいないし」
「寂しいやつだな、柊香も」
「それは言わなくていいの!」
「で、柊香はどうなりたいわけ?」
「え?」
「楓と誕生日デートして、たぶんこれからも一緒に生きていくんでしょ?どうなりたいの?」
珍しく静かに、しかしはっきりとものを言う花梨は、少しだけオトナに見えた。
「わかんない…。一緒にいたいのはそうだけど、ボクと楓が結ばれることは現実的に考えてありえないし…、楓がそこまで一緒にいたいと思ってるかどうかもわかんないし…」
「…そんなの私でもわからないよ。2人のことは当事者である2人にしかわからないんだから。私や新河みたいな部外者は外から見守るくらいしかできないよ。答えを出すのは柊香、あんただ。私じゃない」
「花梨ちゃん………」
「………」
「………ちょっと良いこと言って遠回しにめんどくさい事から逃げようとしてない?」
「バレたか…」
「もう!!!」
……………
ー放課後ー
「はぁ…」
「はぁ…」
花梨と蓮がため息を吐きながら廊下ですれ違う。
「新河、どうしたの?ため息なんかついて」
「小宮さんこそ」
「「実はね………」」
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