Episode 04
ー2018年4月6日ー
「………(イライライライライライライライライライライライライライラ)」
「楓君、何をそんなに怒ってるの?」
「何でもない(イライライライライライラ…)」
「とてもそうは見えないんだけど…」
女子が身体検査を受けている待ち時間、楓から謎の嫌悪感オーラが流れ出て、蓮だけでなく、同じ教室にいる着替え中の他の男子生徒にまで若干影響が出ている。なんというか、見えない威圧感にビクついている感じ。
「本当に大丈夫?」
「あ゛?」
「ヒィッ!」
楓がハイライトの消えた目で睨んできたので、蓮は後ろに下がって机に激突していた。
「おーい、女子終わったから、次男子行けー……って、どうしたの?」
待機していた男子を呼びにきた花梨が、嫌悪感オーラを放っている楓と恐怖でフリーズしている蓮を見て首をかしげた。
「ナンデモナイヨ?」
「はあ…、来い。今日は一緒に帰ろう」
「…わかった」
花梨に連れられ教室を出ると、他のみんなが解凍されたかのように通常通り動き出した。
ー帰路ー
「で、なんでそんなにイライラしてるの?」
「ベツニ…」
「普通に喋れ」
嫌悪感オーラを垂れ流している楓をクリアファイルで叩いて元に戻すと、再度質問した。
「何があったんだよ。昨日のこと?」
「うっ、だって…、あんなに近く…」
「当たりか」
今度は惚れ照れオーラが溢れそうになっている楓を再度ファイルで叩いた。
「落ち着けよ。柊香の他人との距離感が変なのは、彼氏のお前も知ってるだろ?」
「だって…あんなに近く…俺でも近づけたことないのに…」
「乙女か!」
2人が一緒になってもうすぐ1年くらい経つのに、まだそんなにピュアな関係だとは思っていなかったので、花梨も正直驚いた。ついでにもう1発叩いておいた。
「前みたいにイチャつかなくなってちょっと不安だったけど、なんか安心した」
「何だそれ」
ホッとした様子の花梨に楓は不思議そうだ。
「いやあ、柊香も想われてるんだなあと改めて実感したってところかな」
「そうか」
「うん」
それからしばらく歩いて、帰路の分かれ道まで来た。
「そうだ、良いこと教えてあげる」
「ん?」
「再来週、柊香の誕生日でしょ?」
「ああ、そういえばそうだったな」
「忘れてたのか…、彼氏としてどうなの…」
「うるせえ、ちょっと忘れてただけだ」
「まあそれは置いといて。今年はプレゼントあげたら?きっと喜ぶと思うよ」
「そんなに単純なもんかね…」
「女の子はめんどくさい生き物だけど、そういうとこは案外単純だったりするんだよ。女の私が言うんだから間違いなし」
「たまに花梨が女に見えないときがあるんだが?」
「あ゛?」
「いや、すまん。冗談だ」
「とにかく、今年はあげなよ。去年は…あれだったし…」
「………そうだな…」
楓は目を閉じ、1年前の記憶を辿った。彼という存在を大きく変えてしまったあの日のことを。
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