第15話 架空と現実
その夜、僕はいつものようにソラの家でご飯を食べる。
その後テレビを見ていたら映画が始まった。
アークと同じように子供が銃を持ってロボットと戦う話だ。
子供向けの映画だから、派手に銃をぶっ放してどんどんロボットをやっつけていく。
実際と同じように、ロボットは正体が分かっても自身をロボットだとは認めない。
こいつらはただの機械だから、正体がバレるとかそういう事が分からないんだ。ただプログラムされたままに自分を人間だと言い続ける。だから騙されるな、と劇中でも言っている。
ゴークルに相手がロボットかどうかの情報が表示される所なんかはいかにも映画だ。アークにもあんなのがあればもっと楽になるんだけど。
クライマックスでは銃を失い、主人公はピンチに立たされる。
顔の皮膚が半分剥がれ、露出した機械の腕で襲い来る敵に生身である主人公は逃げるしかないんだけど、最後はトラップのようにロボットの上に鉄骨を落として決着をつけた。
だけど潰れた頭の中にあったのは、人間の脳だったんだ。これまで撃ったロボットは木っ端微塵だったから分からなかった。
真実を知った主人公の心は壊れてしまう……、という最後で何とも怖い話だった。
僕も何体もロボットを処理したけど、もしそれが本当は人間だったら――。そう考えると怖くなってくる。
ソラは隣で黙って見ていたが、身を寄せてきて僕の腕を掴んできた。
恐い映画を見ていい雰囲気に? と意識しないわけでもなかったが、ソラの怯え方に只ならぬものを感じて思い留まる。
不謹慎な映画だ、とも思うが世の中にはアーク反対派は多い。案の定CMはロボット対策グッズや団体の宣伝だ。
アーク反対派の多くは子供の身を案じてのものだが、このスポンサー達はそれに託(かこつ)けて自分達の商売を広げたいだけだ。
こういう連中は今儲ける事しか考えていない。法に抵触しない事を謳ったスキャナーを売り捌き、その後プライバシー保護を謳った防護装置を売り出し、今度はそれを破るスキャナーを売り出す。
『自分の身は自分の手で!』
今人気のタレントがかっこよくデザインされた機械を手にポーズを決める。
一般家庭で購入できる程度の物は実際にはただの金属探知機だ。注意して見ているとこれらのCMは「これでロボットを撃退」や「これでロボットを判別」という言葉を一切使っていない事が分かる。
ロボット=金属という先入観をまず繰り返し与え、いかに効率的に金属を検知できるかを紹介しているだけだ。
僕はアークで予備知識を与えられているから分かるだけで、普通の人はこれで騙されてしまうんだろうな。
新型のロボットはまず判別できないはずだ。なるだけ考えようにしていたエリナの事を思い出したのか、その夜は辛い夢を見てしまった。
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