第12話 戦場に咲く花

 出動用小型バンに僕達、と一機は乗り込む。詰め込めば大人四人乗れるくらいなのだが、普段の調子に慣れているとこれだけでも結構窮屈だ。

「いいですか。ワタシの指示に従い、くれぐれも勝手な行動は取らないように」

「何偉そうに言ってんだよ。何かあった時に責任取んのオレらなんだからなー」

「何を言っているのです。未成年であるアナタ達が取る責任など無いも同然です。実際にはアナタ達が教官と呼んでいる局長とミズキがその責任を取るのです。ワタシが犯したミスはそのままミズキの責任ですので、ワタシが先陣を切る方が、アナタ達に自責の念がわかない分合理的だとは思いませんか」

「そっかー、そうかもな。んじゃ、よろしく頼むよ」

「任せてください」

 いいのかな。セイリュウは楽がしたいだけの様な気もするが……。

「……って、何してるの?」

「見ての通りです。アークブラスターに弾薬を装填しているのです。ワタシもアークの一員ですから使用許可が降りています」

「いいのかな? 常識的に考えて……」

「今更何を言っているんです。子供に銃を持たせる事の方がよっぽど非常識ですよ。それともワタシだけ丸腰で戦えとでも言うんですか?」

「いや、戦うって……」

 目標のスキャンが目的なんじゃ……。

「ワタシは本来軍事戦術用に開発されていた機体です。ロボットの暴走騒ぎによって凍結されていたものをミズキが再始動したのです。銃器の扱いから格闘戦に至るまで傭兵並ですよ。さて、作戦内容を確認してください」

 移動中に今回の任務を確認する。

 今までも問題としては挙げられていたが、アークにはそれをこなせる準備は整っていなかった為にずっと先延ばしになっていたものだ。

 それが支援ロボットの導入で現実味を帯びるのだが、テストもせずいきなり投入する事になったのは、色々と大人の事情があるらしい。

 先のロボットを人間と誤認した――正確にはそれが公になった事件の為に、特別害機対策局は窮地に立たされている。

 実際には主任が説明した通り、人間をロボットと誤認して傷つけてしまう事に比べれば、全く想定内の出来事に過ぎないのだが、ここぞとばかりに叩き出す連中が世論を賑わせているようだ。それは僕もテレビで見て知っている。

 早い話が、とっとと結果を出してしまえという事だ。

「では作戦開始です。ワタシに着いて来てください」

 さっそうと足を踏み出した白菊だったが、バンと地面との段差を誤ったのか、派手に滑って転んだ。

 受身も何もない。人間が中に入って僕達を担いでいる可能性を完全に否定する転び方だった。

「あっはははは。何やってんだよ」

 セイリュウも派手にウケる。僕は唖然としてしまっていた。

「この移送車のタラップには改善の余地がありますね。これでは子供達を安全に降ろす事ができません」

「オレは滑った事ないよー」

 尚もヒィヒィと笑い続けるセイリュウに特に反応せず機械的に立ち上がる。

「アークブラスターが演習用よりも重量があるようですね。一丁だけだと左右のバランスがうまく取れないようです。トモ、アナタの銃を貸してください」

 え? だって……、それじゃ僕が丸腰に。

「心配要りません。アナタはワタシが守ります」

 承諾していないのに勝手に僕の銃を奪い取り、二丁拳銃に構えて器用に銃尻を押し込む。

 そのままさっさと歩き出したので、仕方なく後を追う。

 僕達よりも身長がある上に早足なので、走るくらいでないと追いつけない。

「おおーい、待ってよー。早すぎるー」

 セイリュウが叫ぶと白菊は足を止め、こちらを振り返る。と同時に銃をこちらに向けて引き金を引いた。

 爆音と共に発射された弾は、僕とセイリュウの間を通り過ぎて背後で爆発した。

 な、な、なにを……、と言おうとするが言葉が出てこない。

「ト、トモ。……これ」

 セイリュウの声に後ろを振り向くと、そこには煙を噴いて倒れているロボットの姿があった。

「一体処理」

 無機質な音声を発して、再び前を向く。そして今度は僕達にもついていける速度で歩き出した。

 ここは外部からの電力供給が断たれて数年経つが未だ暴走したロボットが徘徊しているのだと言う。

 中には太陽電池等の自己供給型の電源設備も残っているから、そこから電源を得ていると考えられている。

 後期に発売されたロボットは自己充電機能付きなのが一般的だ。

 暴走してもそういう機能を失わない所が、ただの不具合ではなく人為的なものだと言われてる所以でもある。

 そういう訳でこの区間は未だにゾンビに占領された街のような廃墟になっているんだけど、街の境界にはバリケードが組まれていてそれほどの危険はない。

 こういった区間はまだいくつか残っているが、ほとんどはバウンティハンターによって安全が確保され、元の住める街に戻っている。

 しかし人の皮を被ったロボットが現れてからは放置される事が多くなった。

 僕達の任務は残っている動力源を探し出して停止する事。そうすれば残りのロボットは勝手に電池切れで停止する。

 アークの装備ならば、それほど大した任務ではない。

 危険なのはどこから何が出てくるか分からない状況だ。比較的開けた場所の多い街中はまだ危険が少ないと言えた。

 じゃあなぜ今までアークがそれをやっていなかったのかと言うと……、

「ひゅ~、見つけたぜぇ。久々の獲物だ」

 レザーのチョッキを半裸に着た、いかにもガラの悪そうな大人が四人、僕達を見つけて近寄って来た。

 手には鉄パイプなどの武器を持っている。

「なんだ? ガキじゃないか。なんでロボットと一緒にいるんだ? 危ないぞ」

「僕達はアークです。ここは危険ですので退去してください」

「そーそー。このロボットはケーサツのだから心配ないよー」

 一応お決まりの言葉を伝えるが、男達は、アークぅ? と笑いながら互いの顔を見合わせる。

「ここのロボットは俺達が退治する。お前らはさっさと家に帰んな。まずはそのロボットからだ」

 男達は手に武器を持って取り囲むように散開する。

 バウンティハンターがロボット狩りと称して人間を傷つける事が増えた為、今はハンター制度は廃止されている。彼等は閉鎖区画に不法に侵入し、ロボットを破壊しては部品を売りさばく、不認可のジャンク屋だ。

 政府の組織した少年部隊とは言え、アークに彼らを制圧する術はない。銃はもちろん使えないし、暴動鎮圧の方法まで訓練するにはあまりに準備期間が足りない。

 警察官が武装して介入しようものなら、血で血を洗う争いが起きる。今でも普通に空き巣や暴力沙汰も珍しくないが、いざこざも無法者同士の話だし、結局ロボットを破壊するのなら――と放置されていたのが現状だ。

「ここは立ち入り禁止区域です。直ちに立ち去りなさい。繰り返します。ここは立ち入り禁止区域です。直ちに……」

「おほっ。しゃべったぜ、コイツ。バラさずそのまま売れんじゃないか」

「しかも新品っぽいぜ、いくらになるかな。新車と替えられんじゃないか?」

「まったくもって失礼な。私の値段は国家予算と同等ですよ。量産品と一緒にしないでほしいです」

 何に対抗意識を燃やしてるんだ。と言いつつ僕とセイリュウは身を寄せ合う。

「なんか、やっばーい雰囲気じゃね?」

 たしかにやばい、正当防衛って言っても防衛する手段がない。銃で脅す? でもアークブラスターは市民に向けて撃てない事はテレビで散々放送している。

「その銃も頂いとくか。分解すれば使えるようになるかもしれねぇしな」

 ヘタに分解しようとすると爆発すると教えた方がいいのかな。

 白菊は両手に持った銃を同時にくるくると回し、ホルスターにしまうように備品ポーチのベルトに差し込む。

「最後の警告です。直ちに立ち去りなさい。さもないと、あなた達を逮捕します」

 男達は聞く耳を持たず、輪にしたロープを投げて白菊を捕獲しようとする。

 足を縛って倒そうというのだろうけれど、白菊は空中でそれを掴み、装備品からナイフを抜くとロープを切断した。

「あ、こいつ」

 男は仕方ない、と鉄パイプを振り上げ、足を打って倒しにかかった。多少傷つけても仕方ないと思ったのだろう。

 だが白菊はそれを一歩踏み込んでパイプの根元を掴み、力に逆らわずに男の体を一回転させた。

 同じように飛びかかってくる相手を一人、また一人と宙を舞わせる。

 最後の一人は腕を掴んでそのまま地面に引き倒した。

「ああーっ、いたた」

 倒された時に関節を痛めたのか、男は情けない悲鳴を上げる。

「お、おい。ロボットが人間を傷つけていいのか? ロボット三原則を知らねぇのか」

 初めに倒された男が起き上がって抗議する。

「はて、ロボット三原則とは何です? 言ってみてください」

「ロボットは、人を傷つけちゃいけないんだ」

「二つ目はなんですか?」

「え、えーっと。二つ目は……、どうでもいいだろ。とにかく傷つけちゃいけないだけで十分だろ」

「傷をつけなければよいのですね」

 と言って白菊はテコの原理で掴んでいる腕に力を加えると、周囲に鈍い音が響いた。

 関節を折られた男は悲鳴を上げる。

「お、おい! 何しやがんだ!」

 残った男達は武器を拾って睨み付ける。もう捕獲ではなく、完膚なきまでにバラバラにしようという剣幕だ。

「よく見てください。どこにも傷はついていませんよ」

 腕を引っ張り上げて見せ、男は涙を流して喚き散らす。

「中身は折れてんだろボケェ!!」

 男達は手に持つ武器に力を込めた。

「中身? あなた達に見えるのですか? そうですね。せっかくですので見せて差し上げますか」

 白菊は咽び泣く男の髪を掴んで持ち上げ、もう一方の手でその顔面を掴む。

 その手に力が込められ、ミシミシと軋む音と共に男の悲鳴が只ならぬものになる。

 男達が、助けに入ろうと武器を振り上げたが、その前に白菊の手は男の顔をぐしゃっと握り潰した。

 血が飛び散り、剥がれた顔の下にある物を見て、男達が悲鳴を上げて尻餅をつく。

 その下はカーボン製の白い骨格があった。声は悲鳴を通り越して雑音のようなノイズになった。

 白菊が手を放すと、人の皮を被ったロボットは立ち上がり、折れた腕を抑えて逃げる。数メートル走った所で、その胴体が真っ二つに千切れ飛んだ。

 白菊は煙を噴くアークブラスターを腰に戻す。

 尻餅をついたまま唖然とする男達を見下ろし、

「さて、まだロボットが紛れているかもしれませんね。ここに残るのなら一人ずつチェックしますのでそこに並んでください」

 そう言うと、男達は立ち上がって一目散に逃げていった。

 僕達は呆然とその後姿を見送る。

「すっげーな。白菊、強えんだな」

「当然です。格闘戦もエキスパートだと言ったでしょう」

「でも……、ロボットだって分かってたの?」

「当たり前です。ワタシは何の為に配属されたと思っているのですか?」

 それはそうか。何の素振りも見せなかったし、戦い方が鮮やかだったので忘れていた。

「でもよー、あいつらがすんなり立ち去ってたらどうしてたワケー?」

「別に何も。本作戦は閉鎖区画の動力の停止です。人間に紛れたロボットの排除は含まれておりません」

 そういう所は機械なのかな。融通が利かないと言うか。

 僕達は身を屈める事もなく歩を進め、何体かのロボットを処理する。僕とセイリュウは白菊の後をついて行っているだけだ。

 本当に僕は必要なんだろうか、という疑問が沸き上がる頃、前を歩く白菊が足を止めた。

「妙ですね」

「ミョーって何がー?」

「ロボットの数が多すぎます。残弾があと一発になってしまいました。セイリュウ、アナタの銃と交換してください」

「これ、一発残ってる方?」

「空に決まっています」

「えー」

 白菊が言うにはロボットと遭遇しても精々数体。ジャンク屋の方が多いと予想していた。

 自己供給システムが残っているとしても、その電力はたかが知れているはずだった。

 今まで遭遇した数だけを見ても、ソーラーシステムでは有り得ない、それ以上の電力があるはずだと言う。

「原子炉でもあんじゃねえの?」

「そのような設備があったという情報はありませんが、そうでないと説明出来ないのも事実ですね」

 白菊はまた遠くの影に向かって発砲。目標は金属的な音を立てて倒れたが、ゆっくりと起き上がり始める。

「装甲されていますね。あれは廃棄されたロボットではありません。ここにある何かを守っていると予測されます」

 起き上がるロボットの後ろから、同じ形をしたロボットが姿を現す。

「現在の装備では心許ないですね。いったん撤退して態勢を立て直す事を少しだけ推奨します」

「少しだけって……、進んでも大丈夫って事?」

「もしここに何か見られては困る物があるのなら、次に来た時にはキレイサッパリなくなっているのが常です。貴重な手掛かりを逃してしまう事になるかもしれません。決めるのはアナタ達です」

 今まで散々仕切っておいて、急に責任押し付けるみたいな……。

「弾がないんだろー? 帰った方がいいよー」

 セイリュウの言う事が正しいんだろうけど。

「トモの意見はどうです? ここで引き返してその後の人生を後悔の中で生きるのか、一連のロボット事件の真相に近づいた者として歴史に名を残すのか、選んでください」

 その二択で選んでって言われても……。モニターしている本部からの指示ランプは撤退を示している。

「ロボット事件が数十年に渡って続き、この先多くの人間が犠牲になり、その数倍の人間が不幸になる事になっても、それはアナタのせいではありません」

 そんな事言われても……。

「何か方法……、勝算はあるの?」

「任せてください」

 さっきのジャンク屋を撃退した戦いぶりを信じて、危険と判断したらすぐに撤退するという事で進む方に賛成する。

「ではチームの決定という事で、先に進みましょう」

「なんでー、一対一じゃんかー」

「ワタシは51%で進む方に賛成です」

「ロボットに投票権あんのかよー」

 文句を言いながらもセイリュウはついてくる。彼は元来細かい事を考えないタチだ。

 白菊は手近な集合住宅に入り込み、何やら家捜しを始める。電気コードやらオイルやらを集めだした。これって空き巣じゃないの? 閉鎖区域とは言え、持ち主が所有権を放棄したわけじゃない。勝手に持ち出してはいけないはずだ。

「これは徴発といって略奪とは違います」

「チョーハツ? ワザと怒らせるヤツ?」

「権力で無理矢理取り上げる事です。ちなみにアークに徴発の権限はありません」

「お前もアークの一員じゃなかったのかよ」

「ワタシは正確には防衛省の所有で、警視庁に貸与(たいよ)されている形です。アナタ達とは雇用形態が違うのです」

 雇用って……。

 そんなやり取りをしながらも白菊は手際よく即席の装備を作り、徴発した品の目録を作って防衛省のサインを残した。

「これはさっきのジャンク屋が使用していたロープをヒントにした簡易ボーラ、投擲ロープです」

 電気コードの両端に家電機器が錘(おもり)のように取り付けてある。

「こちらは潤滑油をビンに詰めた物です。ロボットの足元に投げつければ転倒させる事ができます」

「これはお前がさっき滑ったのをヒントにしたんだなー」

「これは火炎瓶。化学薬品を使用しているので電子機器に効果を発揮するでしょう。これはセイリュウ、アナタが使ってください。多少扱いには危険が伴いますが、アナタなら大丈夫」

 ケタケタと笑うセイリュウにビンを詰め込んだバッグを渡す。なんか怒って危険な方を持たせたようにも感じ取れるけど……。

 僕は潤滑油の方を持って、建物の間を進む。闇雲に歩いても効率が悪いんじゃないだろうか。

「こういう場合、何かあるとすれば区画の中心と相場が決まっています。四方から進入できるわけですからね。中心に近いほど見つかりにくい。そして……」

 巡回しているらしきロボットが現れた。次、また次とどんどん出てくる。

「警戒が強くなるほど核心に近い」

 白菊は錘をつけたコードをぶんぶんと振り回す。十分に加速がついた所で、ロボットに向かって投げつけた。

 回転して飛ぶ簡易ボーラは足に絡みつき、ロボットを転倒させる。

 僕とセイリュウも向かってくるロボットにビンを投げつける。

「燃えても動き止まんねーぞ。平気で向かってくるー」

「熱と薬品で機械が狂うまで時間がかかりますので注意してください」

「先に言ってくれー!」

 絶対笑われた事を根に持っていると思う。

 わらわらと出てくるロボットに背負った袋の中身を投げつける。進むごとに軽くなっていくのはありがたいけど、同時にそれは武器が無くなっていく事でもある。帰り道の事を考えなくていいのかな。

「どうやら核心に近づいたようですよ」

 目の前に迫るロボットに夢中だった為に周りを気にしていなかったが、白菊の促す方に目をやると、そこは開けた場所になっていた。

 駐車場か何かだろうか。だが今並べられているのは自動車ではなく、理科室に置いてあるような骨格標本。

 だがよく見ると標本ではない。確かに人間の骨格のようにも見えるが、それはロボット。人の皮を被せる前の、ロボットの素体だ。

「どうやら、ここは工場のようですね」

 元々小さな工場だった物を改造してロボットの生産工場にしているようだ。作業をしているのも全部ロボットだ。

「火炎瓶がもうないよー」

 潤滑油もさっき使い切った。白菊の簡易ボーラも今投げた物が最後だ。

「事件の核心に迫った所でのピンチ。いよいよ面白くなってきましたね」

「面白くないよー!」

 セイリュウが悲鳴を上げる。

 工場の周りにもロボットだらけ。後ろからもロボットが迫ってくる。

 オイルやロープでは動きを遅められるだけだ。足を引きずりながらゆっくりと追ってくるロボットもいれば、まだ炎を上げている物もある。無傷のロボットも集まってきているので、来た道を戻るのはかなり危険だ。

 完全に取り囲まれてしまった。

「どうすんだよー」

「戦場では冷静さを欠いた者から命を落としていくのです。冷静に状況を分析して、活路を見出してください。ワタシの事なら心配要りません。ちゃんと保険がかけられています」

 そんな勝手な……、と思いつつもこっちも命がかかっているんだ。落ち着いて周りにある物を確かめる。

 やはり、ロボットが並べられている広場に搬送用のトラックが停めてある。あれに乗って逃げられないだろうか。だけど自動運転ならそれまでだ。

「良い着眼点ですね、トモ。ここで作業しているのは全て人型のロボット。あれもロボットが運転していると予測できます。あれに乗って離脱しましょう」

「でも……、運転できるの? 僕達は免許も持ってないよ」

「任せてください。ワタシは元々汎用戦略型です。車両からヘリに至るまでプログラムされています。さあ、車両まで走って、乗り込んでください」

 と言って白菊はアークブラスターを抜く。

 二丁拳銃に構え、温存しておいた弾丸を余す事無く使って迫るロボットを倒していく、が後続はそれで何とかなっても、僕達の進む先にいるロボットは……。

 トラックは後部が開きっ放しだが、そこに駆け込んでは袋のネズミだ。助手席に回りこむが、そっちにもロボットはうろついている。ぐっと両腕を体の前で組み、タックルしてでも突破するつもりだったが、せっせと作業しているロボット達は僕達には目もくれず、自分達の作業を続けている。

「なんだ。こいつら、何もしてこねぇじゃん」

 セイリュウが助手席に乗り込み、僕も後に続く。

「ロボットという物は所詮プログラムされただけの機械に過ぎませんからね。臨機応変に対応する事など無理な事ですよ」

 白菊が運転席に乗り込んできて、突っ込んだ方がいいのか迷う事を言う。だけどそれより心配な事は……、

「キーはあるの?」

「何を言っているんです。ロボットにそんな物を扱わせるわけはないでしょう」

 白菊がイグニッションボタンを押すとエンジンが唸りを上げて始動する。

「しっかり掴まっていてください」

 ギアを操作し、アクセルを踏み込むと、トラックは派手に逆走した。

 予期していた方向と逆に慣性がかかったので、車内に顔を打ち付けてしまう。白菊は再度ギアを操作すると、今度こそ前に向かって走り出した。

 迫ってくるロボットを派手に蹴散らし、フロントガラスに亀裂が走る。

 ガタガタと揺れるトラックの中、とにかく舌を噛まないようにするだけで精一杯だった。

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