第2話日常の始まり
私は山奥の小さな田舎町で生まれ育った。その村は決して栄えているとはお世辞にも言えなかった。
村には、保育園、小学校、そして中学校が1つにまとめられた校舎と、村の人々が半年に1回集まるための建物以外何もなかった。街の方へ行けば、大きなショッピングモールや遊園地、ゲームセンターなど、子供なら誰もが目を光らせて見つめるものなどがたくさんあった。しかし私の村にはそういったものはなかった。
それどころか、コンビニすら1つもない始末である。公共交通機関も1日に1往復しかしないバスが一台あるだけであった。
都会に住んでいる人からすればありえない世界であろう。
しかし私はそんな村が嫌いではなかった。
むしろ大好きである。遊び放題の土地や、優しい近所のおばちゃんも、都会では味わえない素晴らしさだと私は思っている。
しかし1度だけこの村を嫌いになったことがあった。
それは、私が高校に進学して間もない時であった。村には高校がなく、1番近い高校でも2時間かけて通う必要があった。私は結局村を出て、ひとり暮らしを始めることにした。前に述べたように私は私が生まれ育った村が大好きである。だから私の村の話を高校でしたとき、みんなの反応は私が思っていることとまるっきり違った。私はいじめられた。私はショックだった。
いじめは続いたまま夏休みに入った。私は夏休みに1度だけ村に戻った。
村に戻ると、家族より先に会いたい人がいた。キトコおばさんだ。キトコおばさんは私が生まれてからずっと家族のように私のことを見守ってくれていた。私の大好きな人であった。
村に帰ってすぐに私はキトコおばさんにあった。いつも通り優しく可愛らしい笑顔で迎えてくれた。私は何回この笑顔に救われただろうか。しかし私はその時放った、たった1言でこの笑顔を泣き顔に変えてしまったのである。
私はこの時から1度もこの村に帰っていない。
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