第4話
しばらくして家に帰宅した。
返ってこないとはわかりつつも「ただいま」と言ってしまうのが僕の悪いところだろう。
そんことを考えても仕方ない。”ない物”は”ない者”なのだから。
何かが変わってくれるならいくらでも悩むさ。
僕はこんなくだらないことを考えながら、夕飯の準備を慣れた手つきで進める。
「りりなにしてるんだろう・・・」
滅多に独り言なんて言わない僕が無意識にポツリと呟いた。
どうしてだろう・・・僕はなぜこんなにもあの子が気になるんだ?
りりに会うまでばらばらだった感情の欠けていたはずのピースがはまっていく音が
した。でも、僕の心はそれを許さないようだ。
その感情に蓋をするように僕がこうなってしまったあの日の記憶をかぶせてきた。
僕たちは今日会ったばかりだし、第一僕はもう人と関わらないでいいと決めたじゃないか。そんな考えが僕の脳裏をよぎった。
独りでいいと自分に言付けたのは他の誰でもない僕だろ。
あの日の事を繰り返さないように僕は同じ言葉を何度も何度も頭で繰り返した。
そう、何度も、何度も。
そのあとの記憶は正直うろ覚えで気づいたらベッドの上でポツポツと雨が降る音に起こされていた。
あぁ、また独りの繰り返しが始まるのだと思いながら重いからだを動かす。
そうして、僕は伏せられた写真たてに小さく「おはよう」とつぶやいた。
その声は誰も聞くこともなく僕の部屋にだけ響く雨の音にかき消された。
あの日見た夢の名前 雨音 @AMR
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