第2話
六月の中旬で見事なまでの晴天。しかも休日だ。
海に人が集まらないわけがない。
少しうるさく感じるがまぁ、毎年のことなのでいちいち気にしていたら疲れる。
今日はちょっと遠いが海沿いにある神社に行こう。
僕の思い出の場所の一つだ。正直よく覚えてないけど。
思い出とか抜きにしても僕はあの場所が好きだ。
人が来なくて、風が通る。独り占めできる。
海沿いは風が吹くので山やアスファルトの上よりかは幾分ましだがさすがに雲一つないため太陽の光がそのまま降り注いでくるため汗をかく。
やっとの思いで神社につく。
僕はいつもの海が見える特等席に行こうとした。
いつもは人なんて来ないのに今日に限って僕と同い年ぐらいだろうか・・・女の子が来ていた。
しかも、彼女は僕の特等席に座っていた。
暑い思いをしてここまで来ておいて残念な気持ちにはなるが仕方ない帰ろう。
僕が足を石段へ向けた途端声が聞こえてきた。
「君もここよく来るの?」
ここには僕と彼女しかいない。
つまり彼女が話しかけているのは僕ということになる。
僕は不愛想に答える。
「そうだけど。」
暑さのせいか、特等席を取られたせいなのか彼女に対して対抗心のようなもやもやとしたものを抱いていた。
わざと不愛想に答えたのだが彼女はそれを気にする様子はなくそのまま楽しそうに話を続けた。
まるで新しいおもちゃをもらった子どものように目を輝かせて、自分の好奇心に動かされるままに僕に対する質問や自分がなぜここが好きなのかを僕や自分に言い聞かせるように話し続けた。
気づけば僕は彼女の話のとりこになっていたし、彼女に対する対抗心のようなものはなくなっていた。
僕も楽しくなり夢中で話を聞いていたら、彼女は突然ハッとした顔をし急に話をやめたと思ったら僕に微笑んで優しい声でこう告げた。
「隣にすわりなよ。ここ君の特等席でしょ?」
僕は戸惑ったが素直に座ることにした。
あまり、人の横や近くにいるのは苦手だが不思議と彼女の隣は嫌な気はしなかった。
それに、どこでか忘れたが彼女の声を聴いたことがあるような気がして彼女が気になってしょうがなかった。
僕が座ると彼女は話の続きではなく彼女の名前や年を言ってくれた・・・まぁ、いわゆる自己紹介というやつをしてくれた。
彼女の名前はりりというらしい。年は僕と同じで16歳。
同い年の割には背も小さく顔も少し幼い感じはする。
でも、目の前の海を静かにまっすぐと見つめる横顔はドキドキするほど大人っぽくて虜になりそうだ。
そんなことを思いながらも僕も彼女に自己紹介をする。
名前はかなでということと、彼女もとい、りりと同い年だということ。
りりは僕のことを知るたびに笑ってくれる。
恥ずかしいと思う反面そんなに喜んでもらえると嬉しい。
僕は今までそんな人いなかったから。
”僕を「愛してる」と言ってくれた人たちは必ずいなくなってしまっていたから。”
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