あの日見た夢の名前
雨音
第1話
ここはどこなの?
ここには僕しかいないの?
暗くて深いこの空間に問いかけた。
音も温度も感じない。僕が壊れたのか、この空間のせいなのか。
正直そんなことどうだっていいことだけど何かを考えてないとこの空間に飲み込まれそうになる。
「あなたの存在してる意味はなに?」
僕しかいないと思っていたこの空間に徒に問いかける少女のような声がした。
年は僕と同じ16歳ぐらいだろうか。
僕はその声にこたえようとしたができなかった。
かりに、声の問いに答えが用意できたとしても僕はこの空間にいる限り君の声には答える事は出来ない。
僕はどうすることもできずに暗闇へと堕ちていくんだ。
最後にまた君の声が聞こえた気がしたが僕は耳を貸そうとはしなかった。
ただただ・・・僕は堕ちていく。
それが間違いだと知っていても・・・。
”ジリリリリリリ”
いつもの不快な金属音で目が覚める。
この音を何回、何百回と聞いてきたがまだ慣れる気がしない。
その音を止めてしばらくまだ重たい足取りを引きずって布団から出る。
今日は珍しくゆったりとした休日だ。
カーテンの隙間から覗く光に気づきそっとカーテンを開ける。
梅雨時で最近はずっと雨続きだったので晴れだと少しうれしい。
僕の住んでいるところは田舎なので歩いてすぐのところに海や山がある。
海には失くした僕の思い出がたくさんある。
失くしたといってもすべて失くした訳ではない。だから、大切な思い出だということはわかるのだ。
せっかくの晴れだし今日は海辺を散歩するのも悪くない。
こんなにワクワクしたのは久しぶりな気がする。
僕はさっそく着替えて出かける準備をした。
「いってきます」
誰もいない部屋に僕の声が消えていった。
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