プロローグ2

全ての授業が終わり、大輔は帰りの支度をしていると担任の佐竹が入ってきた。


「えーまず始めにみんなに言わなければならないことがある。」


ホームルームが始まって早々なにか佐竹が真剣な表情で話を始めた。


(なんだよ今日は早く帰れると思ったのに…。)


「誰とは言わないが今日このクラスの女子の

下着が盗まれた。何か知っているやつがいたら正直に話して欲しい。」


『はぁー?なんだよそれー!?』


『きもー!』


『誰だよそいつ!?』


教室中がざわめく。


「はい静かにー。」


担任はみんなを黙らせる。

すると学級委員長の木本が突然手を挙げた。

学級委員長、大輔の特に嫌いな人種である。


「多分今日の体育の時間ですよね?その時ならみんな授業受けていました。1人を除いて…。」


すると一斉にクラスメイトが大輔の方を向く。


「お前なのか?佐藤。」


佐竹が問いかける。

確かに授業は休んだが、大輔はそんなことをする人物ではない。何故なら大輔の悪行には理由があるから。

しかし、弁解する余地もない。普段の行いから大輔がやってもおかしくないという空気がクラス中に漂う。ましてや担任も含めこのクラス、いやこの学校に味方などいないのだから…。


(くそっ…。)


大輔は全速力で教室を出て階段を上る。


「ちょっと待て!」


後ろから担任が追いかけてくる。

どうせ誰も自分の意見なんて聞いてくれない。だから正義は嫌いなんだ。



気がつくと最上階まで来ていた。


(とりあえず屋上に…。)


撒いたようだ。さっきまで晴れ渡っていたはずの空まで大輔を咎めているにどんよりとした表情に変わっていた。

「正義」なら何をしてもいいのだろうか?

あの時の万引きしたのも店員の客への態度がおかしく、不良品ばかり売っていてその対応もまともにされていなかったからやったし、この前の他校の生徒への暴力事件だって中学生がカツアゲされていたのだ。

しかし世間は表面でしか見ないのにそれは「悪」だと裁こうとする。

気がつけば屋上のフェンスに跨っていた。


「正義は必ず勝つ」


おかしな言葉だ。

勝ったものを正義と決めつけ、法律という名のルールで縛り、邪魔が入ればそのルールで排除する。

なんて都合のいい世界だろう。

生まれ変わったら「悪」でも、いや「正義」が勝手に決めつけた「悪」でも自分を主張することができる世界で生きたい。

そう思いながら全身の力を抜いてただ重力に従う…。

その時背後から、


「やっと見つけた…。」


振り向く間も無く佐藤大輔は意識を失った。




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