四章
寧々(澄寧)の宮仕え
あれから
澄寧がしばらく住んでみてわかったのだが、この離宮にはおかしな点がたくさんあった。
まず、女官の少なさである。
最初に縄を投げてくれた女官――
何でも皇太子殿下は人嫌いで、外朝ならともかく、私的な空間である後宮(ここではこの離宮が当てはまる)でたくさんの人に囲まれたくはないというお考えらしい。
そんな理由により、正式な皇太子宮が宮城にあるにも関わらず、この離宮に住むことにしたそうだ。
このことを初めて知った時、正直澄寧は呆れてしまった。
皇太子なら、人に囲まれてなんぼのもんだろうと。でもまあ、位の高すぎる人のことなんて、庶民同然の自分には良くわからないものか。
次に目についたのは、この離宮の姿であった。
初日はイロイロあってよく見ていなかったが、この離宮――というかボロ邸の惨状は、凄まじいものがあった。
壁の漆喰は所々剥げ、室によっては床が腐って抜け落ちているところ(現在、廷さんが全力で復旧工事中!)もある。
それに、少し豪華だと感じた謁見の間の室内装飾も、本かどこかで見たことがあるなーっと思ったら、なんと百五十年ほど前に流行った意匠だったことが判明した。
さらに――これは長年神職の修行をやってきた者の勘で薄々気付いていたのだが――ここはなかなか取り壊すことが出来なかった、曰くつきのものらしい。それを偶然、玉安が譲り受けたもよう。
これには澄寧も絶句した。
あり得ないだろ、普通っ! ていうか曰くつきって、絶対怨霊の類だろ、それ! 万が一憑りつかれたりしたら、どうしてくれんだ!
………とまあ、今までにあった
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