第5話白の少女 ~後編~
翼の悪魔と呼ばれたアニマの咆哮を合図に、戦闘が始まる。
地面から4mほどの高度に出現したアニマは、三人の姿を確認すると、すぐさま襲いかかってくる。
咆哮を上げるアニマの前方にどす黒い球体が出現し、それをアニマが拳を振りかぶり殴りつける。すると球体は無数の弾丸となり、三人へと襲い掛かる。
「これくらいなら余裕だよ!! ビット形成、シールドへ!!」
わずか数秒で二百枚近くのビットを生成していた雪菜が、即座にシールドを作り対処する。一瞬で作り上げたにも関わらず、氷の盾はアニマの攻撃から危なげなく三人を守った。
攻撃が止み三人が目をやると、アニマは空に浮いた状態で、グルルルと唸り声を出しながら魔力を集めていた。先程の攻撃よりも感じる魔力は段違いに多く、雪菜は自信なさげにつぶやく。
「ちょ……。 あれは無理かなー……、なんて?」
アニマが黒いレーザーを放つ直前に構える雪菜だが、空良がそれを手で静止し前に出る。雪菜とは対照的に自信有りげな空良は、にやりと微笑み前方へ右手をかざした。
「こういうのは私の担当ですよー? 二人共下がっててください!!」
雪菜のように盾を出したわけでもなく、ただ手をかざしただけのように見える。しかし、アニマの放ったレーザーは、空良の手に触れるか触れまいかという所で、霧散し無力化してしまった。
アニマの攻撃を防いだ空良は、すぐさま全速力でアニマに向かっていく。アニマから4、5m離れた所で彼女は手を振りかざすと、アニマの腹部あたりに何やら魔力弾のようなものを作り出し攻撃する。あまり威力はなく、軽く怯んだ程度だったが、その隙に腰の短剣を抜くと、アニマに向かって切りかかる。
流れるような攻撃は綺麗にアニマの脇腹へヒットするものの、鱗にはじかれてダメージは与えられなかったようだ。再び魔力弾でひるませ距離をとり、一旦浪と雪菜の元へと戻る。
Dランクの為、空良の戦いぶりを初めて目にした浪は、何をしたのかまるで分からず驚いていた。
「何やったんだ、今の!? 何もしてないのにレーザーが消えてって……」
「浪は初めて見るっけ。ああいうタイプの魔術使う奴は相性いいんだよ、空良ちゃんのファクター。エネルギーの濃度変換、だっけ。相手の魔術を極限まで薄めて無力化したり、さっきの攻撃みたいに空気を圧縮して爆弾にしたりね。」
なぜか少し得意げに説明する雪菜だが、空良の方はあまり余裕がないように見える。
「だけど、私は本来支援型なんですよー……。 雪菜先輩も防御寄りだし、攻撃役がいませんよー……?」
「いやぁ、居るんだなー、これが」
片目を閉じて腰に手を当て、言い放つ雪菜。さっきから自分のことでないのにやけに得意げだ。
雪菜がちらっと浪の方を見ると、彼の頭の中に再び声が響く。
『さあ行くよ!! 準備はいいかな?』
「いつでも行ける!!」
浪が剣に手をかけると、彼の全身が魔力を帯びる。そして抜いた剣を天にかざした途端、空から一筋の光が。轟音とともに雷をまとい、浪の髪が青白く変化していく。戦闘準備完了だ。
先程まで魔力をまるで感じなかった少年が、突然強力な魔力をまとったことで、警戒し身を引くアニマ。空良もいきなりの展開に困惑しているが、
「は? なんですかー、この超展開……? ってそんなの後ですね、とりあえず攻撃は任せますよー?」
そこはAランク隊員、すぐに落ち着きを取り戻した。浪は剣を構え、二人に話しかける。
「二人がかりで援護してくれ!! 物理攻撃は雪菜、魔力攻撃は昂月が無効化して、俺は奴を二人に近づけさせない様に畳み掛ける!!」
「気をつけてくださいよー? 何か奥の手隠してるかもしれないんで。 何があっても即座に対応できるようじゃないと、ランク上がりませんよー?」
「お前言葉は敬語なのに、いちいち失礼だよな……。 後で覚えてろよ!!」
呆れ顔でつぶやいた後浪がアニマの方へと駆け出すと、アニマは後方へと距離をとりながら魔力弾を飛ばす。しかしそれを見た空良がすかさず手を前方につき出し構え、魔力弾はファクターにより限界まで拡散され無力化された。
魔力攻撃は無意味と悟ったのか、アニマは距離を取るのを諦め浪の方へ向かっていった。鋭い爪で襲いかかるアニマを、浪は剣で迎撃する。
アニマの素早い連撃を浪は冷静に手首のスナップによる最小限の動きで流し続け、しばらく打ち合いが続いたその時、突然アニマの腕が止まった。よく見ると、アニマの右腕と公園に生える一本の丈夫そうな大木の間に、氷のロープが張られているのが確認できる。
「浪ならしばらく盾なしでもいけると思ってさ。 ほら、今だよ!!」
「よっしゃ雪菜、ナァイスっ!!」
浪は剣を持っているのと逆側、つまり左手に電撃を溜めると、油断したアニマに向けて叩き込む。しかし、前回のアニマよりも頑丈なのか翼の悪魔にはまだ余裕が有るようだ。敵は電撃によって氷のロープが溶けてから浪が追撃を仕掛けるまでの一瞬の隙に、上空へと飛び上がる。そしてすかさず、後方支援をしていた二人へ向かって急降下していった。
「しまった!! やったと思って油断した……、っ!!」
焦ってアニマを追う浪だが、空良は余裕の表情。
「大丈夫ですよー。 新堂先輩守るのも自分たち守るのも一緒ですから。 雪菜先輩お願いしまーす」
「まかせて……」
雪菜がシールドを生成し、向かってきたアニマを受け止める。浪もそれを見て、少し安心したようだ。走りながらもほっとした表情を浮かべる。だが、攻撃を受け止める雪菜の様子がおかしい。
「はぁ、はぁ……」
「雪菜先輩……? どうしたんですー……?」
「ごめん……。 貧血気味で、激しい運動したら……、めまいが……」
フラフラし始める雪菜。先日の負傷による傷は治癒術で治っていても、失った血まですぐ戻るわけではない。集中力不足はビット同士の結合力の低下へ直結する。アニマが拳を握り、力を込めシールドを殴りつけると、シールドは粉々に砕けてしまった。さらに拳はそのまま雪菜の腹部へ命中し、彼女は2m強、後方へ吹き飛ばされてしまう。
「かはっ……、ッ!?」
「ゆきち先輩!!」
「い、一万円の人になった覚えはないです……」
満身創痍になりながらも、空良のボケにはしっかり突っ込む雪菜。空良は腰からもう一本の短剣を抜くと、それをクロスさせて、雪菜に追撃しようとしたアニマの爪を受け止め、さらに空気爆弾でアニマをひるませる。そこにようやく、浪が追いつき、アニマの背後から電撃を放った。
しかしアニマは上空へ回避し、電撃は正面にいた空良の方へ。
「ちょ、危な!! ……、勘弁してくださいよー……」
「わ、悪い……」
空良は自身のファクターで咄嗟に電撃を無効化する。謝る浪は、とてもバツの悪そうな表情だ。
とりあえずは凌いだものの、直接攻撃を無効化できる雪菜が戦闘不能となり、状況は悪化している。アニマが彼女を狙ってくるのならば、さらに厳しい戦いとなるだろう。
「これは……、とってもまずいですねー……。 新堂先輩、あいつの直接攻撃一人で凌げますー?」
「つっても、やるしか無いだろ!!」
飛びかかってきたアニマを迎え討つ浪。頭の中でエルが語りかける。
『わかってると思うけど、奴の攻撃を凌ぎながらどこかで電撃叩き込まないと勝てないよ!!』
「わかってるよそんな事は……!! 体力の消耗が激しい、仕掛けるなら早めだ!! 昂月、空気爆弾で援護頼む!!」
浪が叫ぶと、空良は魔力を溜め、先程よりも一回り大きい空気爆弾を生成する。しかし、アニマはその一瞬を狙っていた。空気の爆弾を放つ空良の周囲に、闇の魔力弾が出現する。
ファクターを攻撃に使用している空良に、それを防ぐすべは無い。アニマと空良は、同時にお互いの攻撃を受けた。
「し、まったー……」
「昂月!! クッソ……!!」
ダメージは言うまでもなく空良のほうが大きい。命に関わるような重傷ではないにしろ、地に伏せて咳き込み、しばらく動けそうにないようだ。
浪が構わず電撃をアニマへ叩き込んでいれば良かったのだが、さすがに彼もそこまで肝が据わってはいなかったようだ。空良のほうへ目をやったすきに大ぶりなパンチで弾かれ、距離を取らされてしまった。
一対一、最悪の状況だ。アニマが爪に闇の魔力を纏う。
「っ……!! そう来られちゃ、剣で受けられるかどうか……」
構えながら一歩引く浪に、アニマが飛びかかる。
そこへ突然、浪を後ろから走って追い抜いていきアニマへと迫る影が。
先ほどの白い少女であった。
「バカ野郎!! お前何考えて……」
驚きの表情を見せる浪。それは当然少女の突然の乱入に対してなのだが、直後彼はさらに驚愕することとなる。
突っ込んでくる少女に爪を振り下ろすアニマ。少女は左へステップし回避、そのままアニマの右脇へ入ると、アニマの首筋めがけて右足で飛び蹴りを食らわせる。
普通ならば、なんの意味もなく、ノーダメージのアニマに足を掴まれでもして、その後はされるがままだろう。
しかし、140cmあるかないか、叩いたら折れそうなか細い少女の蹴りを受けたアニマは、2回ほどバウンドしながら軽く4、5mは飛んでいった。
「ど……、どうなってんだよ? 未来予知に、肉体強化……!? ファクターが二つなんてそれこそ聞いたことねえぞ……」
驚きっぱなしの浪のところへ、距離を取るため下がってきた少女が合流する。唾を飲み少女を見つめる浪に、少女が話しかける。
「ファクター。 使うのが苦手で当たらないなら、さっきのアニマみたいに、剣に魔力を込めればいいよ」
「な、なんで知ってんだよ……。 今日はまだそんな外してないぞ……」
「ん。 よく、わかんない。なんとなく、そう思っただけ。 来るよ」
「ちょ……、来るって、お前はどこ行くんだっつの!! ったく!!」
澄んだ声でとぎれとぎれに話す少女は、アニマが魔力弾を撃とうとしているにも関わらず、アニマに背を向けのんきに歩いている。浪は取りあえず、前方に電撃を放って魔力弾を相殺した。
空良のもとへ向かっていたらしい少女は、倒れている彼女の脇で立ち止まると、空良の持っていた短剣を一本拾い上げる。
「剣を借りる。……、隙を作るから、一撃で決めて。私も、すぐ動けなくなる、から」
「ちょ……、剣はいいですけどー……。 剣に魔力を込めるなんて、それこそファクター使いこなせないと……」
苦しそうな表情で話す空良の声には答えず、剣を持ってアニマへ向かう少女。アニマの魔力弾の隙間を機敏なステップでくぐり抜け、アニマに蹴りかかる。
腕をクロスさせガードしたアニマだが、肉体強化を持っているらしい少女の一撃は、衝撃で腕が上へ持っていかれガードが緩んでしまうほどだ。そのまま少女とアニマは打ち合いを繰り広げるが、少女はアニマがわずかに隙を見せた程度では何故か借りた剣を使おうとしない。
一方浪は少女のアドバイスに、剣を直視したまま困惑している。
「魔力を剣に……、つったって……」
『今までできなかったから、諦める? 冗談じゃないよね。 ようやく始まったんだから。 雪菜や仲間たちと対等になりたいんでしょ!! 迷う前にやる!!』
エルの言葉にはっとした浪は、にいっと微笑む。
「そうだな……。 やっと強くなれるチャンスなんだ。 お前の力、俺のものにしてやる……!!」
剣を縦に構え、左手をかざして魔力を込める浪。剣が光を帯びていく。
「おっ、何だ……。 いい感じじゃねーか。 これで……」
案外簡単に魔力を込めることができ、少し驚く浪。早速アニマの方へ向かおうとするが、
「よし行くぜ……、ってあれ……」
走り出そうとした途端、剣に込めた魔力が消えてしまった。
『どうも、剣から意識を離すと、魔力が散っちゃうみたいだね……。 初めてなのに、そんな大量の魔力を込めるのは難しいよ……』
「少し弱めればいいのか? でも前は何も考えずにやってたから、いざ強弱付けるってのもなかなか難しいぜ……」
『前はあれ以上弱くしようがなかったしねぇ』
「うるせーよ……。 ってこんな話してる場合じゃねぇ」
エルのアドバイス通り、力を若干弱めながら魔力を込めようとする浪だが、何度やっても剣から意識を離した途端に魔力が散ってしまう。徐々に焦りから苛立ちが出始める浪。
一方、白い少女も息切れし始めてきたようだ。
「もう、限界、かも……。 早く……」
少女の方に視線を移し動きが悪くなっているのを見た浪は、さらに焦り、もはや集中力さえもなくなってきていた。
「くそっ、くそっ……!! なんだよ俺……。 肝心な時に何もできずに……。 頼ってもらっても、それに応えることも出来ねぇ……!!」
汗をたらしながら剣を睨みつけている浪。
少女は息も絶え絶えで、ふらつき始めている。もう待っていられない。大人しそうな印象の少女が、浪に向かって叫ぶ。
「走って!! 何もしないまま、終わりにしないで!! 君には出来る。 私は知っているの!! 戦って、新堂浪っ!!」
突然名前を呼ばれ驚く浪。未来が見えるというのなら、知っていても不思議はないのか。ならば根拠のないその発言も、信じる価値があるのかもしれない。彼の心に少しだけ、余裕ができる。
「雪菜の、昂月の、あの娘の命が今、俺にかかってる……。 失敗はできねえ……」
『その重荷、私も一緒に背負ってあげる。 それが君と一緒にいる私の役目だから。 さあ走って!!』
ふう、と一度息を吐くと、浪はアニマへ向かって突進する。
それを見た少女は両手で剣を持つとアニマの拳を上に払い、そのまま全身全霊の一撃を叩き込んだ。鋭い突きはアニマのみぞおちあたりに入り、バキバキっと鈍い音がする。しかしそれはアニマではなく、少女の受けたダメージ。肉体の限界を超えた腕力のせいで、腕が壊れてしまったのだ。
しかし、渾身の一撃はアニマに大きな隙を生み出す。
『私たちは二人で一つ……。 私にだってできることがあるはず。 できる限り魔力の性質を彼の本来持つ魔力に近づけるっ……!! 少しでも扱いやすくなるように……!!』
「頼む……、っ!! うまくいってくれ!!」
走りながら浪が右手の剣に意識を向ける。
少女の攻撃で悶えていたアニマは、苦しみながらも浪に襲いかかる。浪は両手でしっかりと剣を握ると、苦し紛れに繰り出されたアニマのひっかくような攻撃を払い、みぞおちの傷口めがけて突き出す。
「うおおぉぉぉぉぉっ!!」
『いっ……、けぇぇぇ!!』
剣が突き立てられた傷口に強烈な電撃が炸裂し光が走る。電撃はそのままアニマの背後へと突き抜けて行った。
浪は剣から手を離し、ぜえぜえと呼吸をしながら後ろへ三歩下がる。剣の突き刺さったままのアニマはがくりと膝をつくと、そのまま黒い霧となって消滅してしまった。
カラン、と剣が地面へと落ちる。決着だ。
浪が呆然としたような表情で搾り出すようにつぶやいた。
「勝った……、のか? はは……。 やれば出来るじゃねえの、俺」
『おめでとう。 大きな一歩だよ。 剣の攻撃力が上がれば君の持ち味が活かせる。 駆け上がる準備が出来たね』
エルの言葉に、嬉しそうな表情でうなづくと、浪は雪菜と空良のことを思い出す。さっきまでは余裕がなさすぎてすっかり忘れていたが、二人共なかなかのダメージを受けているはずだ。
「そういえばあいつら、無事なのか? おい、二人共!!」
浪が声をかけて駆け寄ろうとすると、突っ伏して動かなかった雪菜がむくりと起き上がる。
「あーん!! 痛ぁーいぃ!! 吐きそう!! 怖かったー!!」
「案外大丈夫そうだな……。 骨折れたりしてないのか?」
「うう……。 シールドでだいぶ威力落ちてたし、咄嗟に足浮かせて威力殺したから大丈夫……。 動く気は起きなかったけど。 勝てたんだね。 剣使わなくても電撃当てられたんじゃないの?」
「威力出すにはタメがいるからな。 一発目はお前がロープで援護してくれたから当たっただけだ。 剣とかの触媒を使えば、魔力を留めておきやすいんだよ。 そうすりゃすぐ撃てる」
「そういうもんなの? あたしエネルギー系のファクターじゃないからよくわかんないや。 そういえばあの子は大丈夫なの?」
「そうだあいつ、腕が……!!」
少女がアニマに放った一撃により負傷していたことを思い出し、少女の方に目をやる二人。少女はペタンと地面に座り込み、ボケーっと空を眺めていた。一見なんともないように見えるが、グレーのダボダボなスウェットは、袖が赤く染まっていた。
「た、大変!! 早くSEMM連れてって治療しないと!!」
「大丈夫。 血ならもう止まってる。」
「それだけの出血がそんなすぐ止まるわけ無いでしょ!! ほら、止血するから手出して!!」
激痛が走っているはずなのだが、少女はそんな様子を見せない。雪菜が慌てて駆け寄り袖を捲ると、裂傷があったようだが、確かに血は止まっている。
浪が少女の手を取り、傷を見ながら話す。
「コイツ、肉体強化っぽい力も使っただろ? ファクターで高速治癒したのかもしれないな。 どっちにしろSEMMには連れてくべきか……」
「そうだね……。 とりあえず山を降りよっか」
浪が少女に肩を貸し、立たせる。まだ若干貧血と痛みでふらつきながらうーんと唸り、頭を押さえている雪菜。そんな三人を見つめる視線が一つ。
「うーん……。 なんだか私、すっかり忘れ去られているみたいですねー……」
あぐらをかいて両手を足の前について座りながら、空良が愚痴る。
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激戦の跡の残る広場を後にする四人。空良が浪にぐちぐちと文句を言っている。
「ひどいですよー、新堂先輩!! 私だけ地べたに転がしっぱなしにするなんてー」
「悪かったって……。 いろいろあってテンパってたんだよ……。 つーか雪菜が騒ぐから忘れたんだよ」
咄嗟に雪菜のせいにする浪。
「ゆきち先輩のせいですかー? ひどい!!」
「それ、さっき突っ込んだからもういいよ……」
「そうでしたっけー? あ、ゆきちぃってアダ名可愛くないですかー?」
「あ、それならいいかも!!」
女子組はすっかり元気になったようだ。浪がぼそっとつぶやく。
「可愛くても発想の由来は福沢さんだろ……。 それでいいのか……」
ワイワイと賑やかな二人と、そのあとに続く浪。そして浪の服の裾をちょこんとつまんだまま歩いている少女。四人が広場から完全に見えなくなるほど離れた後、広場の木陰からひとりの女性が姿を現す。
「危ない危ない。 こんなところで死んでしまったら、困るものねぇ……? 『彼』が来るまで、生きていてもらわないと……。 ふふっ……。」
髪飾りをした黒髪の女性は、四人のいた方を見つめたまま、暗い笑顔を浮かべていた。
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