第4話:試し撃ちとドヤ顔と新顔
『だから違うって! もっと強くイメージするんだよ!!』
「そんな事言われても……。ショットガンなんて、詳しく見たことないし!」
月光が差し掛かる窓に、黒髪の少女の影。話している内容の血腥さを考慮しなければ、それはメルヘンチックな風景に見えるだろう。
少女の肩の上で飛ぶコウモリが熱く指導をするたびに、彼女の表情は虚無に近くなっていく。鉄火場でもない日常の一コマに、散弾銃は不釣り合いなのだ。
『俺達の能力は、宿主のイマジネーションが強さに直結するんだよ! だからさ、効果音とかイメージしたら? ほら、あるじゃん。“メギャン”とか!』
「何言ってんの?」
『お前、漫画とか読まないの? 有名なやつだよ、有名な!』
「コウモリの表情は読み取れないんだけど、今めっちゃドヤ顔してるよね? 腹立つ……」
「えーっと、こうか!」
『おお!』
突如として少女の手元に出現したのは、例の古びたショットガンだ。ハルはそれをまじまじと見つめ、戸惑ったような笑みを浮かべる。
「これさ、銃刀法違反とかに引っかからないよね?」
* * *
同時刻、無人の廃ビル。立ち入り禁止の看板を越えた先、ボロボロの非常階段を登った屋上で、少年は風を浴びていた。ここを根城にしていたホームレスから勝ち取った、彼の寝床である。
『ラン様、そろそろ狩りのお時間です!』
「うるさいな……」
アスファルトに寝転がる緑髪の少年は、気怠そうに立ち上がった。カーキのロングコートを防寒具代わりに、それより明るいライムグリーンの髪は無造作なままで。
その周りをディークが忙しなく動き回る。小さな
『身嗜み! ラン様は偉大でお強いお方なのですから、それなりの風格をですね!』
「だからうるさいって……」
ディークの姿はバクを模している。燕尾服のような模様で、主君に使える召使いかのように甲斐甲斐しく少年の世話をしていた。
屋上を覆っていた影が晴れ、青白い月が顔を出した。少年は屋上から街を見下ろし、静かに笑う。
「さて。狩りをしようか、ソルグ。退屈を忘れさせてくれる相手がいるんだよね?」
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