《誰も気付かない》

 僕は怖いものが苦手だ。それから血と夕方の学校もどうにも苦手だ。

 学校は窓が多いから夕日が差し込むと学校中が血だらけになった様に感じて、その感覚が苦手だったから普段は遅くまで学校に残らないようにしてた。でもこの話をするとみんな馬鹿にしてくる。

 だから本当ならこんな時間、こんなところに一人ではいたくない。でももうすぐ文化祭で、部活に入っていない僕は当然ながら手伝いをすることになり、夕日の差し込む教室で一人準備をしていた。


 そんなときだ、この教室は三階だというのに窓ガラスを誰かが叩いているような“コンコン、コンコン”という音が教室に響く。窓を見ると血だらけの手が窓を叩いている。悲鳴も出ず、僕は教室から逃げ出そうと扉に飛びついた。だけど、なにかつっかえているように扉があかない!


 何とかこじ開けようとしたけれど無理だったので、もう一方の扉から脱出しようとした。

 でもそこには段ボールが積まれていて簡単には出れそうじゃない。けどもうパニックになっていた僕は段ボールを倒して扉を開けることにした。倒した段ボールは意外と重たく“ゴン、ゴトン”と音をたてながら床に中身をばら撒いく。人の生首だった。倒れる段ボールから転がり出る血だらけの首、首、首。


僕は意識を失った……


 学生達の騒がしい声に目を覚ますと保健室のベッドの上にいるみたいだった。不安そうに僕を取り囲んでいたクラスメイト達は口々に「ごめん、やり過ぎた」と謝ってくる。僕が極度の恐がりなのを知っているから隣のお化け屋敷をやるクラスから道具を借りて僕を脅かしたそうだ。


 けど僕はまだ怒っていた。謝りながらまだ窓の外にジェイソンの様な血塗れの男が立っていたからだ。

 本当にこいつらは謝る気があるのか?

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