第21話 罪の在り処
「・・・私は咎人なのだろうか」大和、格納庫。蒼天の操縦席。沙織は、同胞と戦った際の嫌な感触が、忘れられないでいた。・・・人として、正しい感情だと思う。・・・同胞を手にかけるだなんて。財務省キャリアから、群に入隊して。すぐ、群は「軍」になって。・・・正しいと思って来た。汚いと思って来た。フェリシア人を、駆除する事。でも。今の私は・・・泣きそう。人を手にかける事が、こんなにも恐ろしいなんて。博秋君は、フェリシアの騎士達の命を奪う事に、躊躇いがあった。・・・今なら解る。・・・私は、殺人鬼なんだ。異星人だからと、平気で手にかけてきた。・・・あの、自衛隊との決戦の時。最後に斬り捨てた、「ちょうかい」の艦橋。皆、死の恐怖に怯えていた。それを、私は薙ぎ払った。・・・彼等の、恐怖に怯えた顔。それが、脳裏に焼きついて離れない。「・・・私は、・・・咎人なん・・だ・・・。」警報が聞こえる。「敵艦隊、接近中。警戒せよ」・・・敵?・・だれが?・・・・教えてよ、誰か。誰が敵なの?私・・・何が正しいのか。もう、解らない・・・・。
フェリシアの皇女の下へ行ってしまった、私の好きな人。博秋君。・・・最初は憎かった。フェリシアの皇女、シルフィを殺せば。彼は私の下に、帰ってくる。・・・そう、元帥は言った。・・・本当にそうかな。彼、博秋君。私があの女、シルフィを殺したら。・・・きっと、私を赦さない。・・・好きなのに。愛していた。いいや、今でも愛しているのに。・・・どうして、こんな事になっちゃったんだろう・・・・可笑しいね。・・・父さん、母さん。私は罪人です。・・・鬼畜です。もう、彼には会えない。会えても、きっと彼は、私を赦さない。けど。だけど。・・・会いたい。愛していると、想いを伝えたい。だけど、今の私は・・・元帥の手駒。狗。だから、私には、・・もう。殺すしか、殺し続けるしか、生きる道は無いのだ。・・・悲しい。会いたい。博秋君・・・会いたいよ。でも、君は・・・私を赦せない筈。・・・死ぬまで、殺し続ける。それが、駒の私の生きる道。
「東郷だ。国連軍残存艦隊、接近。総員、戦闘配置。蒼天、出撃せよ」・・・もう、名前すら呼んで貰えない。私は、この子を飛ばす為の、部品。だから・・・。
・・・今の私には、最早元帥閣下の大義に殉じるしか、道は無い。私の忠誠の「証」、中佐の位。ならば―
「白夜隊、出撃!我に続け!!!」沙織の蒼天が飛翔する。白夜隊が、その後に続く。目標は、敵国連軍残存艦隊。旗艦、ニミッツ。母艦さえ叩けば、敵は瓦解する。 ・・・既に、同胞を手にかけた、この手。それが、なお紅く染まろうとも。「大義は我が軍にある!我々は元帥閣下の往く道を、御開きする!!」・・・博秋君。もう一度、会いたいな。沙織と、博秋君。幼馴染の君。君は、この戦争をどうしたいの?フェリシアの皇女と組んで、平和が戻るの?・・・楽しかった、義塾での日々。貧しくなっても、君は友達で居てくれた。だから。もう一度、会いたい。
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