蕗の葉の下の彼女
あんだんご
第1話 朝起きると美少女がいた。と、思ったりしていた時期は悲鳴と共に消えてった。
――朝起きると、美少女が覆い被さるように寝ていた。
健全な男子、しかも10代であれば途轍もなく興奮するシチュエーションであろう。
しかし、特にそういう気は起きない。
美少女の下にいる人物が実は女であるからとか、そういう訳ではない。
下にいるのは紛れもない男、少年である。
だが、それでも全く興奮しないのは。
対象が途轍もなく小さい女の子だからだろう。
いや、ロリコンでないとかそういう話をしているのではない。
――ロリコンではないが…。
覆い被さる美少女、彼女は…途轍もなく小さいのである。
2度言うが、ロリコンとかの話ではない。
物理的、現実的大きさの事を言っている。
少女の体長は15センチほどであった。
丁度、小さい女の子が好きなお人形さんと同じ位の大きさである。
なので、人形が自分の上にあると思うのが現実的であろう。
一人暮らしの男の上にいきなり知らない美少女人形……。
「いや怖いわ‼︎」
「――ふぇ⁈」
少年が身体を勢いよく起こしたことにより、美少女人形が落下するように足の方向に吹き飛ぶ。
ここで少年はギョッとした顔をしていたのであるが、それ以上に美少女人形……いや、少女の顔はギョッとしていた。
だが、少年はそのギョッとする顔をさらにギョッとさせる。
理由は簡単、少女がギョッとした顔をしたからである。
――人形の顔が変わった‼︎
刹那、少女が視界から消える。
いや、違う。別に少年が少女が消えたと感じた訳ではない。
逆である。少女が少年の視界から消えることが出来たと思ったのである。
少女は人外の速度で走ることが出来た。
少女を目で捉えられた人間は今まで1人としていない。
いない筈…なのだが…。
壁に張り付く形で高速移動を終了させ、息を切らしている少女を少年がガン見している。
口をあんぐりと開けて。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
少女が視覚で捉えられた事に驚き、声を上げ、少年は少女が声を上げたことに驚き、声を上げる。
『ああああああああああああ‼︎』
声を止めると、何か怖い気がする為、少年は声を止めない。
ここで問題が発生する。
少年の声が大きいので、驚いて声を上げっぱなしの少女と、少女の声を怖いので耳に入れないように叫ぶ少年がいる。
――エンドレスである。
ここで少年、少女が同時に気がつく。というか思いつく。
――これは‼︎
――これって‼︎
――――声を先に止めた方がヤられる‼︎
こうして、無駄に長く続く少年対少女の断末魔の叫び対戦が始まった。
蕗の葉の下の彼女 あんだんご @skuryu
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