第3話

 あれから3日ほど経った。

 いかに現場で実況生中継などという荒業が出来るジャックといえど、フィールドワークに勤しんだからといってそうそう出くわすこともない。彼とて推理小説の名探偵ばりに事件に出くわすことはなく、そんなものは最早フィクションだと断言できる。それでも修羅場に飛び込んでいく確率は他の記者を除けば抜群に高いのだが。


 そうなると彼も社会人で、ごくごく真面目に仕事をすることになる。事件事故が起きた噂を聞きつけたら取材に出向き、論議所で調査書をとり、一般市民から必要な情報をチョイスしていく。時には新製品や様々な場所に出向いて特集を行うなど新聞の一面を埋めるための努力は欠かさない。


 そんな勤勉な彼が椅子を揺らして、さて外に出ようかねと腰を上げた時の事である。


「せんぱーい、お客さんですよ―?」

「アポがないのでおかえりくださーい」

「対応が雑ですけどその通りですのでもう一度きちんと予約いれてからきてくださーい」


 素っ気なさすぎる塩対応に乗っかってマイアラークもあっさり断った。しかし外にいる誰かは切羽詰まっているのかいやいやいやいや待って下さい! と大慌てのご様子。


「会ってあげてもいいんじゃない? なんか面白そうだし」

「社長……それ、自分の知識欲を満たしたいだけですよね」

「そうだけど、どのみちご客人に外に陣取られたら出られないよ、君」


 ぬぐっ、と唸ったジャックは仕方無く、中に入れてあげてと訪問者を呼ぶことにした。


「と、突然の訪問に対応していただきありがとうございます。カウェル・ベインズと申します」

「どーも。知ってるかもしれないけど、オレはジャック・レイリー。こっちは助手」

「そこまで言うなら名前も言いましょうよ。マイアラーク・セクペトラです」

「よ、よろしくお願いします」


 社長は隅で聞き耳立てているだけなので放置。カウェルは憔悴しているのか恐縮しているのか、パーマがかった頭をペコペコ下げながら挨拶を交わす。カウェル・ベインズ、彼は先日の銀行襲撃事件の野次馬に混じっていた少年だ。当然ジャックはそんな事を知らない。


「それで、オレに用事って何? 君のこと知らないんだけど」

「す、すいません。つい最近この国に来たばかりですので他に頼れる人がいなくて……ただジャックさんのご高名というか、噂を聞いて、記者なら詳しいことも知っているかと思って」

「知人の伝手が無いから、有名人ならある程度の信用が置けそうって心境はわからなくもないですけど」

「オレはオレの出来る仕事をしているだけなんだがねぇ……それで、聞きたいことってのは?」


 そう言うとカウェルはしどろもどろに語りだした。曰く彼はウェイトルセルからやってきた行商らしく独立のためにいくつかの契約を取ろうとしていた。実際その契約は成立寸前までは来ていたらしい。ところが相手が承諾をした後に怪訝な顔になりすぐ反故にするという。これは個人も企業も同様でニコニコ会話していたと思ったら突然不機嫌になるのだから、一体自分の何が悪いのかが全くわからなかった。理由を聞いても誰も教えてくれないし、途方に暮れてしまい一縷の望みにかけてここに来たのだという。


「お話する皆さんが不機嫌になるのですから、きっと悪いところは僕にあったのでしょう。確かにその、文化や風習を学ばずに来てしまったのは申し訳ないと思いますけど、それでも……少しくらい教えてくれたっていいじゃないですか」


 あーと間延びした声で唸る。なんというか、既にこの時点で読めたというか、嫌な予感しかしないとジャックは考える。そら見ろ、少年の情けなさにマイアラークですら眉毛をピクピクさせてるじゃないか。笑顔のままなのが怖さを助長させている。


「問題があるとしたら、機嫌を損ねてしまった前後に何かがあると思うのですけど、あなた一体何を言ったのです?」

「えと、共通してるのは契約が成立して、ありがとうと礼をして、この出会いをもたらしてくれた神のお導きに感謝を述べたくらいです」

「ふざけてるんですかあなたは! そんなの怒るに決まってるじゃないですか!」

「えぇぇ!? 何が悪いんですか!?」


 はい、アウトー。知ってたよ、そんな事だろうねとジャックは天を仰いだ。マイアラークはブチ切れているし、もうこれどうやって収集をつけようかと悩む。彼はバリト市民にとっての逆鱗に触れる行為を行ったようだ。仕方ない、騒ぎを起こされても面倒なので話をするとしようと口をだすことにする。


「とりあえずね君、教えてもらいたいならまずは対価を用意しないと」

「対価、ですか?」

「そ。その理由も後で教えるけど、情報を得たいならソレもなしで、っていうのは虫が良すぎるんじゃない?」

「う……そうですね、ちょっと取ってきます」


 これでクールダウンするかな、とマイアラークを見るが頬が膨れてどこぞのげっ歯類みたいな状態になっていた。彼が席を外している間に何としてでも落ち着いてもらわないと教える側としても支障をきたすだろう。


「先輩はあんなのに教えるんですか? 何の利益にもならないと思いますけど」

「まぁあの少年の事は同情しないが、わからんでもないんだ。それにこの先々で同じこと繰り返されても面倒だし、教えなかったことを後悔するよりはマシさ」

「先輩がそれでいいならいいですが……」

「お前さんから見ればあいつはガキンチョに見えても仕方ないだろうけど、ここは少し大人の余裕ってものを見せてやれよ」

「……仕方ないですね」


 そして少しの間を置いてカウェルは一つのボードゲームを持ってきた。9×9のマス目が描かれたボードと、精巧に作られた石造りのいくつかの駒を入れたケースがある。


「グラップルハットか、懐かしいな」

「ジャックさんはこれをご存知で?」

「ウェイトルセルの知恵を競う競技の一つだ。駒の底面が黒く塗られてるだろ?これが帽子の扱いで、盤上の自身の駒をひとつだけ逆さにするんだ。それがいわゆる帽子をかぶった状態で、それを相手に取られると終了。帽子は隣り合った駒に移すことが出来るから、移した時は対象の駒をそれぞれ反転させる。そうやって移ろいゆく帽子を守りつつ攻めないといけない結構面倒なゲームだよ」


 説明しながら駒を持ち上げて観察させてもらう。駒の出来は良く形が整っているし、ボードもそこそこに値の張る木材を使用しているようだ。


「ランクとしては、最大級の二つ下か。よくこんなもの持ってるな」

「父が職人でして、行商の品としては他にも色々あるのですけど一番値がつくものを持ってきました」

「女性に持ってくるものとしてはなってないと思いますけどー」

「うっ、それを言われると……ああとええと、その、ジャックさんはよく知ってますね。まさか素材でランクが決まることまで知ってるとは思いませんで……はは」

「まぁな」


 あまりゲーム類が無いこの国では確かに売れるかもしれないけど、新聞社に置かれてもどうするんだこれと悩む。ぶっちゃけやる人いないだろ、というかやってる暇なんて無い。


「なんだったら私がもらってもいいが?」


 と、社長が言う。確かに彼であればブルジョア趣味もあるしなんとなく駒を動かしている姿は似合うだろう。


「それじゃぁ私に何の得もないじゃないですかー」

「取材の一環としてしまえば職務範囲だから何にも無くてもいいでしょ……と言いたいところだけど、頑張ったら昇給つけ――」

「はーいじゃぁ全力で教えちゃいますよ―!」

「手のひらくるっくるじゃねえか」

「最後まで言わせてくれないかね君?」


 まぁいいけど、とつぶやくと社長は再び他社の新聞を読み始めた。というかこれオレ宛の仕事じゃなかったの? とジャックは唸るが、いいや面倒だしやらせよ、と放り投げた。


「あ、ありがとうございます」

「うむ、このマイアラークに任せたまえ。ではまず重要なことをひとつ、それは」

「は、はい」



「神なんていません」



 まるで雷を落とされたような顔で固まるカウェル。信心深い彼にはマイアラークの発言は衝撃的で許容できなかったらしい。そら、徐々に顔が赤くなって何を言ってるんですか! と反論していた。ジャックは違う、そうじゃないと首を振る。互いの認識には大いに差があるようだが、わざわざマイアラークも煽るような事をしなくていいだろうにと補足を入れることにした。


「厳密には、この国にはいない、だ。お前もいちいち煽るな」

「むぅ。じゃぁ先輩も補足お願いしますね、私では知らないこともありますし」

「へいへい……」


 では、と改めて説明を再開する。


「まずあなたのミスを訂正するにはこの国の成り立ちから説明する必要があります」

「そこまで重大なんですか……」

「その通りといえばその通りで。まずは宗教から入りましょう。現在この国の国教として二大天を祀るカラミス教を信仰しており、読んで字のごとく始祖カラミスが国と共に興したものとされています。これが周辺国との最大の違いで、天から恩恵を授かる信仰ではなく、人が人のために興したものだということです」

「ウェイトルセルには国神ユークスが実在しているだろう? で、教会で祈れば実際に神の声を聞ける人もいれば、人によっては祝福を授かることができる。しかしこの国の宗教には二大天を祀っているもののその実在が確認できないんだ」

「そ、そうなのですか? では御名もわからないのですか?」

「いいえ、それは伝わっています。光のウェスパと闇のブラカというそうです。そのお二人は対立する色で表現されながら善悪の区別は無く、しかし両者は相反する存在として伝わっています。具体的にはどのような存在であったかは知りませんが、私達の場合はかの二大天を祀ってこそいるもののその信仰は間に立つ始祖カラミスへ向けるものです」

「人を信仰するなんて、はじめて聞きます」


 だろうな、とジャックも頷く。


「むしろ神が実在することを知ったのはここ30年ほど前からで、二大天から名を頂いたウィーパ大橋とブラカ大橋が建設されてからでしょう。知ってると思いますが、ウィーパ大橋はウェイトルセルへ、ブラカ大橋はニューベジントンへと続いています」

「はい、僕もそれを渡ってウェイトルセルから来ました」

「始祖カラミスは象徴として右手に天秤を持っており、左手でそのどちらかを押さえようとする姿が描かれています。カラミス様が重要視しているのは3つ、覚悟と選択、そして責任です。まずは天秤によって集めた情報を測ることでどちらが利益があるかを判断し、そのうえでどちらを選択して押すかを選択する覚悟を持ちます。そして選択した後は選んだことに対して責任を持つことです」

「ざっくり言えば、選んだことを後悔しないことだって教えだ」

「この教えの本質は自助努力であり、けして天運に任してはいないということです。まずは考え判断材料をため、天秤を揺らしますが、当然その中には自分たちには見えない情報も存在します。私達の場合はむしろ、見えない情報がある場合は未熟と判断されるでしょう。運というものを否定こそしませんが、その中には何らかの結果に至るための要因が必ず含まれていると考えています」

「だからこの国の人達は論理的で非常に思慮が深い。神にもギフトにも左右されずに生きているから他国と比べると科学技術が突出している。例えば銃なんかは数世代以上先だな。それに神が実在することは橋をかけて初めて知ったくらいだ」

「そ、そうなのですか。……ところで結局僕の何が悪いんでしょう。聞いた中では判断がつかないのですけど」


 まだわからないのか、とマイアラークが睨んでいる。生粋のバリト市民は恐ろしく察しがいいので彼のような鈍い人間は初めての接触のようだ。


「つまりな、お前さんは自分で商品を売りたい相手を決めて、交渉に出たのだろう?」

「……はい」

「一度お前さんは自分で何をするか”選択"してるわけだ。自分で決めたことなのにそれを神様の導きなんて言ったら、そりゃあ怒られるさ」

「あ」


 バリト市民は選択を他人に委ねない。だからこそ行政の決定権を代理する政府を置かなければ、個人ごとに価値基準が違うために善悪の判断をするための法というラインを引かない。という事もジャックは加えた。


「ついでに言わせてもらえれば、選択を他人任せにしました、とも聞こえますね。そんなのは操り人形と大差ありません。他者の意見というのは参考にする事も当然有りますし、それでも最終的な選択をするのは自身です。しかし異邦人の方々はどうも神に物事を委ねているというか、依存しているようにもとれます。ええ、ほんと二重に腹が立つのですよ」

「まぁアレルギーみたいなもんだ。災難だったな」

「そう、ですか。僕は知らないうちにあなた方の矜持を犯していたのですね……」


 しょんぼりとするカウェルを見て結構素直だなとジャックは漏らした。彼の知るウェイトルセル人というのは一神教故か「神の教えに従え!」と過激な人間も多く、そもそもラストルバリト人とは反りが合わない。あるいは天意をないがしろにしている無神論者と唱える事もある。又は神が実在しないため庇護にない野蛮人と見下すことも……。

 実際その価値観の違いから過去に大きな争いに発展したことも珍しくない。しかしラストルバリトは北端で交差するアビリムス大河とソレンフット大河に挟まれた三角州のようなものになっており、2つの大河は南西端で再び交わるようになっている。攻め入るには実に面倒な地形で北部はコノボ山脈によって船の侵入を許さず、南部においては平地が多いため飛び道具が発展した。銃の開発が進んでいるのがそれが所以となっている。


「しかしそれでは何故橋をかけたのですか? 閉じこもっていたほうが関わらずにいれたでしょう? あと、行政も無いのに橋をかけることを決めたのは誰なのですか?」

「主なのは青果類の生産が著しくなかった事でしょう。この国は平地を活かした牛の放牧が盛んですが、水場が少なく田畑があまり多くありません」

「下手すると人口の20%くらい牛がいるんじゃないかと言われてるな」

「作っても作っても牛のほうが食欲が大きいですからね。かけざるをえなかったのではないでしょうか。そして橋の建設を決定したのは商業連ですが、それとて個人が納得できずに暴動が起こった後、最終的には国民投票によって決められたと聞かされています」

「よくそれで物事が決められますね……」

「国民のモットーは秩序と自制ですから。子供の頃に教育されて徹底的に鍛え込まれます。有志の方が学校を経営されてますからほとんどの子供は一度は入学してますね」

「その点からすれば、ウェイトルセル国民はアホ面下げてるようにしか見えないだろうね。未だに未就学児童が多いし、スラムだっててんこ盛りだ。……教育ってのは即ちそのまま誇りにつながるんだよ、最低限あれば食いっぱぐれないし、頭がいいなら事業を興すなり新たな技術を生んで賞賛される。ウェイトルセルでは神から祝福されることが最も誇りになるんだが、大抵の場合は暴力に繋がり奇跡として敬われるからその先がない」

「そうかもしれません……それにしてもジャックさんは随分とウェイトルセルの事を知っているのですね」


 彼は何の気なしにこう言った。


「だってオレ、ウェイトルセル人だもの」


 カウェルは目を見開いた。


「ええ!? そうだったんですか! 通りで妙に親近感が湧いたはずです! 3日前の事件で貴方を見てなんとなく不思議な感じがしたんですけど!」

「い、意外と野性的なお前」


 カウェルからすれば意外で、あれほどぶっ飛んだ行動をしているのにウェイトルセル人だとは思えるはずもなかった。だというのにジャックはしっかりとラストルバリトの流儀に馴染んでいる。果たしてどのように溶け込んだのか、それも不思議でならない。


「そうだったんだぁすごいなぁ、同じ出身……あ、ちなみにどこの――」

「話を戻していいですか? 続きを聞きたくないのならいいですが」

「は、はいすいません! 聞きます聞かせてください!」

(なんだぁ? やたらつっかかるな、わからなくはないんだが……)


 興奮してるカウェルを抑えるマイアラークが辛辣すぎる。キレッキレのナイフみたいでお目々がすごいことになっている。今度は何に怒っているのだろうか、普段の先輩先輩言って寄ってくるピピラット的小動物性が失われている。


「んん、では最後に注意点を。私たちは個人の基準で善悪を持っていますが、これは全体の平均値から見て悪であることを選択肢に入れないというわけではありません。いわば他者から誹謗中傷を受けようとも、覚悟を持っているならその行いを是とするということです。最も、覚悟をしたからにはその行いによって報復を受ける可能性を孕むのも受け入れています。

 私たちは殺人に対し忌避感を持っていたとしても殺人そのものを悪とはしません。自分の身を守るため、あるいは度を越えた敵対行為に対しては苛烈に反撃します。その反撃が過度であれば、それを悪と判断した誰かに殺されることも仕方ありません。

 故に私たちは、類まれなる自制心を持ち、大抵の事は話し合いで解決します。もしもトラブルがあった場合、お互いが納得できる形になるようにきちんと証拠と論を積んでおくべきです。でないと何が起こるかわかりませんから」


 一気に喋って疲れたのか盛大にため息をついたマイアラークは、眼鏡の位置をなおしてなおも続ける。


「それでも、人間ですから馬鹿なことをする人はいるものです。選択の自由を勘違いして無益に人を殺害し続ける者も出たりします。特に理由のない行為や理性のない行為、あるいは利益のない行為というのはラストルバリト人にとって最も恥ずべき事です」

「ざっくり言うとキレる事が一番恥ずかしいってことだ。そうならないためには自身の怒りすらも理解して原因を明確にしておく必要がある」

「感情的に見えても意外と話せる人は多いです。そう見えても擬態の可能性も結構ありますから。観察力を磨くべきでしょう」

「そうなんですね……僕はもしかしたら危ない綱渡りをしていたのか……」

「割と現在進行系でアウトに近いところにいますね」

「えええぇぇ」

「勘弁してやれよマイ。……とまぁ、ここまで言えばこれからお前さんが何をすればいいか、わかるだろ?」

「……はい、きちんと理由を明確にして謝りに行けってことですね……」

「そういうこと! マイナスになった分を取り返すのはきついとは思うけどな。あぁ、そうそう。それと挨拶はこう言えばいい。お互いの利益のために。ラストルバリト人は自己の利益を重視するが、それが結果的に誰かの利益になり、巡り巡って自分の利益になるのなら協力しあおう、あるいは友好的にあろうって意味がある挨拶だ。

 逆にあなたの、自身の利益のためにと個人を対象にした場合は決別の意味になる。昔からの風習ってやつだ」

「なるほど、わかりました。こんな僕のためにありがとうございます」

「ちなみに自身を卑下するのもアウトです」

「む、難しいですよ!? そう簡単には変われません!」

「ここに来て言い訳とは、そろそろ死にますね」

「うう、そんなぁ……」

「もういい加減にしてやれって」


 マイアラークの肩をポンポン叩いてなだめた。相変わらずむっすりしているが落ち着いたので良しとした。


「こんなとこか。良ければ連絡先を教えてくれ、そっちが良ければ今後取材する事もあるだろうからな。そうだな、ウェイトルセル人の行商記録なんてのはどうだろうか」

「……はい、じゃあここにお願いします」


 ささっとメモを書いてジャックに渡した。彼の書いた文字はウェイトルセルの懐かしく特徴的な筆記体の文字だった。


「それじゃあ、また。ありがとうございました、えと、お互いの利益のために」

「ああ、お互いの利益のために」


 ニッと笑ったジャックに釣られてカウェルも微笑んだ。また再び会うこともあるだろう。そんなささやかな予感をジャック達は共有した。

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