【長歌】むらぎもの 心にうかぶ 事どもを そのまま言に なすべしと ひとは言へども 言霊の 幸ふ国の 民草と 生まれしからは 呑みかぬるかも

【読み】

 むらぎもの こころにうかぶ ことどもをそのままことに なすべしと ひとはいへども ことだまの さきはふくにの たみくさと うまれしからは のみかぬるかも


【語釈】

 むらぎもの(群肝の・村肝の)――「心」にかかる枕詞。

 幸ふ――幸運にあう。豊かに栄える。[参考:デジタル大辞泉]


【大意】

 心に浮かんだことをそのまま言葉にせよとひとは言うが、言霊の幸う国の民と生まれたからにはその主張を呑みかねることである。


【附記】

 大陸にも「綸言りんげん汗の如し」のように不用意な発言を戒める言葉がある。聖人君子でない人間が心に浮かんだことどもをフィルターにかけることなく言葉にしていった顚末を想像するとわたしは恐ろしくなる。


【例歌】

 しき島のやまとの国は言霊の助くる国ぞまさきくありこそ 柿本人麻呂歌集

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