私をなみして仕事をせしあとの独酌をするときの楽しさ

【読み】

 わたくしをなみしてしごとをせしあとのどくしやくをするときのたのしさ


【語釈】

 なみす(無みす・蔑す)――(形容詞「ない」の語幹に接尾語「み」の付いた「なみ」に、動詞「する」の付いたものから)そのものの存在を無視する。ないがしろにする。あなどる。[参考:デジタル大辞泉]


【大意】

 おのれを滅して仕事をしたあとに独酌をするときは楽しいことである。


【附記】

 どれほど仲のいいひとであっても、常に一緒にいれば大なり小なり疲れてしまうにちがいない。ひとりで過ごすことは究極の贅沢ではなかろうか。

「なみす」は辞書的な使い方ではないかもしれない。ここでは語源に立ち返って使用した。


【例歌】

 たのしみは妻子めこむつまじくうちつどひかしらならべて物をくふ時 橘曙覧たちばなあけみ

 たのしみは空暖かにうち晴れし春秋はるあきの日に出でありく時 同

 たのしみは常に見なれぬ鳥の来て軒遠からぬ樹に鳴きしとき 同

 たのしみはまれにうをて児等皆がうましうましといひて食ふ時 同

 たのしみはふみよみめるをりしもあれ声知る人のかどたたく時 同

 たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき 同

 たのしみは三人みたりの児どもすくすくと大きくなれる姿みる時 同

 たのしみはいやなる人の来たりしが長くもをらでかへりける時 同

 たのしみは田づらに行きしわらは等が耒鍬すきくはとりて帰りくる時 同

 たのしみは数あるふみからくしてうつしへつつとぢて見る時 同

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