夢を見ることを詩人の条件と吾は唱へむ寝ても覚めても

【読み】

 ゆめをみることをしじんのでうけんとあれはとなへむねてもさめても


【大意】

 寝ているときも目覚めているときも夢を見ることが詩人の条件であるとわたしは提唱したい。


【附記】

 松尾芭蕉(1644-1694)やその門人のひとりが夢を詠んだ句を少なからず残したと聞いたことを不意に思い出した。わたし自身もにいささかの執着がある(恥ずかしながら詩人を自任する)。英語のdreamなどにも寝ているときに見る夢と起きているときに見る夢の両方の意味があることを不思議に思う。


 なお、上代(奈良時代や飛鳥時代)には「夢」はイメ(寝目)であった由。


【例歌】

 寝ても見ゆ寝でも見えけりおほかたはうつせみの世ぞゆめにはありける 紀友則

 旅の世に又たびねして草枕夢のうちにもゆめを見るかな 慈円


【例句】

 夏草やつはものどもが夢の跡 芭蕉

 旅に病で夢は枯野をかけ廻る 同

 切られたる夢は誠か蚤の跡 其角きかく

 蚊柱に夢の浮橋かかるなり 同

 夢にくる母をかへすか郭公ほととぎす 同

 かけまはる夢は焼野の風の音 鬼貫おにつら

 やぶいりの夢や小豆の煮るうち 蕪村

 手まくらの夢はかざしの桜かな 同

 別るるや夢一筋の天の川 夏目漱石

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