#13:バカと水着とナマコとおっぱいと
合宿当日の朝、気が向かないながらも朝6時には起きていた。駅に集合する時間が8時だった為、少し早めに起きる必要があったのだ。
それに今日はもう少しすると来客がある。
アガナは適当にクローゼットから引っ張り出した服に着替える。そこにはいつものヨレたTシャツや色のあせたボトムスなどはもうなかった。
どれもきちんと洗い干された綻びのない清潔な服が並んでいる。ここ最近、ソアラの水着購入に付き合ったり、備蓄食糧や必要資材の調達などでソアラと出かけることが多く、清潔感のある格好を、とたびたび注意されながら自然とこうなったのである。
古くなって綻びの出た服ではなく、綺麗に着られるものを揃えるようになった。
髪もきちんとドライヤーで乾かすようになったし、寝癖も放っておくのではなく、きちんと直すのが習慣になった。
顔を洗って歯を磨いて部屋に戻る頃には、そこに雪音がなんの前触れもなく居たが、もうアガナは大して驚きもしなかった。
多少、驚くことがあったとすれば、テーブルにサラダやパン、ハムエッグなどの朝食が並んでいたことだ。サラダはいつもの賞味期限切れ間近のコンビニパックとは違い、新鮮な野菜で手作りされたものだ。
もっとも、雪音は朝は紅茶だけの人なので、これはあくまでアガナのために用意されたものらしい。
「起きたのね」
雪音は、いつも通り紅茶だけを一口飲みながら今日は珍しく文庫本に目を落としていた。肩の出た大人っぽい雰囲気の白いワンピースがよく似合っていた。
足元には旅行用のカバンと日除けのための帽子が置かれている。
「やっぱ行くのか……」
「この後に及んで往生際が悪いわよ、アガナくん」
「せめてあの水着だけはな……」
などと一人ごちしながら、アガナは、いただきますと軽く合掌してパンを齧った。
「よく似合ってそうじゃない。わたしはアレ好きよ」
文庫本に目を落としたまま、薄く微笑んで雪音は言った。
「……」
褒められていると受け取るべきなのか、貶されていると受け取るべきなのか、アガナは複雑な気持ちでサラダにフォークを刺し、半ばヤケになってむしゃむしゃと口に放り込んだ。
「もっとゆっくり食べなさい」
雪音の母親のようないつもの物言いが出たところで、唐突にテーブルに置かれていたアガナのスマホが鳴った。
着信相手の名前を確認し、慌てて電話に出る。
「は、はい。アガナです」
普通は日乃宮ですと答えるべきだが、この相手には名前で答えるほうが都合がよかった。
『あっちゃんか? わしや。おはようさん。久しぶりやな! この間の約束通り、そろそろそっち着くんやけど、ゲート開けてくれてるか?』
「おはようございます。もう開けていますから、入ってもらってだいじょうぶです」
『せやったら、このままトラック、敷地内まで入らせてもらうから、あと5分したら頼むわ』
「はい、よろしくお願いします」
『ほなな』
電話の相手は40代前半くらいの男の声で、この男らしい用件だけを早口に伝える内容だった。親しみやすい下町育ちといった口調だが、関西ではなかなか名の売れた建築業者らしく、普段はとにかく忙しそうにしている。
それでも、こうしてたまにアガナを気遣うように電話をくれるところがあった。
アガナの叔父の
「タケルおじさま?」
雪音が文庫本を閉じ、顔をあげてアガナに問いかける。
「うん、あと5分でこっち来るって」
「そう。じゃあ、準備しないとね」
言うなり雪音は本を旅行カバンに直し、立ち上がって出かける準備を始める。
アガナはテーブルの朝食を一気に口にかき込み、シンクに運んで洗い出す。少しして雪音が戻ってきてそれを手伝った。
ざっと綺麗に洗い終わったのを確認すると、昨日、準備していた荷物を引っ張りだし、ソファに出ていたタブレット端末を手にする。
「【ここな】」
『はい、アガナ』
「そろそろ出かけるけど、準備はいい?」
『問題ありません。ですがその前に【クァンタムセオリー】の脇にあるものを取ってもらえますか?』
「?」
言われてアガナは【クァンタムセオリー】が置かれたいつもの西側デスクに向き直ると、そこに見慣れない物体があるのを見つける。
ソフトボールよりはやや大きく黒い光沢のある球体が、何かの台座のような黒いクレードルのようなものに乗った状態で置かれていた。
「なにこれ?」
手にとってみると意外と少し重みがある。
『【コーデックス】です』
「え? いつもの【コーデックス】と形が違うけど」
以前、使った【コーデックス】は中央が少し欠けたリング状の物体だった。
色も黒ではなかったはずだ。
『【コーデックス】といっても、いろいろな使用目的にあった様々なタイプがあります。今回はホログラムを使用しながら複数の人間が同時にアクセスできるものを用意しました。少し荷物になりますが、これも持っていってください』
「ふーん。でも、これって……」
ちょうどそのとき、事務所ビルのインターホンが鳴った。同時に外から大型トラックが何台も進入してくる音が聞こえてくる。
『アガナ。タケルです』
「うん」
【コーデックス】といつものタブレット端末をボストンバッグに入れて、雪音の方に視線を向ける。彼女もアガナに頷き返すと、少し急ぎめに部屋を出て行った。
アガナもそれに続く。
入り口ではすでに、180センチ超えの大柄な男が二人を待っていた。いかにも肉体労働が得意と言わんばかりの鍛え抜かれた身体で、一応スーツ姿ではあるものの、サイズが合っていないのか、胸の大胸筋の盛り上がり方が服の上からでもよく分かった。ネクタイは緩み、髭もきちんと剃られていないらしく、フォーマルな格好にもかかわらず、大雑把な性格がありありと窺えた。
一見して、カタギには見えない。
その男の後ろで、何台もの大型トラックが敷地に入ってくる様子が見えた。
「ゆきちゃんか!? 久しぶりやなー! えらいべっぴんさんなってもーて! なんや、こんな朝早くにあっちゃんの部屋おるやなんて……二人、もうアレなんかー?」
相変わらず野暮な想像を露骨に語りながら豪快に笑う。しかし、そんな男のデリカシーのない物言いにもすっかり慣れているのか、雪音は顔色一つ変えずに微笑んでみせた。
「これから合宿なので、アガナくんを迎えに来ただけなんです。おじさまもお元気そうで。本当にお久しぶりです」
そう言って雪音は上品にお辞儀する。
そこへアガナが出てきた。
「おじさん、久しぶり」
「お、あっちゃん! 元気そうやな! なんや、いつもゆきちゃんに起しに来てもろてんのんか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
「新妻みたいやないか! こないなべっぴんさんに起こしてもろて、うらやましいやっちゃなー!」
そう言って、にやにや笑いながら肘で突いてくる猛に、アガナは居心地悪い思いで苦笑する。アガナの親戚で、ここまで彼に温かく接してくれる人間は他にはいない。
一見、底抜けに明るくお人よしで軽い男に見えるが、彼自身、テロリストとして報道された実弟でありアガナの実父には、ずいぶん苦しい想いをさせられてきているはずだった。
なんども仕事を失ったりもしたと聞いているが、それでも必死に努力し、建築業で身を立てながら、苦しい状況の中でも甥のアガナのことを常に気遣い助けてくれた。
アガナは本当に彼のことを尊敬していた。
「おじさん、忙しいのに本当にすみません」
「なんや気にせんでやー。こんなことでもせんと……こんなことでもせんと……」
そこまで言って、急に猛は黙り込むと、丸太のような太いスーツの袖で目を覆った。
また始まったとばかりにアガナは密かに顔を引きつらせる。見ると、隣の雪音も困ったように苦笑を浮かべてアガナを見ていた。
「こんなことでもせんとなー。わしは……わしは……あっちゃんに申し訳のーて……」
「い、いや、おじさん、気にしないで。本当におじさんには感謝してるから」
そう言った瞬間、突然、猛のごつい両手がアガナの両肩を掴んだ。
「いやあかんで、あっちゃん! いくらなんでも、まだ子供やゆーのに、あっちゃんをこんな僻地の廃墟に独りで住まわせて……わしら大人がもっとなぁ……」
滂沱の涙を流し、まるでヤクザ映画のワンシーンのように猛が大げさに濃い顔をアガナに近づけ熱弁する。
しばらくアガナの胸で、むさいおっさんが「すまんのーすまんのー」と大泣きして崩れている姿が延々続いた。
ガタイのでかい大男が、膝を落として10代の少年に抱きついて泣いている姿は、アガナとしても非常に気持ち悪いといわざるをえないのだが、いつものことなので仕方がない。
アガナは猛を尊敬していたが、会うたびにこれをやらされるのは本当に精神的にきついものがあった。
「まあ、そんなわけで後は任しときー」
数分後、彼はベースシェルター内に設置する発電機や照明、ボイラー、浴室設備などの住環境の改装工事、さらに必要な機材の搬入などを再確認してから、いつものようにケロっとした顔で豪快に言った。もうすでに何度も猛とは連絡を取って相談を繰り返していた為、特にこの後に及んで細かい話し合いは必要なかった。
アガナと雪音は一旦、部屋に戻って荷物を取り出すと、再び入り口で猛と落ち合う。
「それじゃ、おじさん。これ、ベースシェルターの鍵です。あとお願いします」
そう言って、アガナは先に設置していたカードキーを猛に手渡した。
「おう、気ーつけていきや! 合宿楽しみやー!」
ボストンバッグを肩に担ぎ、猛に一礼する。そんなアガナに雪音が後ろから声をかける。
「アガナくん。わたしはちょっとおじさまにお話があるから、先に行っててくれる?」
「え? あ、うん」
「すぐに追いつくからバス停で待ってて」
「分かったよ。じゃあ、先に行ってるから」
「なんやー? ゆきちゃん、おっちゃんにチューしてくれるんかー?」
「うふふふ、おじさまったら……」
そう言って微笑みを浮かべる雪音の横顔は、気のせいか殺意を帯びた深い影に覆われているような気がするアガナだったが、深く追求しないほうがいいと思い、そのまま適当に挨拶して先に行くことにした。
そんなアガナの横をちょうど一台のトラックが擦れ違う。
なんとなく、その一台が気になって彼は振り返った。
雪音と猛が何かを話し込んでいる前でトラックは停車する。二人が、おもむろにトラックの後方へと歩いていくのが見えた。遠目に見る猛の表情には、もうすでに先ほどまでの笑顔は消えていて、真剣な仕事をしているときの顔つきに戻っている。
「……」
アガナは少しそんな二人のことが気にかかったが、自分が何を気にしているのか分からず、釈然としない気持ちのまま、登山口のバス停へと向かうことにした。
トラックの後方ドアを開けて、二人は中を確認した。中には黒いビニールシートで覆われた巨大な貨物用木箱が何箱も積み上げられているのが見えた。
それらにはそれぞれ焼印で刻まれた太い文字が記されている。
『SCAR-H』、『M4A1』、『Mk14』、『Mk11』等など、様々な文字が刻まれた木箱が他にも何十と積み上がっていた。
「解体された組織の置き土産や。各地の拠点になっていたところには、まだいくらでも残っとるさかいにな。弾合わせて、あとトラック数台分来るわ。わしが全部回収して保管しとったんやけど……そろそろもう必要になってくるやろ」
「もうそういう時期ですか?」
「……」
雪音の一言に、猛は顔を背け、木箱を確認していくかのような素振りを見せる。
その背中には先ほどまでの明るくいい加減な男の姿はなかった。激しい後悔と悲しみ、そして怒り、戦いの中で仲間を見送ることしか出来なかった兵士のやるせない寂しさを思わせる哀愁がそこにはあった。
「すまんなー。わしらではどうにもならんかったわ……」
そう言う猛の声は、低くかすれている。その時、雪音は理解した。この男、日乃宮猛は、恐らくここに遺言を残す気持ちできたのだ。
まるで、戦場で撃たれた兵士が、死ぬ直前にまだ生き残っている仲間の兵士に最期の言葉を遺そうとするかのように弱々しく、しかし、はっきりと語る。
悔やみきれない気持ちがなくはない。むしろ、悔やむ気持ちの方が大きい。自らの責任を残された者たちに受け継がせるしかない悔しさだ。
しかし、せめて愛する気持ちだけは確かに遺したい。そんな後に残す誰かへの想いを語るかのように、彼は語る。
「おじさま……」
「先日の成田の件な……。あれ、とうとうホンマもんやったらしいやわ。うちのが確認した」
「やっぱり……」
「マスコミには隠しとるさかい、しばらくは誰も知らんことやろうけど、もうじき始まるで。もうじきな……」
「……」
ある程度、予想していた事態だった。遅かれ早かれ、こうなることは分かっていた。猛たちの責任ではない。それでも雪音は声を落とさずにはいられなかった。
可能であれば避けたい。しかしそれはすでに37回失敗してきた。どのような形であれ、必ずそれは現実に起こってしまうのだ。
この『世界線』でも、いつかは起こることだと分かっていた。
分かっていたことなのだ。知らず知らず肩が震えていたことに気付き、雪音はそう何度も自分に言い聞かせる。
トラックの中の禍々しい気配を放つ木箱に視線を向けた。いずれ必要になるものたちだ。
「個人的には、あのコたちに最初に持たせるならP-99かM9(M92FS)がええと思う。どっちも軽いし、なにより操作が比較的簡単や。弾は9ミリで反動も少ない。本当は最初なら22口径くらいを薦めたいんやけど、あんたらがこれから相手にするんは、9ミリでもかなり不安や。練習はもちろんいるけど、最初には使いやすいやろう。あとの武器はそれなりに訓練がいる」
猛は不本意であると言わんばかりに気落ちした物言いで、雪音に顔を背けて語っていた。なんとなくの呟きのようだが、この場においては重要な助言だった。
「分かりました」
雪音はそれだけを告げると、猛に背を向けて荷物を手にした。
そんな彼女の背に、猛はもう一度だけ呟いた。
「ゆきちゃん……堪忍な……」
「おじさま、ありがとうございます」
その一言だけを言い残し、雪音は去って行った。その後姿を見送ってから、おもむろに猛は事務所ビルの方へと向かう。
アガナが一旦、鍵を閉めて出て行ったが、猛はこのビルの合鍵を管理の都合上持っていた。
何度か来たことがあるため、彼の足取りは迷う様子もなく進んでいく。通路を進み、階段を昇り、やがてアガナの住んでいる3階へと入った。
そこには、猛が来ることが分かっていたかのように、奥のテレビの大画面に姫ノ宮ココナの姿が映っていた。
『お久しぶりですね。【ディープスロート】』
姫ノ宮ココナの顔をしたAIが、いつもの朴念仁のような表情で【ディープスロート】と呼んだ猛を見据える。どこかいつもとは違う、しかしそれでいて本来の彼女の機械らしい冷徹さを思わせる姿がそこにはあった。
「ほんま久しぶりやで。その名前で呼ばれるのもな。ゆーても直に会って会話すんのはこれが始めてか。AIのおまえに直にってのもなんやけど、あの頃、おまえに人格OSは入ってへんかったからな」
『アガナがわたしを目覚めさせました』
猛は苦笑する。
「それで? 今のおまえは、あっちゃんのオカンやっとるんか? それとも恋人か?」
『わたしは、彼が求めるならそのすべてになって彼を守り抜きます』
機械らしい抑揚のない声で、何一つ迷うことなくそう告げる。
それを受け、しばらく猛と【ここな】が沈黙のうちに見つめあった。
やがて猛の口元が不適に吊り上がる。
「ええやろう。もうおまえしかおらん。わしにできることは全部やったる。
【サイファー】よ。プログラマーは用意した。武器も弾もたんまりや。どこぞの国と戦争したかてタイマン張れるくらいな」
『では、アップグレードを……』
僕と先輩が駅に到着したとき時間はまだ30分もあったのに、そこにはソアラがいた。隣には真綾ちゃんも一緒にいる。
白いレースのキャミソールに、プリーツの入ったパステルピンクのキュロットスカートがよく似合ってる。
少しヒールの入った木目調のサンダルを履いて、足元にカバンを置いて駅前の日陰に立っていた。
今日は緩く髪にパーマを当てているのか、いつもの茶色の髪がふんわりとまとまって風に揺れていた。
やっぱり可愛いな、などと思ってしまったけど、顔にはおくびにも出さないように気をつける。
「おはよう。ソアラもう来たの? 真綾ちゃんも」
「おはよう。ソアラちゃん、真綾ちゃん」
「あ、アガナに先輩。おはようございます。うん、思ったより早く着いちゃって」
「さっき、林檎からメール来たんだけど、あと5分後くらいに到着する電車に乗ってるって。そのままもう乗っちゃおうか」
「そうね」
予定外に全員が早く来てしまったので、そのまま林檎の乗ってきた電車に乗り込めそうだった。
先輩とソアラが同意する。
僕らはそれぞれ切符を買ってホームに向かうことにした。田舎の駅らしく、通勤時間をわずかに過ぎたこの時間、ほとんどホームには人はいない。
先輩と真綾ちゃんが先に反対側のホームに向かい、その後を僕とソアラが並んで歩く。最近、真綾ちゃんと雪音先輩は仲がいい。趣味が合うんだとか……。
「……」
「なに?」
なんとなく、僕をじっと見ながら歩いているソアラの視線に気付いた。
「ううん。最近、服、ちゃんとするようになってきたね」
「ソアラが選んでくれたのを適当に合わせて着てるだけだよ」
「そうなんだけどね」
そう言って、ソアラはにっこりと笑った。
僕とソアラが自分たちの乗るホームに到着した頃、先を行っていた先輩と真綾ちゃんが手を振っていた。見ると、遠くに林檎を乗せた電車がこちらに向かっているのが見える。
程なくして電車が到着し、ぷしゅーっというガスの吹き出る音と共に停車した。降りてくる乗客は、まばらでほとんどいない。
ちょうど僕の立っていた少し後ろの車両から、林檎が小さく手を振って出てきた。
僕らは合流して乗り込む。そこから三時間ほど電車に揺られての旅が続いた。滅多に家を出ない僕には、馴染みのない都市部へと向かう電車は、なんとなく落ち着かないものがあった。
けれど、一旦都市部に向かったあと、地方へ向けて走る電車に乗り換えてからは、だんだんと気分が上がってくるのを感じた。
「あ、アガナ。痺れ罠設置するから、大剣ならプリプリの尻尾切ってよ。」
「よし! まかせろー」
「気をつけてよ。あんまり前行き過ぎるとプリプリの毒に……あ!?」
「……」
「ちょっと、一撃でやられてどーすんのよ!?」
「し、しょーがないだろ!? 大剣は前に出てなんぼなんだから!?」
「なるべく避けながら一撃与えなさいよ! このヘタレ!」
「だ、だいじょうぶ。あたし……我、お兄ちゃんがヘタレでも、好き……」
「林檎……そこはヘタレを否定して……」
「アガナくんは、だいたい一撃与える間に10回ダメージ受けるのが基本だから」
「おもいっきりヘタレじゃん……」
「ヘタレでも……このボス……倒せるよ。死にまくるけど」
『アガナ、ヘタレでもわたしがいます』
「ご、ごめんなさい~~~~! ヘタレでごめんなさい~~~~~~~!」
相変わらずゲーマーな僕らは、当然と言わんばかりに携帯ゲームを持ってきていた。車内に向かい合って座れる席を見つけて、ここぞとばかりに『モンスト』で狩りに没頭する。
散々死にまくった僕だけど、なんとかボスを倒し、ソアラが欲しがっていたプリプリの尻尾を手に入れる頃には、電車の窓から見える風景は、高層ビルの建ち並ぶ都市部から住宅街へと変わっていき、やがて緑に溢れようとしていた。一方で、各駅から電車に乗り込んでくる客も増え始める。みんな、見るからに海に遊びに行く格好をしていた。
やがて小高い山々のトンネルを何度も抜けていくうちに、先ほどまでの家や学校などの町並みが消えていき、入道雲が遥か彼方まで昇っていく広々とした青空と、田園風景、そして、ついにそのずっと向こうに海が見えた。
「海……! ねぇ、海が見えるよ……!」
真綾ちゃんが嬉しそうに隣に座っているソアラの肩を揺らした。
「うん!」
ソアラもその風景を見た瞬間、ぱっと顔を明るくさせて窓の向こうに釘付けになる。
雪音先輩や林檎も嬉しそうに海が見える風景を楽しんでいた。なんだかんだで、ここに来るまでは憂鬱だった僕も、その雄大で美しい景色に思わず気持ちが興奮してくるのを感じた。
ふいにソアラと目が合う。ほんのわずかな時、僕とソアラはじっとお互いを見つめ合った。次の瞬間、彼女はこれ以上ないくらいの明るく屈託のない微笑みを僕に向ける。
「海だね」
「うん、海だ」
その笑顔は、まるで奇跡のように夏の青空と海を背に、これ以上ないくらいに美しく光って見えた。
到着した駅は、片田舎の割りにはそこそこ綺麗に整えられていた。
周囲にはまばらに古い家屋が建ち並び、釣具店や猟師組合など、小さな商店が点在してる。海に近いせいか、この付近になると田園地帯はなく、代わりに海産物を干している天日干しの風景をよく見かけた。
さすがに駅周辺では土産物屋などの観光ショップが軒を連ねており、電車が到着すると雪崩れのように海水浴客が降り立っていった。
お昼を少し回る前だったので、僕らは駅前の観光ショップの建ち並ぶ中、手近にあったファミレスで適当に昼食を取った。
その後、先輩が少し電話するからといって席を外している間、各々、ギフトショップを物色したりしながら過ごし、少しして戻ってきた先輩と再び別荘に向けて移動する。
観光客の列は相変わらず通りに溢れていて、延々絶えることなく続いている。この列についていけば、そのまま海水浴場に着きそうだった。
しかし雪音先輩が言うには行き先はちょっと違うらしい。
なぜか僕らは通りを行く観光客の列とは間逆の方向に向かって歩いていた。もちろん、僕らが向かう先に同じように歩いていく観光客がまったくいなかったわけじゃない。海水浴場に向かうにつれ、道は下り坂になっていくのに対し、僕らは上り坂を登っていた。
その先にあるのは高台になっている地域で、旅館やホテルなどの宿泊施設が建ち並んでいる。
「け、けっこう遠いのかな……?」
普段、そんなに遠くまで歩くことに慣れていない僕は、早くも音を上げそうだった。まあ、確かに山道には慣れているんだけど、まったく慣れないところ歩くとやっぱり疲れやすいらしい。
「もう少しよ」
一番先頭を歩いていた先輩が振り返り、汗ひとつかいていない笑顔で言う。
彼女と一緒には真綾ちゃんがいて、そのずいぶん後ろを僕が歩いていた。本当なら林檎もソアラも僕よりずいぶん先を歩いていたが、いいかげん姿を消しそうなくらい足並みが遅い僕を見かねて、ペースを合わせてくれていた。
「ほら、しっかりしなさいよ」
「お、お兄ちゃん、がんばって」
『アガナ、あと少しです』
ソアラが僕の2,3歩前を歩いて、たびたび振り返って声をかけてくれる。林檎が僕の手をぎこちなく引いてくれていた。
これって、この中で一番体力ないのって僕ってこと……?
タブレットの中にいる【ここな】がちょっぴり羨ましかった。しかし、一つ言い訳をさせてくれ。ここに来るまでに僕は自分の荷物のほかに、観光ショップの裏手にある商店で買った、幾つかのジュースやサンドイッチなどの食べ物、でかいスイカなどを抱えて歩いていた。
可哀想だからと、珍しくソアラが少しだけ持ってくれたが、それでも地獄のような坂道だったと言わざるをえない。僕は足が棒になりながら坂を上った。
それから歩くこと30分。南国を思わせるヤシの木に囲まれた旅館通りを抜けた先に、そのログハウスはあった。
穏やかな波の音に癒されるオーシャンビュー。
高台から彼方の海まで見渡せる豪奢なログハウスだ。海に向けて広々としたバルコニーが設けられており、そこからすぐ砂浜に降りられる白木の階段が続いていた。
その先の砂浜に至っては工藤家のプライベートビーチらしい。
「お、おぉ……」
さすがの豪邸っぷりに僕は言葉もなかった。
「やっと着いたわね」
寝室は2階にあり、部屋は僕らの人数だと余るほどあるらしいので、適当に部屋割りすることになった。
荷物を置くのもそこそこに僕らは水着に着替えて砂浜に降りることにする。
ちなみに……先日、林檎から貰ったあの水着だ……。
それ以上は何も語るまい。その後、僕は雪音先輩が言っていた外の倉庫からビーチパラソルとシート、これまたデカいクーラーボックス等を準備して砂浜へと向かう。
女の子たちは先に着替えてもう砂浜に到着しているらしく、さんさんと降り注ぐ太陽の下、遠くで僕に手を振っているのが見えた。
そんな中、僕はひたすら重量級の荷物を持って歩く。砂浜は確かに綺麗だったが、砂に足を取られて荷物が余計に重い……。
「はぁ、はぁ、はぁ、重……」
普段、鍛えていない痩せた身体のあちこちが悲鳴を上げる中、なんとかちょうどいい場所に荷物を下ろし、ビーチパラソルとシートを適当に広げた。
――ええやろ、これで……。しんど……。
正直、じっくり海を眺めるどころじゃない。海って大変なんだな、と思いながら、自分の歩いてきた方を見る。
けっこうな距離をこの荷物で歩いてきたものだ。自分で自分を褒めてあげたい、と一人ごちしていたとき、ふいに後ろから声をかけられる。
「アガナ、お疲れ様」
「……」
振り返るとそこにソアラがいた。
僕は思わず呆気にとられながら彼女を見つめる。
美少女というより美女というべきか、と迷うほどの大人びたセクシーさに言葉も出ない。
ドクドクと血流が急激に早くなるのを感じる。しっとりと滑らかな茶色の髪を頭のてっぺんで結い上げていて、いつもとだいぶ雰囲気が違って見える。
雪のような白い肌に、魅惑的な長く美しい脚、悩ましげにくびれた腰のライン、ほっそりとしたヘソから零れ落ちそうな胸へと続く曲線美、細いうなじがなんともいえない妖艶さを醸しだしていた。
そんな彼女の光るような美しい肌を際立たせる白のビキニ姿は、その抜群のスタイルを浮き彫りにしている。僕の心臓は完全に彼女の美しさに鷲づかみになっていた。
なっていたんですけどね……。
ソアラをじっと見つめていた僕は、やがてその先の遥か向こうの景色が視界に入るやいなや、そのまま目が点になる。
「……」
そんな僕の表情に、満足気に自信たっぷりの笑みを浮かべるソアラは、わざとなのか、その胸の膨らみを強調するかのように腕を組んで誇らしげに語る。
「ふふーん! どう? あたしの水……」
「海やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「え?」
気がついたとき、僕は心の奥底から沸き立つ魂の叫びをあげながら、その初めて見る雄大な景色に吸い込まれるようにして駆け出していた。
(なんだ、あれ!? なんなんだ!? あれが海か!? 海なのか!?
あんなでっかいのが……)
「ち、ちょっと……アガナ……?」
怒涛の勢いでソアラの横を掠めて駆け出す僕に、ソアラは、つい伸ばしかけた手を硬直させて、いったい何が起こったのかと顔を引きつらせた。
この時の自分を後になって冷静に思い浮かべてみたんだが、たぶん、他人がみたらこう見えていたと思う。
『人類史上最小レベル! なのに高性能!』と書かれたトランクス姿の貧弱な少年が、ひたすら「海やぁぁ!」と叫び、波間ではしゃぐ女子たちに向かってバカみたいに一直線に全力疾走していく、そんな様子に見えただろう。
だけど、分かって欲しい。このときの僕は、初めて遭遇した海という、ただただひたすらデカい水溜りを前に、心の奥底からわくわくドキドキが止まらなかったんだ。
そんな僕を黒いフリル付きのちょっとゴスロリっぽい水着を着た林檎が、波間で待っていたかのように手を振っていた。
「お兄ちゃーん!」
「林檎! 海! 海や! 海やぁぁぁぁ! これ! めっちゃ海やぁぁぁ!」
「う、うん! お兄ちゃん! 海! 海!」
ばしゃばしゃと、寄せてくる波でお互いに水を掛け合い、何が可笑しいのか分からないけれど、とにかく可笑しくて爆笑し続ける。
「海やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
半ば興奮のあまりヤケになって叫ぶ僕と、ちょっと恥ずかしいながらも僕に合わせようとしてくれる林檎の姿が痛い。けれど、そんなことはどうでもよかった。
そのまま、寄せてくる波に向かって飛び込んでいく僕と、そんな僕に嬉しそうに一緒に波に向かっていく林檎がいる。
残されたソアラは、僕のテンションについていけずに、今度こそ彼女の方が目が点になって呆気に取られている様子だった。
そんな中、【ここな】がビーチパラソルに吊るされたタブレット端末の中で、相変わらずの無表情さでありながら、たまらなそうに胸を両手で押さえながら呟く。
『ああ、アガナ、なんて可愛いのでしょう……』
「ね、ねぇ、【ここな】……」
ソアラがじっと波の彼方で林檎や真綾ちゃん、先輩とはしゃいでる僕を見ながら、問いかけた。
『はい』
「アガナって、海に来るの初めてなの?」
『わたしの知る限り初めてです』
「ふ、ふぅーん……じ、じゃぁ、しょうがないのかしらね……」
握り締めた拳を震わせ、ソアラは呟いた。しかし、それに対して【ここな】は何も言わなかった。
やがて、ソアラは手近に落ちていたビーチボールを手にゆっくりと海へと向かっていく。林檎と派手に水をかけあっていた僕に、ソアラはそっと近づいた。
「アガナ……」
「ソアラ、海や! なんかもうこれ海みたいや! たぶん!」
「わかっとるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ぶぐぁ!?」
なんかもう自分でも何いってるのか分からない状態の僕の顔に、思いっきりフルスイングで投げられたビーチボールが直撃した。衝撃で思わず後ろ向きになって倒れ、浅瀬に沈む。
「お、お兄ちゃん!」
慌てて林檎が水に足を取られながら僕の方に駆け寄って、上半身を抱きかかえてくれた。む、胸が当たる……。
「アガナくん、初めての海で浮かれるのは分かるけど、ちゃんとソアラちゃんの相手もしてあげなきゃダメよ?」
「せ、先輩! あたしは別に……」
「ほら、アガナくん、ソアラちゃん見て何かいうことないの?」
少し顔を赤らめたソアラは、僕の顔を強打してぷかぷか浮いているビーチボールを手にして、意味なく所在無さげに突く。
冷たい水を頭から被った僕は、ようやく落ち着きを取り戻し、ソアラの顔を覗きみた。雪音先輩の一言に、なんとなく恥ずかしそうにしている彼女は、そっぽを向きながら、時々、僕に視線を向けている。
「ソ、ソアラ……」
「……」
「ナマコいる?」
「なんで今ナマコなのよっ! てゆーか、そんなキモいもん持って近づかないでよ! バカ!」
「い、いや、だってソアラ、怒ってるし。初めてみたけど、ナマコ面白いよ?」
「面白くないわよ! このバカ! バカ! 大バカ!」
「……」
もはや半分泣きそうなというよりは、完全に泣き顔で、力一杯、魂の限り僕を怒鳴り罵るソアラは、再び持っていたビーチボールを僕の顔に投げつけた。再度、海に沈む僕。再び林檎が駆け寄ってくれた。
その後、女子全員一致の裁決(林檎まで……)により、僕はビーチパラソルの隣に埋められることになる……。
頭ひとつを砂から出し、女の子たちが楽しそうに海ではしゃいでいるのを見ながら、僕は呟いた。
「な、何がダメだったの……?」
『すべてです。アガナ。でも、わたしは救いようのないバカのあなたが大好きです』
「……」
しばらく僕と【ここな】の虚しい時間が流れる。遠くで女の子たちが僕のことを忘れたように楽しそうにビーチバレーやったり、水の中を駆け回ったりしているのが、なんか寂しかった。
そんな中、少しすると誰かがパラソルに戻ってくるのが見えた。
ソアラだ。
「……」
ソアラは不機嫌そうに一度だけ僕に視線を投げかけてから、その後、一切視線を合わせようとせず、パラソルの下の荷物からタオルを取り出した。
髪を拭き、クーラーボックスから冷たい水の入ったペットボトルを取り出し、一口だけ含むと、何を思ったか、僕の隣に膝を抱えるようにして座った。
白いビキニの美少女が体育座りしている横に生首がひとつ置かれて、一緒に海を眺めているというシュールな絵ヅラだ。
「あ、あのさ……」
「……」
まるで聞こえていないかのように振舞うソアラに、少し溜息をつく。
「……悪いんだけど、僕のカバンの中、取ってほしいものがあるんだ」
「……なによ? 何か飲み物でも欲しいの?」
ようやく僕の方に向き直ったソアラが、ぶっきらぼうに答えた。
「そうじゃなくて。カバンの中に白い小さな箱があるんだ。それを取って欲しいんだよ」
面倒臭そうにしながらも立ち上がり、彼女は僕のカバンを探った。
さっき入れたばかりで一番上の方にあったので、すぐにそれを見つけ出すことができた。
「なにこれ?」
駅前の土産物屋のロゴの入った小さな白い箱を手に、彼女が少し訝しげにこちらを見る。
「開けてみてよ」
「……」
最初、僕と箱を交互に見ていた彼女は、少ししてからそっと慎重に箱の封を外した。
その瞬間、中に入っているものを見つけて彼女の顔が驚きの色に染まる。
「こ、これって……」
そこにあったのは、シルバーのチェーンに白い小さな渦巻きの貝殻と、キラキラと光る透明な天使の羽のついたネックレスだった。
彼女はそれを手にしばらく押し黙る。
「……」
そんなに高価なものじゃないし、そんなに煌びやかといえるものでもない。
けれど、こういうシンプルなデザインの方が彼女本来の華やかさを引き立てて、よく似合うんじゃないか、そんな気がしたのだ。
本当は帰ってから渡そうと思ってた。旅行中に渡すのは、なんだか間抜けな気がしたから。けれどしばらく彼女は怒っていて渡せそうにないし、ないと思いたいけど、もしかしたら、もう彼女は僕に愛想を尽かして二度と口を利いてくれないかもしれない。
だったら今渡しておこう、そう思ったのだ。
彼女はしばらく僕に顔が見えないようにそっぽを向きながら、手にしたネックレスを両手の平に乗せて、じっと見つめているようだった。
やがて気のせいか、少し震えたような声で呟く。
「どうして……?」
「服を買うのに、いろいろ付き合ってくれただろ。そのうちお礼がしたかったんだよ」
「……」
彼女は押し黙ったまま、ずっとネックレスを見つめている。
それから少しして、そっとネックレスを箱に戻し、丁寧に封をし直すと、ゆっくりと向き直り横顔だけをこちらに見せた。そこにはすでに怒りの表情はなかった。ただ、彼女自身、どう振舞っていいか分からない様子で、少し恥ずかしそうに照れたような顔をしていた。
膝を抱えながら顔を突っ伏し、誰に言うでもなく小さく呟く。
「……なんだ、お礼か……」
「ん?」
「なんでもない。その、あ、ありが……と」
そういって彼女はおもむろに立ち上がり、箱をカバンにそっとしまうと、代わりに麦わら帽子を2つ持ってきて、一つを僕の頭にかぶせた。それから再び僕の隣に座って海を見つめる。
「?」
「すっごいバカのあんたでも、さすがに炎天下でそのままだと干からびるかもしれないでしょ」
――だったら、掘り起こしてくれませんかね……。あとバカは関係ないですよね?
その後、僕たちは特に何を話すこともなく、ただ静かに遠くで林檎や雪音先輩、真綾ちゃんが遊んでいる海を見つめていた。
穏やかな波が寄せては返す音だけが、僕らの間で静かに流れている。なんだかその音は、いつもの僕とソアラの関係のようだとその時は意味もなく、ふと思った。
「……」
「……」
「……そういえばさ。ソアラ」
なにげなく思い出したように僕は呟いた。
「なに?」
「その水着、一緒に買いに行った時のやつでしょ? すごく可愛いよ」
「……バカ」
それからしばらくした後、なぜか情状酌量が認められた僕は、ようやくみんなに砂の中から掘り起こしてもらえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます