第4話 新しい仕事場


「今日から近衛騎士団に配属されたセラ・エルネストです。よろしくお願いします。」

セラが挨拶を行うと、団員達は驚いたように目を見開いた。

「セラはアルドに任せる。アルドの言うことをよく聞くように。では解散!」


――――アルドって誰だ。


セラは訝しがりながら、きょろきょろと周りを見ていると、黒髪の長身の男性が近づいてきた。

「彼がアルドだ。」

ルニエ大佐に教えてもらい、挨拶をしようと思ったセラだが、それはアルドの言葉で遮られることとなる。

「なぜ私がこの女の世話をしなければならないのですか。」

不満といった表情を全面に押し出し、アルドはルニエ大佐に詰め寄る。

「お前は経験も豊富だし、殿下からの信頼も厚い。お前なら任せられると思ってのことだ。上官命令だぞ。」

ルニエ大佐は優しい口調ながら、反論は許さないという断固とした意思を表した。

「しかしっ!」

なおも食い下がろうとするアルドに対して、ルニエ大佐は一瞥し、その場を立ち去った。




――――気まずすぎる。

セラはアルドと2人きりで取り残され、息苦しさを感じで襟元をひっぱった。

アルドは諦めたように深いため息をつき、セラを見た。

「お前が女だろうが関係ない。とりあえず俺の邪魔だけはしないでくれ。」

そう言い放ったアルドは、肩を落として仕事にとりかかった。

なんだよこいつ。セラは心の中で悪態を吐きながらも、アルドに倣って仕事場へとついた。






シズキは書類整理に一区切りつけ、カイと一緒に王城内の訓練所へ顔を出した。

剣がぶつかり合う音が響き渡っている。団員達の息遣いや砂を踏む音が聞こえてくる。

いつもと変わらない景色であったが、その中でも一際目を引く存在がいた。


長い銀髪の少女が、長身の男と打ち合っている。

アルドが剣を構えると、セラが切り込む。懐に入れそうなギリギリの間で、アルドが交わす。お互いが睨み合い、セラが勢いよく攻め込んだとき、アルドがセラの剣をかわし、セラの体を剣の柄で弾き飛ばした。

飛ばされるように細い体は地面に倒れ、セラは起き上がってこない。


「うっわ~、あいつほんと大人げないなぁ。女の子に対して本気出すのかよ…。」

カイは見てられないとばかりに、目を手のひらで覆った。

「心配ない。立ち上がってる。」

「うそでしょ!」

シズキの言葉どおり、セラは立ち上がった。しかし、足取りはおぼつかず、立っているのがやっとの状態だ。

そこにアルドはとどめとばかりに拳を打ち込んだ。

セラの体は再度地面に倒れ、今度は完全に意識を飛ばしているようだった。

セラがルニエ大佐に抱えられているところを見ると、医務室へ行くのだろう。


カイはげっそりとした表情でそれを見ていたが、それとは正反対に、シズキは笑みを浮かべながら、一連のやり取りを見ていた。

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