第3話 再会


室内の机に座っていたシズキは、セラの声を聞くとともに、そっと顔をあげた。


「久しぶりだな。」

「…。」

眩いほど輝いているウェーブのかかった金髪と、端正な顔に笑みを浮かべながら、シズキはそう言い放った。

「元気だったか?俺はあの後苦痛でしばらく床を這いずり回っていたがな。お前のおかげで、警備兵には見つかるわ、式典に呼び戻されるわ、散々な1日だった。」

ちくちくと攻撃してくるシズキに対して、セラは顔を強張らせながら、声を絞り出した。

「そうですか。無事に式典に戻られたようで安心しました。あの寒さの中、あれ以上警備兵の手を煩わせるのは心が痛みますので。」


「あっはっはっはっは。」

セラの言葉を聞いて、シズキがまた文句を言おうとする前に、多きな笑い声が室内に響いた。

男は耐えられないとでもいうように、肩を震わせながら、目を丸くしているセラに近づいてきた。

「いやぁ、シズキにここまではっきり言う女の子がいるとはねぇ。うれしいなぁ。あ、僕はカイ・ジスカールだ。騎士団の副団長だよ。」

甘いマスクににっこりと微笑みを浮かべながら、手をさしだしてきたカイに対して、セラも反射的に手を差し出し握手をかわした。

「セラ・エルネストです。」

「うんうん。写真で見るより可愛いね。こんな子が騎士団に入ってくれるなんて、嬉しいなぁ。」

ぶんぶんと握手した手を振りながら、カイは嬉しそうにセラを見つめている。


「いい加減その手を離せ。」

シズキは呆れたように息を吐いた。

「セラ・エルネスト、今日から騎士団員として、しっかり働くように。他の団員にも伝えているから、速く行って仕事を覚えろ。」

手をひらひらと振りながら、話はこれで終わりとでもいうようなシズキの態度に、セラは焦って言葉を絞り出した。


「あ、あのっ。

 私はどうして近衛騎士団に配属されたのでしょうか。先日のことなら謝りますので、第3中隊に戻していただけないでしょうか。」

シズキは目を瞬かせながら、意地の悪い笑みを浮かべた。

「なんだ?謝罪する気になったか?」

「うっ…第3中隊に戻してくれるのならば…」

「全然謝る気ないだろ!」

「だ、だってそれは仕方ないだろ!私は悪くない!」

「あっはっはっはっは!」

シズキとセラのやり取りを聞いて、カイはまた笑いがとまらなくなった。

「おいカイ。静かにしろ。」

シズキがじろりと威嚇するが、カイの笑いは収まらないらしい。肩が揺れが止まらないのが見える。


ため息をつきながら、シズキはセラを見据えながら言った。

「おまえは今日から近衛騎士団だ。異動は取り消さない。俺のもとで働け。以上だ。」

「なっ、横暴です!」

セラは怒りで真っ赤になりながら、言葉を続けようとしたが、それより先にシズキが言った言葉に反論ができなくなった。

「近衛騎士団に入ると、第3中隊より2倍の給料が支給される。お前に断る理由はない。むしろ借金の返済が早まると思って感謝してほしいぐらいだ。ちがうか?」

「うっ…」

2倍。給料が2倍。

何より金に困っているセラは、何も言うことが出来なくなった。

シズキは話は終わったとばかりに自分の仕事に取りかかりはじめた。セラはぐっと唇をかみしめ、靴音を大きく鳴らしながら、「失礼します!」と言って部屋を出て行った。






「これから楽しくなりそうだねぇ。」

「そうだな。」

シズキとカイがほくそ笑みながら、セラの出て行った後の扉を見つめていた。

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