第102話

「ふぅ〜、やれやれ。この頃、先輩使い魔の勝俣さんの口癖がうつってしまったわねー。でも黒田の魔女の使い魔だと皆んな『やれやれ』って言いたくなるわよ・・・」

(勝俣の『やれやれ』はどうも村上春樹の小説の主人公を真似てるらしい)

今日の私は、普通のお使いに来ているのだけれども・・・その内容がまたすざまじいのだ。

酸っぱい物が食べたいと言う餡子さんの為に九州の青い早生みかんを買いに行き。

みかんを買っている途中でスマホに''たると"ちゃんから台北の豆花とうふぁを今すぐに届けてと連絡が入ったり。

黒蜜おばばは中国の天津で熱々の甘栗を買って来てと私でもてんてこ舞いになる様なお使いを頼まれているのだ。

この後には妹のシナモンから頼まれた紙おむつとバーバ・ヤーガに頼まれたロシアンティーに入れる黒すぐりのジャムを買いにロシアまで行かなきゃならない。

忙しいったらありゃしない。


あの怒涛の結婚ラッシュの後から数ヶ月経つけど今は皆んなお腹がポンポコリンの妊娠ラッシュを迎えている最中。

えっ?シナモンの紙おむつは早く無いか?

そう、皆んな忘れていたのだ。

そう私とシナモン、犬の妊娠期間が一月半くらいで超安産だと言う事を。

イケメン君と結婚した妹のシナモン。

結婚して数カ月後、居間でお茶をしていたら『あっ!』と言う声と共に可愛い女の赤ちゃんを産み落としました・・・。

シナモンの娘、カルダモンの誕生です。


犬って、妊娠期間50日位で産まれるのね〜私も気をつけなきゃ。


優先度合いを考えて紙おむつをシナモンの元へ届けてっと。

例の外国の会員制スーパーで紙おむつを買いついでに買ったフードコートの巨大なピザをバーバ・ヤーガやシナモンと遊びに来ていた黒蜜おばば達の前にドーンと置いて、ヒラヒラと手を振って次の買い物へ向かって近くの暗闇に溶け込む私。

後ろでは「流石!蜜ちゃんピザなんて気が効くわね〜」なんて言う声が聞こえる。


はぁ〜目の回る様な忙しさだわねぇ。

これじゃあ、年末年始の買い物はチョさん達やモンスターズにも手伝ってもらわなきゃいけないわね。



12月30日、チョさん達レッサーパンダ組がアメ横での買い出しから帰ってきたので、モンスターズが黒蜜おばばの実家の庭で餅搗きを始めた。

今日のお昼御飯は搗き立てのお餅。

シナモンや餡子さんの旦那さん達の家族やランプの精さんも餅搗きに参加して楽しそう。


あっ!チョさんが餅搗きの合の手をやり始めたわね。

アライグマみたいにボウルの中の水で手を洗ってる!

ペッタンペッタン、流石年の功、返しが上手ね。

餅搗きで大事なのは少ない水で餅を返す事なのね。

でないとベチャベチャのお餅になるから。

搗きあがった餅を餡子さんがサッと粉を撒いた台に置くと手早く丸めて行く。

それを黒蜜おばばが大根おろしに醤油を入れたのにに絡めたり餡子やきな粉に投入しお皿に盛り付けてる。

それと"たると"ちゃんが善哉を作ってる。

これも慣れていないとお餅の味が落ちてしまう。

二人共、お腹が大きいけと大丈夫かしら?

えっ?これくらい動いた方が丁度良い?

それに保温の魔道具で寒さ知らず?

ハイ、頑張ってください・・・

怪力レッサーパンダが大きなお盆にお餅を乗せて皆の前に運んで配膳を器用にこなす。


あっ!人郎さんが杵を持って餅搗きをやろうとしてる!あの人の力でやると臼が割れちゃう!

全く!モンスターズや怪力レッサーパンダより力持ちって何なの?あの人は?


中東の方達やランプの精さんにはこれらは食べても大丈夫ですよと説明してあるのでニコニコして食べている。

日本の餅搗きや搗き立てのお餅に喜んでくれて良かったわ。

駄犬巌が餅を喉に詰まらせてのたうち回っているけれども皆んな無視してる。

だって顔が何だか嬉しそうで気味が悪いから・・・。

見兼ねた紅さんが駄犬のお腹をつま先で蹴り上げ植え込みの方に蹴り飛ばした。

でも数分すると駄犬はまた何も無かった様にお餅をパクパク食べてるし、しぶといわね駄犬。

カミーラお祖母様達は丸めたお餅に醤油をかけて海苔で巻いて磯辺巻きをパクパク食べてるし、あー!作ったばかりの鏡餅に醤油をかけちゃあダメ!大きな海苔を持って巻こうとしないで下さい!

そんなに大きな磯辺巻きあるわけ無いじゃないですか!!

全く!一番長く日本に住んでて知らない訳無いのにワザとやってるわねアレは・・・

そんな年末の風景を見ながら私は、元旦の事を考え小さく溜息を吐いた。

『ふぅ〜、元旦から数日はまた目の回る忙しさになるわね』


元旦午前10時、老舗デパートの開店時刻。


甲斐犬の姿で買い物籠を咥えた私はデパートのドアが開いた瞬間に黒い矢に成ってエスカレーターを駆け上った。

福袋をゲットする為に!

お一人様3点までの福袋を3個咥えレジに。


一番乗り!流石猟犬、やったわね私。

清算を済ませて近くの暗闇に紛れて一度荷物を黒蜜おばばの実家に置いてから都内のデパートの福袋を買いまくる。

それとCoCo○や築地○だこ、サーテ○ワン、ファーストキ○チン、リンガー○ット等の福袋も。

これらのお店の福袋は大変お得で福袋が二千円なら二千円分の商品引き換え券が入っていて色々なグッズと可愛いバッグが付いていて毎年買っているのだ。



開けて2日。

仙台の初売り。

ここの初売りは有名で大きな茶箱に景品が入っていてとってもお得。

昨夜からチョさんと夜に強いモンスターズのバンパイヤと会社が休みで暇を持て余していた人郎さんが並んでくれてる。

昨夜の内に彼等を私が仙台に連れて行ってたのだ。

景品付の茶箱は先着100名までだから買えたのかしら?

お店の前にテレビカメラが来てるわね、あら?茶箱を片手でヒョイっと掲げた怪力ちびっ子レッサーパンダが取材を受けてる。

あの子行列に並んでも寝ちゃうから家で待機って言ってたんだけれども・・・

取材が終わったので近づくと私に気付いたちびっ子レッサーパンダが手を振る。

何々?昨夜、自分も役に立ちたかったので行列に並ぶ用意をしていた人郎さんのバッグにコッソリ入って付いてきて並び始めて夜食を食べようとバッグを開けた人郎さんに見つかり、その上夜食のお握りを食べちゃったのがバレて怒られたですって・・・

その時、最後尾だったのでそのまま並んだ?

貴方眠く無い?大丈夫だったの?

保温の魔道具と毛布に包まって寝たからなんとも無いし行列に並んでたら色々な人が食べ物や温かい飲み物をくれたからお腹がいっぱいで元気モリモリ?大丈夫なら良いのよ・・・


茶箱を抱えた皆を黒蜜おばばの実家へ連れて帰ると忙しくて行ってなかった初詣へ出かける。


黒蜜おばばの実家近くにある小さな神社、御賽銭を入れてカランカランと鐘を鳴らして二つお辞儀に柏手を二回打ってもう一度お辞儀をして

「今年も宜しくお願いします」


すると私のスマホにメールの着信が・・・

「蜜ちゃん年末年始、忙しそうだから遠慮してたけど先月買って来て貰ってたお酒をみんな飲んじゃったから獺○の一升瓶を何本かと何かおつまみ頼みます。byゼ○ス」

もう一件あるわね。

「蜜ちゃん。買って来て貰ったお酒やおつまみ、年始の挨拶に来た奪衣婆さんに全部食べられてしまいました。金沢のお酒と日本海の海の幸をお願いします。それと東京駅地下で売ってる美味しいプリンをお願いします。閻魔大王」


私は横にいる人郎さんに

「やれやれ。天界や閻魔大王様から早速、お使いのメールが来たわ悪けれどもこれから行って来るわね。ゆっくり出来なくてごめんなさい」

と言い買い物籠を持って近くの暗闇に足を踏み入れた。

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