第101話
forest Xmas
私は買い物籠を咥えてクリスマスのイルミネーションが点灯する街をタッタッタと走り抜ける。
今年はサンタさん来てくれるのかなぁ〜?
もう私も大人になってしまったから来てくれないかも・・・
私がまだ黒蜜おばばの使い魔になったばかりの頃、今夜見たいにクリスマスの夜に買い物していたら道端に恰幅の良い白い髭の外人のお爺さんが座り込んでいるのを発見した。
買い物籠をお爺さんの傍らに置いてお爺さんを鼻先でツンツンと突いて【大丈夫かな?】と観察してみる。
すると目を開けてキョロキョロと周りを見渡して
「やってしもうた!飲み過ぎた!相棒がおらん!サンタ服も無い!どないしよ?」
と頭を抱えてながら叫んでる。
首を傾げながら見ている私に気が付いたお爺さん
「おおっ!真っ黒な使い魔さん。起こしてくれてありがとう。このまま寝てたら偉い事になる所だった。ここは、銀座かい?」
私はコクコクと首を縦に振る。
「えーと、相棒のトナカイとソリとプレゼントは北欧のサンタランドに一度帰らないといけなか・・・サンタの衣装を着て無いとサンタランドに帰れないんだよなぁ間に合うかな?ヤバイぞ」
すると買い物籠さんがカタカタと震えているので持ち手を咥えた。
『蜜ちゃん。お爺さんを近くのチキン屋さんに連れて行って。チキン屋さんの店長さんはよく知ってる人だから店頭に立っているサンダース大佐の人形が着ているサンタ服の予備を貸してくれる様にたのんでみるわ』
私はお爺さんにコッチコッチと首を振りながらお爺さんを近くのチキン屋さんに連れて行った。
店頭にテーブルを拡げお客さんを捌いていた男の人が買い物籠を咥えた私を見て
「おや?黒蜜おばばの使い魔さん?予約の時間はもう少し先だったはずだけど?」
買い物籠さんが地面に置いてと咥えた持ち手を通して伝えてきた。
買い物籠を地面に置くとガタガタ動き出し歩道にチョークで字を書き出した。
【店長さん。このお爺さんにサンダース大佐の予備のサンタ服を貸してあげて下さい】
「えっ?サンタ服の予備?今年、新品に換えたから古いのはあげても良いけど・・・」
お爺さんを繁々と見る店長さん。
お爺さんもお願いしますと拝んでる。
「おーい!古いサンタ服を持って来てくれ!」
店の中に向かい声を張り上げる店長さん。
バイトの女の子が紙袋に入ったサンタ服を持って来てくれた。
「爺さんこの服似合いそうだから持って行って良いよ。黒蜜おばばの所のチキンはあと少ししたら取りに来て」
店長さんがニコリと笑って紙袋をお爺さんに渡す。
サンタ服を貰ったお爺さんは大喜びしてる。
「プレゼントをあげるばかりだったけど貰うのは初めてだ!」
お爺さんを連れて近くのベンチへ。
紙袋から出したサンタ服を服の上に着たお爺さん。
まるで本物のサンタさん見たい!
「フォッホホ!自前のサンタ服より軽く着やすいな。これで、サンタランドに帰れる。ありがとう使い魔さんに買い物籠さん」
サンタ服を着たお爺さんは笑いながら近くのホテルの回転扉に入って行く。
クルクルっと回った回転扉。
サンタ服のお爺さんはそのまま消えてしまった・・・。
その後、チキン屋さんでチキンを受け取り店長さんにお辞儀をして黒蜜おばばの所へ帰った。
その夜、チキンを食べて寝床の毛布に潜り込んで
「サンタさんプレゼント何をくれるかな〜?」と思いながら眠りに就いた。
翌朝、目覚めると枕元にプレゼントが二つ!!
一つは、黒蜜おばばの編んでくれた手編みのマフラー。
一つは私が買い物中に銀座で見て欲しいなぁ〜と思っていた毛を整えるブラシ。
私は黒蜜おばばに『二つもプレゼントありがとう』と声を飛ばす。
「昨夜、蜜が眠った後にサンタさんがやって来て蜜にブラシのプレゼントを持って来てくれたんだよ。サンタさん。蜜に助けて貰った上にサンタ服を貰えて嬉しかったと言ってたよ。良かったね蜜」
えー!あのお爺さん本物のサンタさんだったの?
私はその日のお茶の時間にサンタさんから貰ったブラシで毛を整えて貰いとても気持ちいい時を過ごした。
年を越してしばらくしてあのチキン屋さんの前を通るととてもニコニコした店長さんがいた。
どうもあのクリスマスの夜ににサンタ服を持って来てくれたバイトの女の子から告白されて付き合う事になりラブラブなんだとか・・・。
「クリスマスの朝、夢にサンタさんが出て来て『サンタ服をくれた君へのプレゼントは前から欲しがっていた恋人で良いかな?』って」
店長さんもプレゼントを貰えて良かったわね。
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