第二話 竜と神と

 そういえば、シュトロムやアマテラスの能力を確認していなかった。

 タロウも、情報が解放されているかもしれない。改めて見る必要があった。



「ねえ、皆の能力を確認させてもらえないかしら。何が出来るかを把握しておきたいの」

「そうだね。僕も知っておかなければならないね」

「先程の様に触れられればよろしいのですね。ウラク殿、よろしく頼みます」



 私は、シュトロムの体に触れる。

 鱗でびっしりしているのでヌルヌルしているかと思いきや、そうでもない。

 ゴツゴツとして固く、体の温もりが伝わってくる。



   名前;シュトロム

   種族;海竜

  スキル;水魔法 風魔法 海遊術 統率術

アビリティ;ドラゴン 魚



 シュトロムは魔法二種を扱え、ケローネと同じく統率術を所持している。

 水魔法と風魔法の併用で、渦を起こすことが出来るのかもしれない。海遊術も相まって、水中の戦闘では無類の強さを発揮するだろう。



「皆さんと比べ、そんなに能力がありませんね。申し訳ありません」

「いやいや、むしろこれ多い方だからね? 私はスキル三つだし。それに、スキルと実力はイコールじゃないわ」

「はっはっは、ウラクを見てるとそう感じるよ」



 ドラゴンにこれだけの戦闘スキル、人格者であり統率術もある。

 私はともかく、シュトロムは十分有能だ。

 今後も頼りにさせてもらおう。



 私は、続いてアマテラスに触れる。

 既にアマテラスは回復しており、床にちょこんと座っていた。



「やれやれ……酷い目にあったのう。もう酒はこりごりじゃ」

「とか言いながらまた飲むんだろ? いつものパターンだな」

「いいや、妾、もう飲まない!」



 そんな事を言い合っているアマテラスの頭に手を乗っける。

 アマテラスは気にせずタラスクと話している。なんだかんだで楽しんでいるようだ。



   名前;天照大御神(あまてらすおおみかみ)

   種族;総氏神(太陽神)(豊穣神)(機織神)(海神)

  スキル;天照大御神アマテラスオオミカミ 稚日女尊ワカヒルメノカミ 保食神ウケモチノカミ 弓打術

アビリティ;神 太陽 豊穣 王 苦労人 引きこもり 




 種族が凄い事になっている。

 神、神、神。いくつもの神を兼ねているのか。

 スキルも固有スキルばかり。唯一汎用っぽいスキルが弓打術だが……一体何なのか。

 弓術は比較的所持者が多く、良く見られるのだが弓打術と言うものは見たことがない。

 正直言ってお手上げだ。本人から詳しく聞くとしよう。



「アマテラス、ちょっと……いや、かなり聞きたいことがあるのだけど」

「む? そんなに聞く事があるのかの? 妾の力はみれたのじゃろう?」

「それがね……私の頭にはこんな感じで情報が出てきたの」



 私は口では表現しにくいので、紙にアマテラスの能力を書き写す。

 それを見るとアマテラスはあー……と、察した表情になる。

 タロウ達も、書き写した紙を見ている。



「苦労人だって! アマテラスって人知れず苦労しているんだね」

「そうじゃな、タロウ以外にも沢山振り回されておるしの。もっと妾を労っても良いのじゃ」

「うんうん、もっとアマテラスに優しくしてあげてね、ウラク」

「私に言ってるんじゃないと思うけどね……。それでアマテラス、まずは種族についてだけど」



 私はアマテラスに種族のことを聞く。

 神様の能力確認なんてした事がなかったからこれが異常かどうかもわからない。

 だが、今まで見てきた中では最もおかしい。唯一理解できるのはアビリティくらいだ。



「うむ、妾は天照。即ち天下を照らす太陽の神じゃな。妾の元とする所じゃ。そこから太陽の恵み……即ち豊穣を司る神へと至った。機織は、妾がやった蚕を口に入れて糸を出し続けると言う一発芸が起因じゃのう。海神は、海辺でさーふぃんをしていたら船を沈めてしまいそうになってのう。申し訳なかったので、助けた後しらっと帰ったのじゃ。だが奴ら、妾を海神と奉ってしまってな。それで神格がついてしまったわ」



 とりあえず何箇所かツッコミたい所はあったけれど、話が進まないのでスルーを決める。 



「二つほどでたらめな事があったけど、つまりは元々太陽神、豊穣神であり、後のは貴方の次元にいる民たちが貴方を奉って神格化したと」

「その認識で構わぬ。ほほほ、こう見えても妾のねえむばりゅうは中々の物でのう、元の世界で妾を知らぬものはおらぬぞ!」



 どや顔で胸をはるアマテラス。

 彼女はどうやら神様の中でも格式高い存在のようだ。

 タロウもうんうんと頷いている。



「うん、確かにアマテラスも、弟たちも結構有名だったよね」

「弟の方は別の意味で有名だったけどな……」

「言うでない……妾も手を焼いておるのじゃ」



 凄い……のかよくわからないが、アマテラスの力は本物のようだ。

 一発芸とかサーフィンとか言うから不安ではあるが、少なくとも先日の戦で披露した太陽神の力は信用できる。

 そしてスキルの事を聞くと、今まで説明した神の能力がアマテラスオオミカミ、ワカヒルメノカミ、ウケモチノカミだと言う。



 アマテラスオオミカミ……天下を照らす能力。穀物の豊穣を与える能力。空間を凝固し結界を張る能力。

 ワカヒルメノカミ……糸を作り、機織の職工を充実させる能力。海で苦しむ者を救う能力。

 ウケモチノカミ……様々な穀物、動物が食せる様になる能力。牛馬を生み、充実させる能力。五穀を生み、充実させる能力。



 アマテラス自身が、自分でできる能力をスキルに当てると恐らくこんな感じだろうと教えてくれた。

 一言で言えば、破格。これが本当に機能するならば、アマテラスがいれば食糧難になることはない。

 それに加えて、糸を作り出す能力。これも素晴らしい。

 恐らく蚕糸……蚕から取れる糸、つまり絹(シルク)が作り出せる能力だろう。この能力も、ルストの礎を築いてくれるだろう。

 穀物の豊穣や、牛馬の充実、そして絹を作り出す能力がどれ程のものかは、後で見せてもらう事にしよう。



 アマテラスの能力考察をしていると、ケローネがアマテラスに質問をする。



「この弓打術ってなんなのかな? もしかして弓でばちこーん! って叩いちゃう感じかな? とっても大胆ね♪」

「愚弟を弓でぶん殴った時、妙にしっくり来ると思っていたがまさか能力として所持していたとはのう」

「貴方の弟さんは一体何をやったの……」

「聞かぬほうが良いじゃろう」



 なんにせよとても有り難い神様だ。まさか通常の召喚以外でこれほどの神様を降ろすことができようとは。

 何故タロウはアマテラスを呼べたのか。それを知るために、私はタロウの頭に手を置く。

 タロウは屈託ない笑顔で私を見返してくる。




   名前;浦島太郎

   種族;人間(???)

  スキル;釣り ??? ??? 動物会話術 海游術 旅術 ベフライドラッヘ 三種の神器 ??? ??? ??? 特異召喚術

アビリティ;人間 民 ドラゴン 御伽 ??? ??? 遊人 旅人 ??? ???




 以前に比べて大分情報が開示されていた。スキル、アビリティ共に見れる所が増えている。

 アビリティに御伽。ケローネを呼ぶ際に、参照されたのかもしれない。


 スキルは動物会話術、海遊術はわかるが三種の神器とは何なのだろうか。

 私はタロウに、スキルの事を尋ねた。



「タロウ、三種の神器って何のことかわかるかしら?」

「ああ、やっぱりそれもスキル扱いになるんだね。これは以前僕が海に沈んでるのを見つけた物なんだけど……」



 タロウはごそごそと服の中から鏡と勾玉を取り出す。

 鏡は、アマテラスを降ろす時に使用した物だ。もう片方の勾玉からも同じように神聖な気配を感じる。



「これらが三種の神器って言ってね。それぞれとても強い効果があるんだけど、僕が使用してるのは主に、神降ろしの媒体としてなんだ。鏡はアマテラス。この勾玉はツキヨミ、そしてもう一つの神器でスサノオを降ろす事ができる」



 これがアマテラスを召喚した物の正体。マジックアイテムの類だろうか?

 単体での使用も出来るが、召喚媒体にも使えるとは。しかも無くならずに再使用が可能だという。

 タロウ曰く、スサノオの神器は危険なものらしいのでここでは出せないという。



「ふん、妾を呼んだ時点で愚弟共など不要じゃ、特にツキヨミは絶対呼ぶでないぞ!」

「いや、俺としてはスサノオもやめてほしいんだけど……」

「はっはっは、呼んだらきっとここを気に入って永住しちゃいそうだしね」



 先程から挙がっているアマテラスの弟たち……ツキヨミとスサノオ。相当な厄介者のようだ。

 乙姫様といい、タロウたちの世界には個性的なのが多いのかしら……。

 何はともあれ、アスピドケローネと言う強力な仲間が召喚され、シュトロム、アマテラス、タロウの能力も確認できた。

 早速今日から取り掛かろう。各々に仕事を分担し、私たちはそれぞれの場所へと向かった。

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