第44話 国境砂漠
タイチ達は今、国境付近の砂漠にいた。
太陽の光が砂漠を反射して熱が上っていく。
「あ、暑いな......」
タイチは馬車の中でグダーとヘタレこんでいる。
「暑いー」
「...ですね。」
「......」
リルやミレナもその言葉に同意する。
ミレナは、馬の操作をしている為体を起こしているが、どこか気だるそうだ。
リルはタイチ同様に体を伏せており、ルルは完全に寝てしまっている。
「この服って温度管理の魔法がかかってるんじゃあ無かったか?」
確か魔法服と呼ばれる防具機能を備えたもので暑い所でも寒い所でも大丈夫だったはずだ。
「ここは、部分的な魔力の偏りで温度が高まってるだけですから...」
「魔法である温度管理は基本無効って事か...」
この服は魔法により温度調節される。
つまりは魔力で動いているという事なのだが、ここは魔力濃度が高い事で温度が上がっているのだ。それで魔法が上手く機能してくれない。極端に高かったり低かったりすると防御としての機能が働くが、我慢出来るレベルだと機能してくれない。
まぁその気になれば出来ない事は無いのだが、いつ何が起きるか分からない以上魔力の無駄使いは止めておくべきだろう。
「国境まであとどんくらいだったっけ...」
「......もう少しのはずです。」
「今から向かう国は......」
そこへリルがだるそうに口を挟む。
「次の国は『ベリアル共和国』だね......」
ベリアル共和国。少し北の方に位置する国であり、その特徴は王政では無く地方の集合体を代表者が管理するというものだ。
地方間に勢力関係はあってもトップはいない。
つまりは議会主義の様なものなのだ。
「ベリアル共和国には亜人の集落もあるからね...亜人にも優しいはずだよ......」
タイチは、多くの集落ならば少しは情報が手に入るかも知れないと期待をした。
黄昏の地。龍神が住まうとされる場所。
そこに行けば、少なくともタイチに力が与えられた理由がわかるだろう。
『観測者』とは一体何なのか?
本当に魔王やその幹部とは悪なのか。
何故、タイチ達が勇者として連れてこられたのか?
その答えに繋がるヒントが得られるはずだ。
その為に、黄昏の地についての情報が必要だ。
女神信仰の人間よりも、多種多様な言い伝えを持つ亜人の民族の方が知っている可能性は高いだろう。
「うー。あついー。」
ここで、ルルが目を覚ました。
ルルが一番小さく体も弱いので、出来る限りの配慮をしているつもりだ。
だが、それでもやはり辛い事に変わりは無いだろう。
「......リル。仰いでやってくれ。」
「えーっ!!あたしがやるの!?タイチやってよ。」
「さっきは俺がやっただろ。ミレナは馬車の操縦で手塞がってるし、頼む。」
「...分かったよ。うりゃーくらえ必殺技!!大旋風!!」
リルは、手に持ちやすい様に加工された木の板を掴むと、勢いよく上下に降る。
日本のうちわと原理は全く同じだ。
涼しい風が顔に当たり、生き返った心地になる。
この瞬間こそが、至福だと思うタイチだった。
もっともこの後、疲れ果てたリルの為に板を仰いで余計に疲れる事になったのだが......
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