第43話 外伝1 勇者とは
俺の名前は
この前までは普通の高校生だった。
ある日、クラスの1人竜崎太一が女子がいじめられているのを助けた。
凄い事だ。標的が自分に移る事を恐れずに人を助けるなんて事、俺には決して出来なかった。
だが、現実はあまりに非情だ。
倉敷達は躊躇いなく人の人生を終わらせる類の報復をした。
先生も先生だ。
いじめに気づいてた癖に何もしなかった。
その癖、普通に考えたら有り得ないなのに倉敷達の味方をしたのだ。
先生に何度もそれはおかしいと指摘したが、一切聞く耳を持ってはくれなかった。
所詮、俺もクラスの中では立場が弱い存在だからだろう。
竜崎が学校を辞めると言った時、どれほどの絶望だっただろうか。
狂ってる。
こんな事を平気でする倉敷達も、それを信じる先生も。
…そして、それを見ているだけの俺自身も。
そんなことを考えていた時だった。
俺たちが別世界へと転移してしまったのは。
☆☆☆
異世界へと転移してしまってから、おおよそ2ヶ月が経過した。
俺は未だに、この王宮で訓練をしながら過ごしていた。
2ヶ月前に王様が言っていた、魔族の生き残りを倒してくれという話。
あれは恐らくただの建前だろう。
王様が俺たちを見る目は、酷く冷たいものだった。
日頃、人の目に怯えて暮らしていた俺だけが気づいたのかもしれない。
だが、俺たちに能力があるというのは本当らしい。
『女神の加護』と呼ばれる特殊スキルは、まさに魔法と呼べるものだった。
俺のスキルは『大地再臨』というもの。
能力は地面に触れている間、地面や地面に接している無機物を操る事が出来る。
弱点は操作している間、体が無防備になってしまっていることだ。
遠距離から戦闘ならとても強い能力だろう。
だが、それには背中を預けれる強い味方が必要。
この国の奴らに安心して背中を預ける事は決して出来ない以上、しっかり様子を見て行動するしかないのだ。
今や、クラスは完全にバラバラだ。
どこかしらの貴族の令嬢やら嫡男やらと一緒にいるクラスの連中を多く見かける。
中には、既に貴族の者と結婚した人もいるらしい。
勇者の力を利用しようとしている気がするのは考え過ぎなのだろうか?
勇者と言えば、高坂。
高坂の能力は俺たちとは一線を画すものだった。
能力の全ては分からないが、きっと俺たち全員が束になって掛かっても倒す事は出来ないだろう。
高坂はクラス1のイケメンで、とても優しい奴だがそこが逆に心配だ。
高坂の正義感は流動的なのだ。つまり、周りに酷く流されやすい。
2ヶ月もの間ずっとこの国の人と接してきた高坂が、どうなってるのか考えるだけでも恐ろしい。
俺たちは勇者としてこの国に呼ばれてきた。
だが、俺たちが今後どうなってしまうの全く予想がつかない。
…竜崎は、この世界に来て直ぐに王宮を出たと聞く。無事に生きてくれているといいのだが。
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