第34話 遊戯場
「ここが、遊戯場か......」
目の前には、巨大な円状の建物があった。
タイチたちはその後、他の買い物を済ませて遊戯場に来ていた。あのギルトの受付の人はどこか怪しかったが、それでも行っておくのに越した事は無いと思ったからだ。
「なぁ、ここって何をする場所なんだ?」
そうナッシュに尋ねると、ナッシュは嫌な顔をした。
「まぁ、言ったら分かるよ。......俺はあんまり好きじゃないけどな。」
そう言って、足早に建物の中に入っていった。
☆☆☆
「ご覧下さい!!この綺麗な青い髪、そしてこの整った耳を!」
建物の中に入ると、すぐにその様な声が辺りを占める。
そして、その声の方を見ると小さな子供達が首輪に繋がれていた。
「......奴隷商か。」
「そのようですね。」
それは明らかに、奴隷商の人が奴隷を売っている様子だった。
「なぁナッシュ。これは一体何なんだ?」
すると、ナッシュはミレナの方をチラッと見てから答えた。
「......見ての通り、奴隷の売り込みだ。この遊戯場では奴隷の売買が盛んに行われている。」
そう吐き捨てる様に言った。
「それは見ればわかるが、そもそもどうしてこんな場所でーー」
行われいるのか。そう尋ねようとしたその時だった。今までの声とは比べ物にならないくらいの歓声が奥の方から聞こえて来たのだ。
「...始まったな。行こう。」
そう言って進んで行くナッシュの後をタイチとミレナはついて行った。
しばらく歩いて行くと、急に大きく開けた場所にたどり着いた。
そこはまるでコロッセオのようになっていて、中央の広場を囲んで大勢の観客が歓声を上げていた。
『さぁ、やってまいりました!!皆様お待ちかねのお時間です!!本日のラインナップはこちら!!』
そして、仮面を着けた者がやってきて首輪に繋がれていた数人を連れてきた。
『まずは、今話題の猫人族と...なんと!ハーフエルフを交配させて作った姉妹で御座います!!』
その瞬間、歓声が一段と大きくなった。
そして、司会はまだ話を続ける。
『これにより成功例である姉『リル』は、獣人族としての圧倒的な身体能力!そしてエルフとしての莫大な魔力を所有した個体となっています!!』
歓声はどんどん大きくなっていく。
『残念ながら、妹の方は失敗してしまい獣人族並の魔力にエルフ並の身体能力というザマになってしまいましたが......』
途端に会場に笑いが沸き起こった。会場の人達はこの様子に一切の疑問を持っていない。
「......これがここでの普通なのか?」
タイチは呆然としながら、呟く。
「俺はあんまり好きじゃないけどな。......でもこの街の大きな娯楽の一つだ。」
タイチの呟きに対して、そうナッシュは返した。
何を娯楽にしているか、そんな物はいくらここに来るのが初めてでも直ぐに分かることだった。
奴隷の価値が低いこの世界で、それでいて奴隷が活躍する遊戯場での活動なんて思いつくのはたった一つだ。
「......殺し合いをするのか?あの子達は。」
「そうだ。奴隷の購入欲を促進させる為にこの遊戯場は存在する。」
その言葉を裏付けるように、司会が話を進めていく。
『ですので!!今回は優れた姉と出来損ないの妹の非情な運命の戦いを見せて頂きましょう!!』
わぁぁと、とても大きな声がその場を支配した。
そして、首輪に繋がれていた2人の少女を残して残りの人は端の方へと移動して門の外側へと去っていった。
そして残された少女を見て、タイチは目を見張った。
「......なぁ、ミレナ。これは俺の気のせいなのか?」
タイチはそうミレナに尋ねる。
「......いえ、ご主人様。恐らくはご主人様の考えている通りかと。」
「......こんな事ってあるのかよ。なぁ!!」
そこにいたのは、以前出会った少女『ルル』だった。この少女こそが、今現在殺し合いをさせられようとしている妹の方だったのだ。
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