第15話 癒し草採取
その日、タイチたちは森の中にいた。
「うーん、なかなか見つからないな......」
地面に腰を下ろし、必死に何かを探していた。
「あ!ありました!!」
ミレナが何かを見つけ、それをタイチの元へと持ってくる。
「鑑定魔法!」
タイチは、ミレナが手に持つものに鑑定魔法をかけた。
ーーーーーー
『癒し草』
生き物を癒す魔力が宿っている草。
ポーション等の素材として使われる。そのまま服用しても多少の傷が癒される。
ーーーーーー
「これで正解みたいだ。これを見ながら探していこう。」
これこそがタイチたちが探していた物だった。
タイチたちは今冒険者ギルドの依頼であるEランクのクエスト、薬草採取に来ていたのだ。
この世界で、生きていくためにはお金が必要だ。今は盗賊を倒した事でお金を持っているがいつ無くなるか分からない以上稼ぐ方法を手に入れておくに越したことは無い。
「あった!これだな!」
実物を見ると、聞かされていた情報だけを頼りに探しているよりも何倍も探しやすかった。
「なんだ......結構簡単なんだな......。」
思っていたよりも簡単に見つけ出していく。さっきまでの苦難が嘘のようだ。
「よし、この調子でどんどん採っていこう。」
タイチは、視線を地面に集中させ癒し草を探していく。
「これかな?」
タイチはそっくりなものに手当り次第鑑定魔法をかけてみたーーーーーー
『ルキア草』
その土地によって咲く花の色が異なる草。
『ホルン草』
食べた者の声を少しだけ高くする。
『フレア草』
葉っぱをちぎると熱を持ち、いくつもを1度に破ると発火する。食用。
『眠り草』
精神感応系の魔力を宿した草。不用意に傷つけると睡眠作用のある魔力を放出する。
『トコノ草』
性属性の魔力を持つ草。食べると催淫作用がある。希少価値が高く高値で取引される。
『コルク草』
硬い。ただ硬いだけの草。利用価値がない。
『ミトリア』
種に魔石を宿す事がある花。その魔石は純粋な魔力の結晶で不純物がない。成長速度が遅いのが難点。希少価値が高い。
ーーーーーー
「(異世界過ぎるだろ......)」
これを見てタイチはそう思わずにはいられなかった。
ルキア草は別にいい。元いた世界でもそんな花は沢山あった。
だが、ホルン草はなんだ?ヘリウムガスかよ。
フレア草...さすが異世界。食用なんて狂ってるだろ。
眠り草に至っては危険極まりない。こんなの戦闘中にやられたら殺される。
だが、草の中にも希少価値があるものがあるようだ。
トコノ草は置いておくとして、このミトリア。上手くいくとこれで億万長者になれる可能性だってある。
「なぁ、ミレナ。そっちの調子はどう?」
その言葉にミレナは手を止めて袋をこちらに持ってきた。
「すみません......まだそんなに多く採れていません」
その袋の中には、既にタイチの5倍以上の量の癒し草が入っていた。
「す、すごいな。俺がこれだけ採るには日がいくつあっても足りないな。」
「そんなこと無いですよ。コツさえ掴めばご主人様もすぐに見分けがつくようになります。」
「そっくりな草とか見なかったか?例えばこれみたいな。」
そう言って、ミトリアをミレナに差し出した。
「そうですね、似ているものなら向こうにまとめて置いたので色々あるかもしれません。いってみましょう」
タイチたちは、ミレナが採集を行っていた場所へとたどり着いた。
そこにはいくつものミトリア、そしてトコノ草があったのだ。
「ス、スゲー!」
タイチは叫ばずにはいられなかった。これだけあったらきっと高い値段で売る事が出来るだろう。
「これがどうしたのですか?」
ミレナはそんなタイチを不思議そうに見ていた。
鑑定魔法が使えないため無理はない。
「あぁ、これらはなぁ......」
タイチは鑑定魔法で入手した情報をミレナに伝えた。
「......なるほど、だとしたらこれらも持って帰った方が良さそうですね。」
「そうだな。これらも探していこう。」
そして再び癒し草探しへと戻っていった。
それから三時間後、集まった大量の草を袋に詰め、冒険者ギルドへと戻って行った。
☆☆☆
ギルドの中へ入ると、人の多さで少しだけ気分が悪くなる。まるで祭りの時の人混みに酔う気分だ。その中を大きな袋をを担いで歩いていく。
「依頼達成の手続きをして欲しい。依頼内容は癒し草の採取だ。それに他にも珍しい物も持ってきた。買い取って欲しい。」
すると受付をしていた青年が、下から番号札を渡してきた。
「それでは、ギルドの右にある解体場で鑑定をしてきて下さい。番号札を見せればその結果がこちらに来ますので確認でき次第、依頼達成となります。そして次回いらっしゃた時に報酬をお渡しいたします。」
「分かった、ありがとう。ミレナ、行こう」
「はい。」
タイチたちは冒険者ギルドを後にして、隣にある工場のような場所へと向かった。
そして工場の中へと入ると広い空間にいくつものモンスターの死体等が置かれていた。そのモンスターを囲んで何人もの人が刃物で解体を行っていた。
「なぁ、ここで鑑定をして来いって言われたんだが......」
タイチはその人たちに伝わる様に大きな声でそう話した。
「......誰か来たようだな。ナタ行ってこい。」
「はーい。」
その場の誰かがそう言うとそれに反応した女の子がこちらへとやって来た。
「冒険者ギルドから来た人だね?」
その少女は、手に持っていたナイフを革にしまいながらそう言った。
「それじゃあ、番号札とギルドに売る物を出してね。」
タイチとミレナは番号札と手に持っていた袋をナタという少女に渡した。
「うわ、いっぱいあるね。......これもしかしてトコノ草?それにミトリアまである......。一体これをどこでみつけたの?」
「近くの森で見つけた。」
その言葉を聞くとナタは絶句した。
「こんな希少な物がそんな近くにあるなんて......。それもこんな沢山...」
どうやら思っていたよりももっと貴重なものらしい。
「これはそんなに珍しいのか?」
タイチはナタにそう聞いてみた。するとナタは化物でも見るかのようにタイチを見るようになった。
「はぁっ!?これの価値も分からないのに持ってきたの!?それなのにこれと雑草を区別できるなんて......。はぁ.....まぁいいや。冒険者の事情は詮索しないのがルールだからね。いい?このトコノ草は今じゃ滅多に市場に出ない様な希少素材なの。貴族に莫大な需要があるらしいよ。それにこのミトリア、ミトリアは『女神の涙』って呼ばれてるくらいすごい植物。王宮でも僅かな量しか所有していないの。」
そうナタは、スラスラと植物の解説をしてくれた。
「そうか、高く売れそうか?」
タイチにとっては希少なのかよりもどれくらいで売れるのかの方が興味があったのだ。
「......そうだね。トコノ草はこれだけあるなら金貨30枚で買い取れると思う。だけどミトリアは無理。うちやギルドが逆立ちしたって絶対に支払えないと思う。それぐらい貴重なの。ミトリアは。」
「金貨30枚!!本当か!?」
金貨30枚あれば、今持っているお金と合わせて金貨40枚近くになる。それだけ有ればきっと色んなことが出来るようになるだろう。
「多分ね。それでいいなら今から鑑定して結果をギルドに報告するけどいい?」
ナタはお腹の部分の大きなポケットから計算器を取り出してそう言う。
「あぁ、よろしく頼む。」
タイチは、袋にミトリアを詰め直し踵を返した。ミレナもそれに続くようにそっと後ろを付いていく。
「あ!それとミトリアは水に浸けとけば枯れたりしないから水の中に保存しておくといいよ!」
最後にナタはそうタイチたちにアドバイスをしたのだった。
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