第7話 スキル習得
「コンコン」という音でタイチは目が覚めた。
するとタイチの頭の上に鳥が見えた。どうやら鳥が俺の頭に乗っているらしい。
「なんだ、ただの鳥か......」
そして背中には葉っぱによって若干の柔らかい感触を感じた。
久ぶりによく眠れていたせいか、この心地よさに包まれたくてタイチはまた寝る事を試みる。
「キュイ!」
コンコンコンコンコッコっコッコっ!!
鳥が猛スピードでタイチの頭めがけくちばしてつついていく。
「痛えええ!!」
タイチは、急いで鳥を追い払う。
「全く、何だったんだ......」
そこでタイチは、自分の置かれている状況を思い出した。
「(そういえば、俺。確か森に捨てられて......。っ!?何で俺は立ってるんだ!?)」
タイチは鳥を追い払うために、確かに立っていたのだ。
「(足が、元に戻ってる!?そういえば、森で綺麗な物を見たような......。っ!思い出した!ドラゴンだ!ドラゴンに会ったんだ!)」
タイチは、森で水と食料を求めて、さまよっていた。そしてそこで、ドラゴンに出会ったのだ。
その時、頭の中に自分では無い声が聞こえる。
〈スキル『龍神の片鱗』を入手しました。
......エラー。アクセス権限が足りません。スキルを分解し、最適化します。〉
「(何だこれは!?こんな事初めてだぞ!?)」
〈スキル『探索』を獲得。スキル『鑑定』を獲得。スキル『マッピング』を獲得。スキル『高速思考』を獲得。スキルを最適化します。スキル『賢者』に修正しました。〉
声はまだ続く。
〈火属性魔法の適正を獲得。水属性魔法の適正を獲得。自然魔法の適正を獲得。光属性魔法の適正を獲得。闇属性魔法の適正を獲得。魔法適性を修正。『古代魔法』適正を獲得しました。〉
〈スキル『王者の威光』を獲得。ユニークスキル『奴隷頼み』に編成します。〉
〈スキル『魅了』を獲得。ユニークスキル『奴隷頼み』に編成します。〉
〈スキル『未来予知』を獲得。...エラー。アクセス権限が足りません。スキル『未来予測』を獲得。スキル『賢者』に編成します。〉
〈スキル『空間掌握』を獲得。...エラー。アクセス権限が足りません。〉
〈スキル『人心操作』を獲得。...エラー。アクセス権限が足りません。〉
〈スキル『生命創造』を獲得。...エラー。アクセス権限が足りません〉
〈システムを最適化。エラー。アクセス権限が足りません。アクセス権限を修正。種族『人族』を修正します。クリア。アクセス権限が増加しました。。〉
〈スキル『空間掌握』、『人心操作』、『生命創造』を最適化。ユニークスキル『奴隷頼み』に編成します。ユニークスキル『奴隷王』に修正しました。〉
そうして、声は収まった。それとは反対にタイチは、未だに混乱していたのだった。
「(ツッコミたい事がありすぎる...。何だよスキルって!?なんで俺はそれが理解出来てるんだよ?)」
この世界には、スキルが存在する。努力する事で手に入る事も有れば、モンスターを倒して入手出来る場合もある。それはモンスターを倒す時に放出される魔力が体内に侵入してスキルを得られるのだ。
それは問題では無い。問題は何故知らない情報をタイチが知っているかという事だ。
思い当たる節はある、恐らくは『賢者』と呼ばれるスキルが影響しているのだ。だが、まだ状況が理解出来ていないせいで、うまく頭が働いていない。
「っていうか、俺人間辞めさせられてね?」
さっきの声を思い出してみる。
【種族『人族』を修正します】
「もろじゃん!!俺勝手になんか別の種族にされてるし!!それに、今俺が何の種族か教えてくれてないし!?」
タイチは叫び出した。
「俺の足が治ってるのも、スキルが関係してるんだろうな......」
その時、タイチは自分に近付いているいくつかの人間がいる事に気が付いた。目で見たわけではないからこれもきっとスキルによる能力なのだろう。
周りに生い茂ってる草むらや木々に確かにある誰かが隠れている。感覚で分かってしまうのだ。
「誰がいるんだ?」
タイチは近くの人間に対してそう呼びかけた。
「何だ気付いていやがったか。」
低くドスの効いた声が奥の木の裏側から聞こえてきた。
そして茂みの中から男達が現れたのだった。その男達は、ボロボロになった服を着ていて、手には剣を握りしめていた。どこからどう見ても、盗賊と呼ばれる集団だろう。
「死にたくなかったら、そこを動くなよ。」
男達は、剣をタイチに向けたままゆっくりと近づいてくる。どうやら、狙われているようだ。
「(なんか、ゲームっぽいな)」
「あのー。俺お金とか持ってないんですけど。」
タイチは話し合いを試みた!
「別に構わねぇよ。その服だけでも、高く売れるさ。それに、お前自身が商品になるんだ。黒髪は珍しいから奴隷商人から高く買ってもらえるぞ。」
残念!盗賊には通用しなかった!
「俺、少し前まで死にかけてたんですよ。見逃してくれませんか?」
タイチは、相手の良心に呼びかけた!
「見逃すわけねぇだろ。久しぶりの獲物なんだ。」
盗賊は見逃してくれないようだ!
「(くそっ!話し合いは無理か.......)」
タイチのターン!
→【戦う】【逃げる】
「おっと、逃げようとか思うなよ。お前の後ろにも俺の仲間が隠れてるからな!」
残念!逃げる事は出来ないようだ!
「(やっぱゲームじゃないから戦うしかないのか......)」
タイチは戦う事を決意した!
「おおおお!!!!」
タイチは自身の拳を振り上げて、目の前の男に向かって駆け出した。
男までの距離は目算で後5歩。タイミングを合わせるように地面を飛んだ。
「ガキが!無駄な抵抗しやがって!おい!傷付けるなよ!大事な商品なんだからな!」
盗賊の1人がタイチの進む道に立ちはだかった。ボロい腰巻をつけ上着を羽織っていた。
その男はタイチを捕まえようとこちらに向けて手を伸ばしてくる。
タイチは目の前に現れた方の男に標的を変え、無心になって拳を振り下ろした。
「ウラぁ!」
ズドン!という音と共に拳が男の胸に沈み込んだ。胸骨からバキバキと折れる音がした。
その瞬間、男は気絶してしまったのだった。
「なに!?お前ら怯むな!数で攻めろ!」
続けて、数人の男がタイチの前に立ちはだかった。
「...古代魔法『殺戮の宴』」
タイチは意識せずにその言葉を口にしていた。その魔法が何を意味するかも分からないまま。
その言葉を口にすると、周囲の景色が暗くなっていった。
こころなしか空気そのものが重たいものに変わっているような感覚がした。
そしてタイチの目の前に暗い血色の球体が生まれたのだ。
「お、おい!お前何なんだよ!それは!?」
タイチに立ちはだかっていた男の1人がタイチに問い掛けた。
だが、それに応える間もなく球体に変化が生じたのだった。
球体にヒビが入り、少しずつ禍禍しい何かが溢れ出していた。
そして遂に球体が形を保てなくなり砕け散った。
その瞬間、無数のドス黒い大きな人間大の手が球体から飛び出し男達を取り囲んでいった。
そして後には、人らしきものの破片が飛び散っているだけだった。
「は?何?今の...」
タイチは今のを自分がやったという事がとても信じられなかった。
盗賊達のボスなのだろう。さっきから指示を飛ばす男が声を荒らげる。
「おい!お前ら怯えるな!まだ俺達には『アレ』がある!誰が連れてこい!!」
すると、後ろがゴソゴソとしだし、1人の女の子が連れてこられた。
タイチはその女の子を見て絶句した。
「(嘘だろ......フラグ回収早すぎだろ...)」
その女の子は首に巨大な鉄の首輪が付けられていて、服装はこの男達よりもさらにひどい服装だった。体は、ガリガリに痩せており、まともに食べ物も与えられていない事が分かる。
だが、穢れを知らないような銀色の髪、そして何よりあの赤い目が母親と同じなのだ。
「(ここで、ドラゴンの娘に会うとか誰得だよ...)」
今タイチの目の前にいるのは、紛れもなくドラゴン『千年龍』の娘なのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます