第4話 俺tueeeで異世界最強。そんな事を考えてた時期が私にもありました

 そして、次の日俺達はメイドの人に案内されるままに、武闘場と呼ばれている場所へと連れてかれた。

「えーこれから勇者様方には戦闘訓練を受けて頂きたいと思います。」

 昨日のマスタングという人がそう俺達に説明をしたのだった。


「ちょっと待ってください!戦闘は強制しないって昨日言ってたじゃないですか!?生徒達を傷つけるなら許しませんよ!」


 中田がそうマスタングに訴える。


「落ち着いて下さい。これは別に戦闘を強制する為ではありません。勇者様方がこの世界で生きていくのに必要な事なのです。」


 マスタングによると俺達はこの世界では今、赤子も当然らしい。

 ......それも当然か、昨日まで平和な世界にいたのだ。急にモンスターと戦える訳がない。いくらこの国が保護するといっても、急に現れたモンスターに今のままでは逃げることさえ出来ないだろう。


「それでは皆様の戦闘訓練を担当させる者を紹介させて頂きます。王国騎士団団長のハゼルです。」


 そう言うと、武闘場の奥から凄い強面の屈強な男が俺達の前に現れたのだった。

「紹介に預かったハゼルだ。王国騎士団の団長をやっている。済まないが敬語は苦手でな、この調子でいかせてもらう」


 そう言うと、ハゼルは近くに置いてあった木でできた剣を抜いた。

「取り敢えず、お前達の実力を見たい。一人ずつ掛かって来い。」


 そういって俺達の前にもその剣を置いたのだった。


「それじゃあ、俺からいきます!」

 高坂がそう言うと、剣を持ちハゼルへと飛び掛った。そして綺麗なフォームで剣を振っていく。

 ......さすがイケメン。やる事が全部かっこよく見える。


「ほう、なかなか筋が良い。直ぐにそこら辺の兵士は相手にならなくなるだろう。だが...」


 そこまで言うとハゼルは剣の速度を上げていった。カンカンという剣の打ち合う音が辺りに響き、次第にその音が速くなっていく。そして遂に高坂が剣を落としてしまった。


「剣を下ろした後に、体を止めるな。そのまま流れる様に次の動作をする事を意識しろ。では次の者来い!!」


 そして、どんどんクラスの奴がハゼルへと挑み、全員が剣を落としていくのだ。

 手加減をしているのだろう。出なければ相手の剣を叩き落とすなんて芸当は出来ない筈だ。


「次!来い!」

 俺の番になったようだ。俺は剣を持ち、ハゼルへと向かう。

「うおおおおお!!」

だが、大振りに剣を縦に振りきる前ハゼルが素早く剣を横なぎに振るう。

 横に衝撃が走り俺は、地面に倒れた。


「目をつぶるな!目をつぶったら死んだと思え!」


 そう言うと、ハゼルはまた他の者と稽古をするのだった。


 そして、全員と戦った後、ハゼルは一切の疲れを見せずに、こう言ったのだった。


「皆、今回ので分かったと思うが、お前達はとても弱い。俺が本気になればここにいる全員で襲いかかってきても、瞬殺出来るだろう。」


 その言葉は事実だろう。その言葉を否定できる者は1人としていなかった。

「後は、それぞれの努力にかかっている。お前達勇者は他の者よりも成長する速度がはやい。その事をしっかりと理解して、稽古に励んで欲しい。」


 そう言うと、達はハゼルは去っていった。


「それでは、次は勇者様方の『女神の祝福』について、一人ずつ王宮魔道士が訓練させて頂きたいと思います。」


 そう言うと、沢山いる王宮魔道士が俺達の方へ一人一人分かれて来たのだった。


「それでは、竜崎様。どうぞこちらへ。」

 俺の所にも魔道士が来た様だ。

「分かった。ありがとう。」

 そしてそれぞれが『女神の祝福』の力を使いこなせる様に、訓練をしていくのだった。



 ☆☆☆


 3時間ぐらい経過しただろうか。日が暮れて来た。


 皆、自分の力を少し使えるようになっているようだ。

 特に高坂。あいつの進歩は目覚しいものだった。

 たった3時間練習しただけで、あいつは何も無い所から剣を取り出して、雷を落としたりいろいろやったていた。


 そして、俺についてだが...重要な発見をしてしまった。

 それは......この能力が役には立たないということ。


 俺の力を使うとするならば、誰か奴隷にならなければならない。だが、奴隷を無理やり付けたとしても、信頼が無いため、わずかにしか強化されない。だったら勇者を奴隷にするかという話になるがそれは最早不可能に近いだろう。


 こうして、俺の異世界最初のスタートダッシュは役立たずの称号を得るに至ってしまった。


 その後の出来事だった。


 部屋に戻ると夕食が用意されていて、ベッドも綺麗になっていた。メイドの人が掃除をしてくれたのだろう。


 何となく、まだお腹が空いてなかった俺は城の中を少し見て回ろうと外に出たのだ。

 すると、少し先にとても周囲をとても警戒している中田がいた。

 中田は小走りで城の中を進んでいく。

 ......なんだ?あっちには特に何も無かったはず

 俺達の部屋は城の端に作られて、中田の向かう方には物置になっていて誰も行かないような所なのた。


 ......中田のあとを追ってみよう。


 中田の後を追うとそこにはやはり物置しかなかった。すると中田は物置へと入っていく。


「待たせたね、水戸。」

「ううん、待ってないよ」


 どうやら、物置で誰かと話しているらしい。もう少し、近付いて聞いてみよう。

 俺は物置の側に隠れて、聞き耳を立てる。


「クラスのみんなはどうだ?」


「んーとねー。やっぱり皆困惑してるみたい。知らない場所に連れてかれて、今日も剣術なんかやらされて。だから倉敷さんたちもしばらくは大人しくしてようって言ってた。」


「そうか、あんまり問題を起こして欲しくは無いから助かるな」


「それよりーセンセー、私達こんな事に巻き込まれてるんだよ。まずはさーやの心配して欲しかったなぁ。ぷんぷん。」


 さーやとは水戸の名前が沙耶だからだろう。


「ああ、そうだったね。君が無事で嬉しいよ沙耶。君が無事なら他の連中が別に死んでても構わない。君だけが大切なんだ。」


「えへへありがと。さーやとっても嬉しい。ねぇセンセ、最近してなかったじゃない?しよ?」


「だけど、こんな場所で...それに沙耶、妊娠してしてるじゃない。」


「大丈夫だよー。こんな所誰も来ないだろうし。私達今勇者何だから何も言われないよー。それにセンセーの子供も早くセンセーに挨拶したいと思うよ。だからね?」


「ふふ、しょうがないなぁ沙耶は。そんな沙耶にはお仕置きしないとな!」


「きゃああ!ふふふ。センセーの変態」


 ......俺は直ぐに物置から離れた。

 俺は自分の部屋へと戻っていく。


 なんだあれは!?2人はそういう関係だったのか?


 ......だとしたら、全ての疑問が解決する。何故俺を嵌める嘘が水戸の妊娠だったのか。そして中田は、何故俺が訴えるという危険を犯してまで倉敷の方についたのか。全ては2人の関係が理由なのだ。


 俺が水戸を襲って、妊娠させたとしたら学校としても、水戸を退学という事は出来ない筈だ。そんな事をしたら、マスコミから叩かれる。そして水戸が子供を産み、水戸が高校を卒業した後に結婚なり何なりすればいい。もしそれが問題になっても、水戸を支え続けたとして、美談にする事が出来る。


 全く全てがハッピーエンドだ。俺以外は。


 ......俺はそんなことの為に、人生を潰されたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る