第3話 異世界に来てしまった...え?チートあんの!?スゲー楽しみ!

 そして、次に目が覚めると俺達は知らない場所にいた。そこには、とても高級感のある服をした男の人が数人と、その男達の前に並ぶ剣を持った者が数十人がいた。そして、彼らの後ろには階段があり、その階段の上には、赤いマントを羽織ったおっさんがいたのだった。

 おっさんは高級そうな椅子から立ち上がり俺達に頭を下げて言った。


「勇者様方、ようこそこちらへいらっしゃいました。私はこの国に『ラビタ王国』の長をさせて頂いてます、名をラビタ・トンナ・グロリウスと申します。」

手を胸に起き、物凄く上品だと思えるような礼だった。その様子から頭のおかしい人が狂言を言ってるとはどうしても考えられない。

 つまりおっさんはどうやら王様らしい。

 ......何処の?


俺の後方でクラスの連中がざわざわと騒ぎ始めた。

突然場所が変わったり知らない人達に囲まれたりしているのだ。高校生が騒がない訳が無い。

「あの!そこの人!此処は何処なんですか?」


 そんな中、クラスの雰囲気に押し出される様にハッとした中田が威勢よく王様に尋ねる。


「貴様!国王陛下になんて口の聞き方だ!」


 階段の下にいた、高級そうな服を着た男の人がそう怒鳴った。

「ひぃ!」

怒鳴られた途端、中田は身を竦め生徒に隠れようとし始めた。

俺達は全員ざわざわと騒ぐのを止め、その代わり周りの兵士達がこちら側に向かって剣を向けて来たのだ。


このままではもしかしたら俺達は殺されるかも知れない。

そんな恐怖が周りを占めていく。

その時、王様は手に持つ杖を床に向けドンっ!と打ち付け、大声を出した。

「これ!止めぬか!!勇者であるぞ!!」

 王様がそう言った途端辺りは静かになった。

王様椅子に座りはこちらを見下ろしながら、

「......済まんな。一から話そう。」

そう言って話を始めた。

 こうして王様はこの国について教えてくれたのだった。


 王様の話を要約するとこういう事らしい。


 この国は名前を『ラビタ王国』と言う。この世界にはどうやら魔法というものが有るらしい。その為か知らないがこの国での文明レベルは、俺達のいた世界に比べて数段劣っている。産業革命よりも以前の文明だから、中世ぐらいだろうか。


 そして、この世界では魔物というモンスターがいるらしく、それを操ってる魔王がいて、十年前俺達よりも前の勇者が魔王を倒したらしい。


 これが王様から聞いたこの世界についての基本的な事だ。


「あの...。ラビタ国国王様、質問よろしいですか?」

そう言って、手を上げたのは高坂だった。


まだ先ほどの恐怖で誰も喋る事が出来ていなかった状況で、情報をより多く手に入れなければならないという事を見抜き行動に移せるのは流石としか言いようが無かった。

高坂は、絵に書いたような完璧イケメンだ。顔が良いのは勿論のこと、穏やかな性格で男女共に人気があった。


「構わん。何じゃ?」

 言い方が良かったのか王様が機嫌が良さそうに髭をさすりながら質問を許す。


「この世界ではもう魔王は倒されていると聞きました。では何故私達は召喚されたのですか?」


「ううううむ、それはだな......」


王様は髭をさすり、数秒間考えた。そしてその後、固まった。

......何故ここで固まってしまうんだ?

まさか理由が説明出来ないとか...


「王様ここは私が説明させて頂きたいと存じますがよろしいでしょうか?」

そこへある男が王様へと声をかけた。

その男は王様に比べると劣ってはいるものの、

俺達はもちろん、ここにいる他の人達に比べても質の高い服をしていた。


 その高級そうな服を着た男(恐らくはこの感じだと貴族なんだろう)はそう言うと俺達の近くに寄ると、

「初めまして、私はこの国で宰相をさせて頂いてます、ハン・マスタングと申します。以後お見知りおきを。」


 そう言うと男は片方の膝を地面に付け、頭を下げたのだった


「さて、先ほど勇者様が質問なさった事ですが、確かに現在魔王はいません。ですが魔王の残党がまだ生きており、とても困り果ててしまっているのです。どうかこの国のために、その力をお貸しいたたけませんか?」


片方の膝を地面に付け礼をする。

それは絵本などで見た事のある騎士が最大の敬意を表している仕草だった。

 そこまで言われると、やってもいいかなという雰囲気がクラスの中でも出てきたのが良く分かった。


「えー。そんなのそっちの勝手でしょ。なんでうちらがそんなめんどくさい事しなきゃなの?それにうちらにそんな力なんて無いっしょ。」


 ......だが、倉敷達がいた。


「そうですか...。ですがご安心ください。そのような者達も『ラビタ王国』が責任を持ってお世話させて頂きます。」


 そう言って、そのマスタングは指を鳴らした。

「宮廷魔道士団よ!!入ってこい!」


 すると、俺達の後ろにあったドアから次々な怪しげな服をした人達が入ってくるのだった。


「今から勇者様方には『鑑定魔法』を受けて頂きたいと思います。」


 ......『鑑定魔法』?何で俺達がそんな事されるんだ?っていうかやっぱり魔法はあるのか...


「実は勇者様方は、異世界から来たことにより、特殊な力を持っているのです。我々はその力を『女神の祝福』と呼んでいます 。その祝福で是非私達に力を貸していただきたいのです。」


 そして、魔道士達を1箇所に並べた後、

「それでは!集団詠唱魔法『神眼』発動!」


 すると一斉に魔道士達が何かを唱え始める。

 そして俺達の周りに魔法陣が浮かび上がる。

「それでは、勇者様方。1人ずつこちらへと来てください。」


 俺達はどうすればいいのか戸惑っていた。

 そんな時だった。

「みなさん!取り敢えずこの人達の言うことに従いましょう!」

 そう中田がクラスを誘導するのだった。

 ......こいつ一応、先生なんだよなぁ


 そして、俺達は1人ずつ自分に宿る『女神の祝福』を調べてもらうのだった。


「す、すごいです!こんな量の魔力見た事がありません!!」


 どうやら、魔力の量が多いという『女神の祝福』もあるようだ。


「『豊作の女神の加護』ですか。植物の成長や交配を操るスキルですね。これは国の発展に繋がってくれそうです。」


「『ライブラリー』ですね。これは求めている知識を直ぐに知る事がデキル能力です。その気になれば、この世界では一番すごい賢者になれますよ!」


 皆、すごい力を持ってるんだな。だったら俺もすごい力を持ってるはずだ。

 なんだろうな、妄想が膨らむ。

 俺の力を百倍にする力とかどうだろうか。それで魔物をぶっとばすのは楽しそうだ。

 いや、ここは知的に、相手の考えている事が分かる能力とかもいいかもしれない。相手の攻撃を全て避けて的確にダメージを与えるとかかっこいいな。

皆楽しそうにはしゃいでいた。

「それじゃあ、次はあなたですね」


俺の番になったようだ。なんだろうな。胸が熱くなってきた。


「あなたの能力、それはですね......」


ゴクリと無意識に唾を飲み込む。この『女神の祝福』によって俺のこれからが変わってくるのだ。

頼む!なんかかっこいいやつ来てくれ!


「『奴隷使い』ですね。自分の支配下にある者の力をその信頼度に比例して、強化する力です」


......え?

その時、俺の脳は思考することを放棄したのだった。


「では、皆さん。それぞれの『女神の祝福』について理解して頂けたと思います。今日はもう日が暮れてきたので、また後日話をさせて頂きたく存じます。今から勇者様方のお部屋へとご案内致しますので、皆さんこちらのメイドに付いてきてください。」


そして、俺達はメイドについて行って、部屋へと着き、用意されていた食事をして寝てしまったのだった。



☆☆☆


勇者達が去っていった後には王や貴族が残った。

そこには、先程までの和やか雰囲気など欠片も無かったのであった。


「やれやれ、やっと行ったか。」


王がそう疲れ果てた様に言った。


「全く、なんでこの儂があんな平民共に頭を下げねばならなかったのだ。ほらさっさとこの部屋を掃除せぬか!穢らわしい!」


王様が、傍にいた下人に怒鳴り散らした。

そこへ、先程の貴族がそっと王様の前へとやって来た。


「陛下、お疲れ様でした。陛下の名演技のお陰で、あの者達は、私達を信頼した事でしょう。」

「ああ、さっきは感謝するぞマスタング候爵。あの者共を呼んだ建前を忘れてしまってな」


「いえ、全ては陛下のお陰でございます。彼等を呼んだ理由は魔王の残党を排除する事です。そう他の国にも言っておりますので、お気をつけ下さい」


「だが、もうこの国に逆らえる国などないのではないか?勇者の1人が軍に匹敵する様な力の前では、誰もこの国に口だしはしないだろう。」


「いえ、彼等はまだ力の使い方を知りません。それゆえ戦いに慣れさせなければならないでしょう。また、非協力者も現れるかも知れません。それらの問題を解決するにはまだ時間が必要でございます。」


「む、そうか。ではこの件についてはそなたに一任するぞ。」


「は!お任せ下さい。彼等を必ずやこの国の最強兵士にしてみせましょう。」

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