第23話 嵐の前兆

65・燻る大火


『やはり、今周期の納税にザイラスを訪れたのはわずかな町村ですか。まあ、保障税を払ってもいざという時には守ってくれないんだから仕方ないですが。』


 L1025周期も休眠期に入り、いよいよ新周期も間近という休眠期90日、ザイラスから戻ったバスティン=ゴルドーにザイラスの様子を聞き、フレッドはそう感想を漏らす。ユージェ軍がザイール南部に越境し、ヘルダ村を襲ったがヘルダは自衛に成功したこと、そしてヘルダからの報せを受けたザイール州軍はヘルダの救援に赴かなかったことは烈火のごとき速さでザイール中に広まった。これはもちろんそれを利用するつもりで叛乱軍の手の者が各地に広めたからだが、その効果は覿面だった。各町村はそれまで支払っていた税を払わず、その資金を独自の防衛力強化に回したのである。


「税を踏み倒すであろう最有力候補がウチらと目されてましたからねぇ。ヘルダから来た、と言ったらザイラスの奴ら驚いてましたぜ。」


 実際ヘルダ村ではもう当の昔にザイラスの州政府は当てにしていなかったが、他の町村も蜂起することが叛乱軍の勝機である以上、今はまだ州軍と対立するようなことは控えておくべきとの判断で税を支払うことを決める。しかし多くの人々にとって州政府はもはや敵同然で、州政府の側が自らの存続のため横暴な税の取り立てを始めれば、独自に高めた防衛力を使って権利を守ろうとするのは明白である。そう遠くないうちに、内乱へと発展するというのがフレッドの見立てであった。


『北部最大の街ミツカでは、自称ですが3000と州軍に匹敵する規模の兵を用意したと聞きます。真偽のほどはともかく、州軍としてはこれを抑えるのに戦力の半数以上は差し向けることでしょう。ミツカほどの街なら極端な話、ザイールから独立してもやっていけないことはありませんから、州政府としては見せしめのためにまずここを全力でどうにかしようと考えるのが妥当だと思います。「ミツカですら無理なら、俺たちなんかではどうしようもない」ということを形で示せば、形勢は一気にひっくり返るというわけですからね。』


 ミツカが州軍およそ4000に対し3000を集めたとはいえ、そこに「戦闘訓練をしっかり受けた者」という条件を設けた場合に数がどうなるかは別である。農民に槍を持たせただけで兵士一人として数えるなら、ヘルダ村でも2000は集められる。しかしそれでは意味がないどころか、多くの場合で欠点にすらなり得る。そして、短期間で急速に数が増えた以上は質の部分に期待するのはまず無理なのだ。


「ミツカにもお前みたいな男がいれば、戦力として当てにできるんだがな。まぁ、そんな男がいたら兵を3000集めたなんて自慢話を広めたりはしないか。勝負に命を賭けたことがあるやつなら、手の内はなるべく隠しておくことくらい常識だ。現場の奴はどうか知らんが、上の奴はどうも素人っぽい気がするな。」


 そう言うブルートの言葉にフレッドもうなずき、同意見であることを示す。ヘルダ村の襲撃以降、各町村の要請を受けた複数の傭兵団がザイールに入ったことは伝え聞いているが、その総数は2000にも満たない。それがミツカだけに集まったとしても素人の兵と混同した状況である以上、采配にはよほど気を配らない限り内部から崩壊する。フレッドはそのことを注意するべく文を送ろうかと本気で考えたが、周囲に「どうせ聞きゃあしない」と止められてしまった。


『ミツカに関しましては、街に籠城して時間を稼いでもらえば十分という程度の認識にしておきましょう。州軍がミツカに向け進軍したとき、我らも決起します。』


 叛乱軍は州軍がミツカに向けて進軍する時期を待ち続けるが、その報せは意外な早さでもたらされる。ただし、ミツカ懲罰部隊進発という一つではやってこなかった。別の重大情報とともに、L1026周期に入りお祭り気分も一しきり落ち着いた、開墾期29日に知らせが届くのである。



66・軌道修正


「つまり俺たちに、州軍の手先となって税を滞納した村々を叩いて回れってか?人を小馬鹿にするのも限度ってもんがあるだろ!」


 ザイラスから来た監査官が村を去った後、ブルートは抑え込んだ怒りを吐き出すようにそう叫んだ。州政府は納税の義務を完遂したヘルダを州に忠実な下僕と捉え、このような指令を下したのだった。今にも斬りかからんとするブルートを抑えるので精一杯だったためその瞬間は何とも感じなかった他の面々も、改めて聞けば腹に据えかねるものがあったようで、口々に州政府を罵る。フレッドは黙して語らず、一人思案に暮れていたが、意見を求められ重い口を開いた。


『私にはいいお話に思えますね。ぜひその申し出を受け、州軍に協力いたしましょう。それがより良い未来につながるでしょうから。』


 その意見を聞いた人々は耳を疑ったが、フレッドは上機嫌でうなずいている。呆気に取られて言葉を失っている者の中で、最初に口を開いたのは理性的なテアだった。


「フレッドさんには答えが見えているのでしょうけれど、それに至る過程も説明していただきませんとわたくし達には答えが見えませんわ。詳細な説明をお願いしてもよろしいかしら?」


 フレッドは自身の至らなさを詫び、説明を始める。最初に触れたのは、州軍がミツカのある北部以外にも懲罰部隊を派遣することを決めたことについてであった。


『州軍がミツカに進軍している間、残存兵力はザイラスから動かないものと考えておりました。そのため私たちの初戦はザイラス駐留の部隊となることを覚悟していたのですが、そうならずに済みそうで何よりです。ザイラス守備兵ともなれば精鋭でしょうし、市街の戦いでは不要な犠牲も出やすいですから。ただ、ミツカに向けた兵が予想より少なく、そこが気にはなりますね。それほどの軍勢は必要ないという、何かしらの根拠があるのでしょう。ただ「初戦に勝利し民衆の支持を得る」という当初の予定は、これで達成しやすくなりました。』


 次に話したのは、どうしても避け得ぬ犠牲についてである。州の各地で叛旗が翻り、それを弾圧する「巨悪の州政府」を打倒する「正義の叛乱軍」という図式を成立させるためには、どこかで犠牲が出なければならない。それが唯一、民衆のために叛乱を決意したブルートらの心残りだったのだが、その犠牲をいくらか軽減できそうとの見通しがたったのだ。


『ヘルダに任された地域には予め知らせを送り、口裏を合わせていただきましょう。囚人護送車の中には武装した兵でも乗せておき、仕事を終え意気揚々とザイラスへ帰還する者たちを……内外より攻め立て一気に殲滅いたします。村の犠牲が減り、まともに戦って兵が犠牲になる可能性も下がり、後は帰るだけと気を抜いた相手に奇襲をかけられるという有利な状況も得られ、いいこと尽くめです。』


 最後に話したのは、予定通りに事が進まなかった場合のことであった。かつて射撃隊にクロスボウを採用したときもそうだったが、フレッドは必ず策の悪い面も説明することにしている。いい面だけを伝えるのは簡単だが、それでは物の考え方という部分が育たない。いつ自分が命を落とすかは分からず、自分が去れば別の誰かが道を示さなければならないが、そうなったときに一人で決めるにせよ大勢で決めるにせよ、いい面と悪い面を考えた上で道を決めるようになってもらいたかったのだ。


『もし州政府側が策の一環として話を持ち掛けてきていたら、我々は正面から挑まねばなりません。その場合、やはり戦場はここになります。勝つ目算はありますが、予定通りに事が運んだ場合と比べ時間と犠牲は多くなってしまいますね。もっとも、周囲が敵だらけの州政府がわざわざこれ以上の敵対者を増やすことはない以上、可能性は低いです。それよりは、本気でヘルダが州政府の手先になったと早合点する、思考的近視眼とでも言うべき人が出そうなことのほうが問題でしょうか。出資者の方々には特に、策の詳細をお伝えするようにしてください。』


 長い説明を終えたフレッドに、リリアンが水を入れたグラスをそっと差し出す。L1026周期を迎え16歳を迎えた彼女は晴れて成人となり、バスティンのお付きとして叛乱軍関連の会合にも居合わせるようになった。バスティンは叛乱軍に関わることをかなり渋ったが、リリアンは自分より年下のフォンティカも参加していることを理由に「成人らしく自分で決める」と強引に付いてきたのだった。


「でも先生。もしかしたらミツカの人たちが勝って叛乱が楽に成功する……なんてことは起こらないんでしょうか?」


 リリアンの質問は、普通に考えればあり得ない話ではない。北部に派遣された州軍はミツカより少ないことは確認されており、そのような状況であればミツカが勝つとまではいかなくとも、北部に派遣された州軍に大損害を与えてくれるだけで十分なのだ。確かにフレッドも淡い期待を抱いてはいるが、ミツカの戦果は計算に入れていなかった。差し出されたグラスを空にして、フレッドは返答する。


『あまり期待はできないかな。州軍が本気だったとしたら北には精鋭を差し向けたか、何か途方もない手段を使うかするんだろうね。適度に時間稼ぎだけしてくれれば十分だし、惨事にならないといいんだけど……』


 しかし7日後、その予想が当たっていたことを、北部から火急の知らせを運んできた連絡員によって知らされる。それは州軍と偽りの協力関係となる直前のことであった。



67・ミツカの惨劇


 ミツカ自衛軍と州軍が対峙したのは、およそ20日前となる開墾期16日であった。数で勝るミツカ側だが傭兵団はそれぞれの判断で動き、民兵はまともな訓練を受けていないため役立たず状態と、およそ軍として統一されてはいなかった。それに対し州軍は、仮にも軍組織であったため動きは統一されていた。その差は徐々に表れ、押され始めたミツカ側は街に籠るという選択をする。ここでヘルダなり他の町村なりに援軍を乞えば結果は違ったのだろうが、大都市のプライドなのかミツカはそれをしなかった。援軍の当てがない籠城策などほぼ無意味、ということも知らなかったのだ。


「州軍も街の出入り口を封鎖するだけで攻め入ろうとはせず、にらみ合いが続きました。しかし7日後、街の中に複数の「道」が開いたんです。街には異界の怪物が溢れ、混乱の極みに達しました。そんな状況ですから街の外に避難しようとした者たちもいましたが、州軍の奴らは誰彼構わず敵として攻撃し、街から誰一人として出そうとはしませんでした。それから2晩が経過し、ようやく道が片付く目星がついたところで州軍の総攻撃が始まり……自衛軍は壊滅、有力者はその場で処刑されました。」


 連絡員の説明によりミツカで起こったことを知ったブルートらは怒り、もはや一刻の猶予もないゆえに蜂起を始めようといきり立つが、フレッドはどうにかそれをなだめて抑えた。ここで州軍へ反抗する意思を悟られては、いまこちらに向かっている南部派遣軍はザイラスに帰還して北部派遣軍の合流を待ち、それから数を頼みに押し寄せてくるだろう。それでは勝算がなくなってしまうのだ。


『皆様のお怒りはごもっとも。私も彼らにはその罪に見合う罰が与えられるべきと存じますが、いま怒りに任せて行動すればすべて水泡に帰すこととなります。ここはどうか、ご自重ください。必ずその瞬間は訪れますゆえ……』


 そう説得しつつも、フレッドは考える。まさか自らの民に怪物を差し向けるなど、噂話でも信じられるか分からない領分の出来事であり、確かに流言の一つとしてそういうものを流しはしたものの、自分でもそれは話を盛りすぎかなと思ったものである。しかし、こうしてそれが現実となってしまった。まさか、その流言を耳にして手法を真似たのではあるまいか。フレッドの心をよぎったのはそれであり、つい口に出してしまう。


「さすがにそれはないだろう。仮にそうだとしても、実行したのは奴らなんだから全面的に奴らが悪いんだ。気にするな。それにしても済まなかった。つい頭に血が上ってしまってな……」


 冷静さを取り戻したブルートはそう話すが、フレッドにしてみれば民のために怒れることは好感を持てる要素である。民に関心をなくし、人として扱うことすらしなくなった時、自らの領内にある有力都市の一つを叩き潰すなどという極めて愚かなことを恥ずかしげもなく行うのだ。しかしこれで、完全に駒は揃った。あとは開戦の狼煙を上げるための材料……叛乱軍の価値を比類なきものとするための南部派遣軍を待つのみである。だがここで、有力な駒となる思わぬ人物たちが登場することとなった。



68・真理の来訪者


「お会いするのはおよそ1周期ぶりとなるかな。その節は妻ともども、お世話になった。我らがこうして訪れた理由は察しておるかもしれぬが、ご協力いただきたい話がありましてな……」


 ヘルダ村に現れたのは、特徴的なローブを身に纏う一団であった。それを率いているのはかつてヘルダ村の近くに開いた「道」の件で出会った魔導士ギルド[真理の探究者]の一員で、名をシェーファーと言う。その隣に控えていたのはシェリーという女性魔導士で、今はめでたくシェーファーと結ばれたという。


『ミツカで起こったことに関係しているなら、心当たりがあると言えますね。領主の趣味のことでしたら、今のところ目新しい情報はありません。どうも「道」自体はまだ開くこともあるようですが、ここ1周期はいろいろと忙しくて……道を塞ぐ仕事は別の冒険者に任せきりという状態です。』


 フレッドが言い放ったミツカという単語を聞いて、シェーファーらの顔が曇る。そして彼らが訪れた理由を話し始めた。彼らの所属する[真理の探究者]は、禁忌である「道」を使い街一つを壊滅に追い込むような殺戮を行った者たちに制裁を加えるべくシェーファーら腕利きの魔導士を派遣したが、問題を起こした術師たちがザイール州軍の所属となっていてなかなか手を出せずにいるのだという。そこで州軍に対抗できる力を持つ組織を探していたところ、叛乱軍の存在に行きついたのだ。


「まさかあの時に出会った皆さんが叛乱軍の中枢であるとは、思いも寄りませんでした。しかしこれは運命なのかとも考え、こうしてお訪ねした次第ですの。」


 なぜ叛乱軍の情報をそこまで正確に把握しているのか……というダウラスの質問には「魔導士ならではの手段がいろいろとある」と答えたが、詳細については秘密にされた。そんなやり取りが続いた後、ブルートが口を開く。


「しかしあんたらは術で大量殺人なんかできないんだろ。それをやったらミツカでやらかした連中と何ら変わらなくなるし、許されるものならとっくにやってたろうからな。だから手を組むにしても兵士の一員となって戦えとは言わんが、いったいどんな方法で俺たちに手を貸すつもりだったんだ?」


 そのブルートの質問には、明確な答えが返ってきた。彼らは神霊術による治癒を基本に、多用は難しいが雨ごいや濃霧の発生など「直接ほかの命を奪う行為」の術でなければかなり自由な範囲で使用の許可が下りているという。それらは彼ら以外の者が戦う時に、役立てるはずだというのだ。そして数ある術の中でフレッドの関心を引いたのは、一日に数回しか使えないが「空の下であれば特定の相手に意思を伝えられる」というもので、これは使いよう次第で作戦行動に大きな影響を与えるものだったからだ。めずらしく興奮気味になったフレッドに矢継ぎ早の質問をされ、シェーファーは声を絞り出すように返事をする。


「いや、さすがにこれは誰にでも使えるものではないのだ。例えばこの水晶を覗いて、何が見えるかで適性を量ることはできるが……なんと、真っ暗闇で何も見えない?それはそれで、貴重な特性と申すか……ああ、そういえば貴方は見事な技をお持ちであったから、思念術に特化した資質の持ち主なのだな。そういう御仁は神霊術の適性がないのだ。諦められよ……」


 露骨に落胆するフレッドをよそに、ブルート一行もその水晶球を覗いてみると、同じ球を覗いているのに見えているものは全く別物という不可思議な状況となった。


「肥沃な大地、澄んだ川、そして生い茂る木々を揺らす優しい風……これはウルスの森かしら?」

「ファロール・エイジスの部落で暮らしていた頃によく見た、おっきな篝火が見えるんですね。」

「子供の頃に修行をサボってはそこで昼寝をした、お気に入りの岩が見えるわね。懐かしいワ。」

「皇国本領にいた頃、よく子供と釣りをした近くの池が見えますな。これはなんとも面妖な……」

「俺はフレッドと同じで、どうもその適正とやらがないようだ。普通の白い球にしか見えねえ。」


 シェリーの話によれば、この球を覗いて「青空もしくは星空」が見えれば、空を使った意思の疎通が「できる可能性がある」のだという。ただし意思疎通は人にもよるが、訓練を積まないと一日一回、単語2~3個がせいぜいとのことだった。それでは微妙だな……と落胆するブルートらだが、しかしフレッドの興奮は収まらない。


『それで十分じゃないですか!単語って肉~とか水~みたいな感じってことですよね?肉は敵の輸送隊、水は川や池、湖の近くみたいに予め符合を決めておいて、例えば北に出した偵察からそういう意思を飛ばしてもらえばどのあたりに敵の輸送隊がいるか、偵察が戻る前から目標の動向が測れます。ああ、こんなことがあっていいんでしょうか!!』


 そう言われて、フレッドが興奮した理由を一同も察する。この場で[真理の探究者]との協力が正式に決まり、そしてすぐさま村に住む者のすべてを対象に「ただ水晶玉を覗く」という奇妙な催しが開かれることとなった。2つの傭兵団員も含めて水晶を覗いた者は総勢で2200ほどだが、そのうち青空もしくは星空が見えた者はわずか6名だった。[野鶲の傭兵団]から対象者が2人いたのは、彼らが身軽さを売りにしている特性も相まって幸運といえた。一方で残り4人のうち1人は足腰もまともに立たない老人であり、彼は村に残る役目とされることになった。さらに2人はまだ会話もおぼつかない子供だったため、将来に期待することとなる。そして、最後の一人がフレッドの執務室を訪れ……


『まさか君に適性があったとはね。いろいろと手伝ってもらうことが多くなりそうだけど、よろしくお願いしますよ。』


 フレッドの前で満面の笑みを浮かべて立っている少女は、赤みがかった髪に映える青い石が装飾された髪留めを着けた姿が印象的な、今周期で成人を迎えた快活な女の子だった。


「はいっ!これからシェリーさんたちに訓練をつけてもらって、必ず先生のお役に立って見せますから!お任せください!!」


 知らないことを教えられ、自身の命も家族や友人の命も助けられ、何から何まで頼るしかできなかった力のない自分に、ようやく彼の役に立てるものができた。その喜びがリリアンをいつも以上に明るく、元気な子にしていた。そしてこの後、フレッドの作戦指揮に彼女らの意思疎通能力は欠かせぬものとなる。時はL1026開墾期も60日を過ぎ、南部に派遣された州軍は各地の滞納者が住む村々に弾圧を加え始めるも、ミツカの惨劇の噂はすでに南部全土に広まり、徹底抗戦かその地を捨てての逃亡という末期状態に陥っていた。

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